メインコンテンツに移動

仏 HEFグループ、日本での表面改質ビジネスを強化

 フランス HEFグループでは近年、日本での表面改質ビジネスを強化・拡大してきている。

 HEFグループは、1953年にフランスでトライボロジー研究センターとして創業。物質の表面処理加工に関する多くの技術を開発して特許を取得、そのライセンスを販売するなど、世界 23ヵ国で展開している。

 日本ではマーケティング・技術支援を行うHEF DURFERRIT JAPAN(ジュリアン グリモ社長、横浜市港北区)、金型向けや自動車部品向けの物理蒸着(PVD)コーティングの受託加工を手掛けるナノコート・ティーエス(熊谷 泰社長、石川県能美市)、自動車エンジン部品向けダイヤモンドライクカーボン(DLC)コーティングの受託加工を手掛けるTS群馬(熊谷 泰社長、群馬県高崎市)、環境にやさしい窒化処理を手掛けるTS TUFFTRIDE(グウェン ボロレ社長、大阪府八尾市)でビジネスを推進しているが、ここ数年、それぞれ体制を強化し事業を拡大してきている。
左から、亀山栄治氏(ナノコート・ティーエス 営業グループ長)、安田直史氏(同社 取締役石川事業所長)、熊谷 泰氏(同社 社長)ジュリアン グリモ氏(HEF DURFERRIT JAPAN社長)、グウェン ボロレ氏(TS TUFFTRIDE社長)左から、亀山栄治氏(ナノコート・ティーエス 営業グループ長)、安田直史氏(同社 取締役石川事業所長)、熊谷 泰氏(同社 社長)ジュリアン グリモ氏(HEF DURFERRIT JAPAN社長)、グウェン ボロレ氏(TS TUFFTRIDE社長)

ナノコート・ティーエス 第3工場が稼働、風力発電機用軸受向けDLCの量産を開始

 ナノコート・ティーエスでは、2008年設立の第1工場、2014年設立の第2工場に続いて、本年1月に第3工場を新設した。第3工場ではHEF製の最新の成膜設備および洗浄ラインを導入し3月から生産を開始している。
ナノコート・ティーエス 第3工場の外観ナノコート・ティーエス 第3工場の外観

 第1工場では主に自動車用ゴム成形金型やプラスチック成形金型など金型関連のPVD処理を、第2工場では主に二輪車のエンジン部品向けDLCを手掛けている。2008年の時点では全売上に占めるDLCの取扱いの割合は8%程度だったが、2009年に新プラズマ源を搭載した新しいDLC成膜装置を導入したのを機にDLC膜の性能が飛躍的に向上、DLCの割合が現在では約67%に増加している。

 DLCを中心に両工場とも受託加工案件が増える傾向にあり、手狭となってきていたことから、同社では昨年から第3工場の設立準備を進めていた。そうした中で折しも、5年前からフランスで試作を重ねてきた風力発電機用軸受向けのDLCの量産案件が成約した。そこで、新設する第3工場を風力発電機用軸受向けのDLC受託加工の主力工場と位置づけたもの。

 風が持つエネルギーを回転運動に変換する風力発電機では通常、発電量を高めるにはロータ径の拡大による受風面積(ブレードが旋回する円の面積)を増やさなくてはならず、ロータを支持する主軸受は大型化する傾向にあり、今後増加が見込まれる洋上風車の主軸受ではさらに大型化すると見られている。主軸受が破損し交換する際には主軸受が取り付けられた主軸を地上高さ100mくらいの位置にあるナセルから降ろす必要があり、多大な費用が発生する。洋上風車となれば交換費用はさらに膨らむため、主軸受には高い信頼性が要求される。これに対し欧州の風力発電機メーカーを中心に、油膜切れなどに伴う軸受軌道面の摩耗といった損傷を防止し長寿命化を図るソリューションとして、軸受ころへのDLCの採用が進んできている。

 こうした中でHEFでは、主軸受用ころ向けのDLCについて試作を重ねていたが、このほど、損傷を防止し寿命を延長、メンテナンス作業を軽減できる効果が認められ、量産採用に至ったもの。

 新設したナノコート・ティーエス 第3工場では、高速成膜が可能な新しいプラズマ源を備えた最新鋭の大型DLC成膜装置「TSD850」 2台と、軸受ころへのDLC成膜のための専用治具、さらにはワークを自動搬送して各槽に浸漬し取り出す全自動洗浄ライン1台という、すべてHEFグループで開発・製造した設備で成膜前処理からの一貫した量産ラインを構築。併せて検査設備も増強し、膜の品質保証体制を徹底させている。
最新鋭の大型DLC成膜装置最新鋭の大型DLC成膜装置
全自動洗浄ライン全自動洗浄ライン
検査室検査室

 第3工場では風力発電機用軸受向けの量産工場として、大型DLC成膜装置の増設などさらなる設備増強を計画している。

 一方で、同成膜装置はHEF製として最大となる最長1200mmまでの大型・長尺部品への成膜が可能なことから、これまで対応できなかったゴム用/プラスチック用などの大型金型、農業機械の大型部品、医療関連機器の長尺部品などへのDLCの試作案件も増えてきている。さらに2020年からは自動車コンロッド部品向けDLCの量産も見込まれるなど、DLCを中心にビジネスが拡大してきている。

TS群馬、自動車エンジン部品のDLC量産工場として本格稼働

 自動車の燃費改善では軽量化と部品のフリクション低減が効果的だが、先述のとおりHEFグループにおけるDLCの成膜技術が飛躍的に向上し安定した品質を継続的に実現できるようになったことも手伝って、低フリクション化に効果的なDLCの自動車エンジン部品での採用が増えてきている。

 そうした中、HEFグループでは2017年に自動車エンジン部品でのDLCの受託加工に成約。群馬県高崎市に床面積1000m2のDLC量産専用工場「TS群馬」高崎事業所を設立し、2018年3月から生産を開始している。HEFグループの最新鋭の成膜装置5台と、全自動洗浄ライン、自動画像処理検査ラインによって、24時間体制で量産を行っている。グローバルな生産システムと品質管理システムによって、世界同一品質を提供している。
TS群馬:自動画像処理検査ラインTS群馬:自動画像処理検査ライン

TS TUFFTRIDE、クリーンな窒化処理を前面に新規案件獲得へ

 TS TUFFTRIDEは2017年からHEFの完全子会社として、日本国内で窒化処理事業を展開している。

 HEF独自の窒化処理技術「タフトライド処理®」は、耐食性、耐摩耗性、高いクラック耐性を有するほか処理後の歪が少ないといった特徴から、自動車部品や産業機械部品などの摩擦を低減し、ランニングコスト削減、出力向上、寿命延長、安全性を実現する優れた表面改質技術として、世界中で高い評価を得ている。液体イオンを制御することで環境にやさしい窒化処理を行うCLIN(Controlled Liquid Ionic Nitriding)技術を適用したタフトライド処理®は欧州REACH規制にも適合、近年では硬質クロムめっきの代替技術としても採用が進んできている。

 2018年7月には、日本のビジネススタイルや表面改質分野に造詣の深いフランス人のグウェン ボロレ氏が社長に就任。フランス本国と密に連携して、さらなる生産性の向上を図るとともに、CLIN技術を用いたタフトライド処理®によって、自動車部品を中心に硬質(六価)クロムめっき代替のアプリケーションなどの新規案件を徐々に増やしてきており、HEFの主力事業の一つである窒化処理ビジネスの日本市場でのプレゼンスを高めてきている。