挨拶する安部社長 パーカー熱処理工業( http://www.pnk.co.jp )主催、日本パーカライジング( http://www.parker.co.jp/ )共催、パーカーS・N工業( http://www.parker-sn.co.jp/ )・日本カニゼン( http://www.kanigen.co.jp/ )協賛の「第11回表面改質技術研究会」が11月15日、東京・丸の内の日本工業倶楽部で開催、約210名が参加した。
当日は、パーカー熱処理工業の安部壽士社長が「当研究会も本年で11回目を迎えたが、開催にあたり常に心掛けているのは熱処理・表面改質技術を通じた社会にいかに貢献するかということである。そういった意味で技術開発の中では、地球環境を阻害しない技術の開発を第一義に考えている。最近のトピックスをご紹介すると、弊社の主力製品の一つに塩浴軟窒化剤イソナイトがあるが、処理時に少量の有害物が発生する。この有害物を廃棄せずにリサイクルする技術を確立した。すでに弊社工場において量産化・生産開始をしており、改めて皆様にご案内申し上げたい。今後もものづくりに関わる者として、地球環境の維持を考慮して技術開発を行っていきたい」と挨拶を述べた後、講師陣の紹介を行い、以下のとおり講演が行われた。
「プラズマイオン注入法で成膜したDLC膜の特性と応用技術」濱本浩行氏(パーカー熱処理工業)……プラズマイオン注入・成膜法の研究開発例として真空窒化処理、真空窒化処理+Si含有DLC、真空窒化処理+イオン注入の3処理を比較。ローラーピッティング試験では、面圧4.25GPaにおいて真空窒化のみの処理に比べて真空窒化+イオン注入処理は表面亀裂の発生を抑制する効果によって約11.7倍の耐ピッティング性が向上していることなどを報告した。
「内燃機関の効率向上に向けた取り組みと表面改質技術への期待」天野政樹氏(ホンダ技術研究所 主任研究員)……自動車を取り巻く環境と同社の取り組みについて解説し、内燃機関の効率向上を材料プロセスでどう行うかについて講演を行った。講演では、その解決方法として低フリクションと熱制御に取り組んでいる具体的事例を示し「低フリクションや熱制御の新機能付与による部品要素技術は、今後のさらなる効率向上に向けたキー技術であり、中でも表面改質技術がその重要な役割を担っていく」とした。
「鉄鋼におけるバルクおよび表面の高強度化設計原理」古原 忠氏(東北大学 教授)……鉄鋼材料組織制御の原理を解説した後、低温変態およびナノ析出利用によるバルク材の高強度化について、窒化による鉄鋼の表面硬化について実際の測定データなどを示して講演を行った。結びに、鉄鋼材料研究への今後の期待として、「高強度化のさらなる追求」、「環境負荷を考慮した組織制御、傾斜機能化」、「複合化技術の追求」の三点を挙げ、実現するには、特性を支配する原理原則の解明とそれに基づいた材料開発、先端プロセス技術と密接に連携した材料設計の二つが重要であるとした。
講演後は、会場から三者の発表に対する質問を受ける形でパネルディスカッションが行われ、座長をパーカー熱処理工業・渡邊陽一 技術研究所所長が務め、活発な議論が行われた。
第11回表面改質技術研究会のもよう