サーモテック2017開催、熱処理装置や関連装置・技術が一堂に会する
「サーモテック2017 第7回国際工業炉・関連機器展」(主催:一般社団法人日本工業炉協会)が7月19日(水)~21 日(金)の3 日間、東京ビッグサイト 東4 ホールで開催、10938名が来場した。
同展は、1993年以来4年に1度開催されており、国内唯一かつアジア最大規模の工業炉・熱技術、関連機器の展示会。第7 回目となる今回は、13 カ国から189 社・団体(国内:163 海外:26)が出展を行った。2013年の前回開催の成果を受け、19社の出展者が出展小間を増やし、全体で402小間に達した。イベントでは、熱処理装置・技術や関連機器・技術の展示が多く見られたほか、一般社団法人日本熱処理技術協会と日本金属熱処理工業会が「熱処理相談コーナー」を設置。会期中の3日間、熱処理のスペシャリストが相談員としてブースに常駐し、多くの来場者から様々な相談が寄せられ、熱処理技術に関する関心の高さを窺わせた。各社の主な展示内容は以下のとおり。
パーカー熱処理工業は、全世界で1000セル以上の納入実績がある真空浸炭装置「ICBP FLEX」の技術を引き継ぎ、コンパクト化を実現した「ICBP NANO」を紹介した。同装置は、最大六つの加熱セルと10barまで対応可能なガス冷却セルで構成されている。小型で安全、サイクルタイムを大幅に短縮できることから機械加工と同期生産を可能にする点を強調した。また、併せて同社が販売を手掛けるDLCコーティング装置「CarboZen」や振動摩擦摩耗試験機「SRV」、各種熱処理などの受託加工についてもPRを行った。
オリエンタルエンヂニアリングは、ガス軟窒化や浸硫窒化、窒化+酸化の複合処理などが行える真空高機能表面改質装置「IBN」を披露した。水素センサ、酸素センサにより精密に雰囲気制御を行い、窒化処理の際に生成される表面化合物層をε相主体からγ’相主体にすることでS35Cの疲労強度を向上できる点などを訴求した。また展示ブースでは、今年6月に完成した同社の「川越第二工場(ハイテクセンター)」に設置した同装置の処理のライブ中継を実施。タブレットでの遠隔操作や装置に設置した各種センサ情報をサーバーを介して確認できるなど、来場者に遠隔操作を通して熱処理のIoTを示すなど工夫を凝らした内容とした。
フランスの大手真空熱処理炉メーカーBMIが開発した真空熱処理炉の販売を行う三和精機は、真空ガス焼入炉の実機展示を行った。BMI独自の技術により、高品質で再現性が高い処理が可能なことや、独自の冷却方法により熱処理変形を抑えることのできるガス冷焼入れ炉、低圧浸炭、低圧窒化のできる焼戻し炉など、幅広い能力を持つ熱処理炉の紹介を行った。
富士電子工業は、高周波誘導加熱装置とIoTを融合した「FD-ioT(エフ・ディオット)」を紹介。実績のあるモニタリングシステムとして、ワークに対して常に同じ電力量が投入されるように制御して品質を安定化させるシステムや、ワークとコイルが動作する焼入方式において、位置関係を0.1秒ごとに監視することにより異常を検出するシステムを紹介。加えて、装置のコイルや部品の交換時期を予測することによる生産性の向上とコイルの長寿命化、故障の際に遠隔診断で迅速に修理箇所を特定することによる修理時間の短縮、加熱条件の設定や回路の変更を遠隔操作できる生産管理の支援などを新たな提案として行った。
新東工業は、熱処理後のピーニング工程において工程保証・製品保証を可能にする表面評価技術「Sightia」を組み込んだショットピーニング装置を展示した。10秒でX線応力測定が可能な「PSMX-Ⅱ」と、ピーニング処理の未処理品や部分残し等の不完全処理品と正常処理品を1秒で判定する「ECNI-Ⅱ」により、インラインにおける全数チェックを可能にした技術を提案。同技術を熱処理後(ピーニング前)とピーニング後に適用することで、自動車や航空・宇宙、鉄道などの基幹部品に対するピーニングプロセスの信頼性を大幅に向上する。
山本科学工具研究社は、ブリネルやロックウェル、ビッカース、計装化押込み試験といった各種硬さ試験法に使用される試験機の測定結果が正常であるかどうかを確認するための「高精度硬さ基準片」を展示。同品は硬さの均一性に優れ、経時変化がないことから高精度な測定を可能にする。原材料を厳選し、機械加工後に厳格な管理による熱処理を施すことで安定的な組織を形成している。