大阪大学大学院工学研究科附属超精密科学研究センターの山村和也准教授、大久保雄司助教らと兵庫県立工業技術センターの柴原正文研究員、長谷朝博研究員、本田幸司研究員の研究グループは、ふっ素樹脂に対して加熱しながらプラズマ処理(熱アシストプラズマ処理)することで高密着性を実現し、さらに、異種材料を接着しやすい期間(改質寿命)を1年以上持続させることにしたと発表した。
高密着性と超長寿命性の両方を実現した熱アシストプラズマ処理の効果(白:ふっ素樹脂、青:ブチルゴム):プラズマ処理してから1年後にくっつけてもゴムが材料破壊
これまで、プラズマ処理で樹脂の表面を改質すると、その改質寿命が短く、例えばプラズマ処理直後に接着しなければ、密着性が低下してしまうという問題があった。今回、山村和也准教授らの研究グループは、ふっ素樹脂にプラズマ処理してから1年間放置しておいた後に熱圧着しても、ふっ素樹脂とゴムが強力にくっつくことを示し、改質寿命が極めて長いことを実証した。接着工程の制限が大きく緩和されるため、ふっ素樹脂の利用用途の大幅な拡大が期待される。
研究グループは、高分子材料の表面に大気圧プラズマを照射し、表面を活性化して異種材料同士の密着性を向上させる研究に取り組んできた。とりわけ、高分子材料の中で最も不活性なふっ素樹脂を対象として研究を進めており、加熱しながらプラズマ処理することで、接着剤を用いることなく銀インク膜・銅ペースト膜・無電解銅めっき膜・ブチルゴム等をふっ素樹脂に対して強力に接着できる成果を挙げてきた。
一般的に、プラズマ処理した樹脂の表面改質寿命は短いことが知られている。改質寿命が短いと、プラズマ処理直後に接着を行わなければならず、実用化する上で大きなデメリットとなっていた。接着剤を使用することなくふっ素樹脂の高密着性を実現するだけでも熱アシス トプラズマ処理の効果に加えて、今回、1年以上経過しても 高密着性が持続することを明らかにした。研究では、熱アシストプラズマ処理で表面改質したふっ素樹脂の水に対する濡れ性は1年以上経過してもほとんど変わらず、プラズマ処理で生成した過酸化物ラジカルの80%以上が約1年経過しても残存していることが確認された。今後は、超長寿命性を実現した要因を解明し、ふっ素樹脂以外の樹脂への応用展開が検討される予定。