東レ( http://www.toray.co.jp/ )は、レンズなどの反射防止機能に優れた低屈折率コーティング剤を開発した。デジタルカメラやスマートフォンなどのレンズから入った光を電気信号に変換する部品であるイメージセンサーの反射防止膜として用いた場合、集光効率を向上させることが可能となり、感度向上を図ることができる。
同社では、2016年3月からイメージセンサー用レンズの反射防止膜向けにサンプル出荷を開始しており、今後は、反射防止機能を必要とするプリズムシートやレンズ部材等の光学部品・光学フィルムへの展開も視野に入れた開発を進めている。
イメージセンサー等の光学部材では、マイクロレンズという小さなレンズを表層に多数敷き詰めることで、集光効率を高めている。ただ、レンズと空気の界面で光が反射してしまうとその分がロスになるため、低屈折率の層を設けることで反射を防止し、さらに集光効率を高める工夫がなされている。
マイクロレンズは、0.5~5μmの微細な凹凸の形状をしており、一般的に液状であるコーティング剤では付着量が凹部分に多く、凸部分には少なくなってしまい、反射防止の機能を発揮できるとは言い難い。したがって現在は、真空プロセスを用い二酸化ケイ素(SiO2)の層をレンズに沿って化学的に形成する方法が取られているが、真空プロセスの設備コストが高額になるという問題や、SiO2では屈折率が1.46(空気は1.0)と比較的高いことから反射防止効果がまだ充分ではないといった課題があったという。
そこで同社では、透明で耐熱性の高いポリマーであるポリシロキサンを用いて、分子設計技術の応用とナノコンポジット技術の進化により、屈折率1.33の低屈折率かつ流動性を高度に制御した新しいコーティング剤を開発した。塗布直後、コーティング剤が凸部分から凹部分に流れてしまう前に硬化が進み、流動性が低くなることから、マイクロレンズを敷き詰めた凹凸形状を損なわず、均一な厚みの反射防止膜の形成が可能になるため、微細な凹凸からなるレンズに対しても、レンズ効果を損なうことなく、高い反射防止効果が得られるため、集光効率の向上が可能になる。また、250℃の耐熱性もあるため、はんだ実装など高温となるプロセスでも使用可能だという。