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第9回ものづくりワールド名古屋

 

Optimol Instruments、オンラインフォーラムを開催

 ドイツOptimol Instruments Prüftechnik社(OIP社、日本総代理店:パーカー熱処理工業)は7月2日と3日の両日、Microsoftのオンライン会議ソフトウェア「Teams」を用いて、日本や北米、欧州向けのオンラインフォーラム「SRV® Online Application Forum on 2/3 July 2020」を開催した。本イベントは、トライボロジー分野のマーケット・リーダーがOIP社製振動摩擦摩耗試験機「SRV®」を活用したトライボロジー・アプリケーションの実践報告を行うもので、今回は以下のとおり2019年度のOIP社製品の開発状況や新技術の紹介に加えて、新しい試験アプリケーションや評価手法などの報告がなされた。

・「Overview on product innovation」Gregor Patzer氏(OIP社)…オシレーションセットアップおよびローテーションセットアップと、オシレーション・ローテーション両方の動きを模擬でき実部品で評価できるSRV®がその信頼性の高さからDIN・ASTM・SAC・ISOなど各種規格に採用されていることを紹介したほか、SRV®がチェーンの材料や表面処理、オイル・添加剤を組み合わせて迅速に評価できることから、ターボチャージャーや直噴エンジンなどのタイミングチェーンの摩耗を評価するASTM D8279規格のスクリーニング試験として有用であると述べた。また、ローテーションセットアップ用の各種アダプターや、腐食摩耗を評価するオシレーション試験のための電極付きセル、動的荷重発生デバイス、OCA ソフトウェア、再現性・信頼性・ロバスト性の高い校正セットアップといった同社の製品イノベーションを紹介した。

Gregor Patzer氏
Gregor Patzer氏

 

・「Interpreting tribological effects correctly」Ulrike Cihak-Bayr 氏(AC 2T research社)、Ameneh Schneider氏(OIP社)…高分解能・高サンプリングレートの摩擦摩耗試験では、オイルやグリースの評価で摩擦係数の短いピークが現れることがある。こうした事象と添加剤の作用や表面粗さの作用といった相関関係について実験・調査した。それぞれ添加剤組成の明確な鉱油、エステル油、モーターオイル(新油および使用油)について、試験中の摩擦係数の変化を10μs間隔で取得できる高分解能分析(HRA)機能を搭載したSRV®5を用いて試験を実施、摩擦係数の短いピークの発生時とその前後の各試料を取り出し、X線光電分光法(XPS)によって各オイルの化学組成分析や化学マッピング分析を行い、走査電子顕微鏡(SEM)によって各試料の摩耗痕などを観察した。摩擦係数の短いピークの発生時とその前後の摩擦摩耗試験の結果とXPSとSEMによる分析を組み合わせることで、摩擦事象の原因を特定できるとした。

・「Elastomer compatibility of lubricants under dynamic load ― A feasibility study」Ameneh Schneider氏(OIP社)…油圧ポンプなど実際のアプリケーションにおいては、シール材料は潤滑油などによって動的な負荷がかかる条件にさらされているにもかかわらず、シール材料であるエラストマーの潤滑油との適合性は通常、ISO 1817規格に準拠して静的条件で評価されている。そこで、良好な適合性を実現するエラストマーと添加剤・基油の組み合わせを静的試験に比べ短時間・低コストでスクリーニングできるよう、動的トライボコンポーネントを組み込んで評価できるSRV®5を用いた動的評価方法を提案した。シール材料として2種のエラストマーと潤滑油2種(鉱油とエステル油)を用意し、適合性評価のための特殊仕様のSRV®5で各種のエラストマー/潤滑油の組み合わせで温度条件を変えて試験を実施。摩擦係数および摩擦係数のヒステリシスループ、各潤滑油で処理した各種エラストマーの引張強さ、破断伸び率、200%伸び時の引張力などを評価し、潤滑油とエラストマーの組み合わせをランク付けした。結果、0.5時間80℃のSRV®試験が室温320時間のISO 1817規格に準拠した静的試験と同等の結果が得られたことでSRV®5による動的評価方法の有効性を示した。

Ameneh Schneider氏
Ameneh Schneider氏

 

・「Stribeck curves on the SRV® ― Combining the friction signals with the contact resistance ―」Mathias Woydt氏(Matrilub社)…ストライベック曲線のコンセプトは、全潤滑領域と温度領域にわたる摩擦プロファイルのマッピングを可能にしている。ピストンリングとシリンダライナーというトライボシステムは全潤滑領域で稼働し、各潤滑領域で摩擦係数も油膜厚さも大きく変わる。ここではリング-ライナーの稼働する全潤滑領域を再現でき、各種エンジン部品の試験規格として採用されているSRV®に実際のリング-ライナーを組み込んで、各種エンジン油での潤滑下で摩擦試験を実施、自動車エンジンで要求される10m/s程度までの摺動速度の増加とともに摩擦係数、電気接触抵抗(油膜厚さ)が変化していくストライベック曲線を描いた。全潤滑領域での種々の潤滑油(基油・添加剤)および表面性状などの効果が比較評価できるようになったことで、エンジンにおける摩擦低減や燃費改善に寄与できるとした。

Mathias Woydt氏
Mathias Woydt氏

 

・「Functional condition monitoring with SRV®」Ameneh Schneider氏(OIP社)、Mathias Woydt氏(Matrilub社)…トライボシステムにおける機械要素である潤滑剤の状態監視は、部品損傷の信号を早期に検知しシステムの信頼性を担保する上で重要だが、使用する潤滑剤のトライボロジー性能は状態監視試験で行われることは少なく、結果的に機械で使用されている潤滑剤の品質が評価されることは少ない。そこで、SRV®5のオシレーションセットアップを使って、新油および使用油の4種のギヤ油を用いての摩耗試験を実施、8分後および20分後のディスクおよびボールの摩耗量を評価した。摩耗量の評価は使用中の潤滑剤の状態を見ることとなり、潤滑油の寿命延長を図るフィルトレーション実施の判断材料となることを示唆した。また、摩擦摩耗が増大し損傷が起こる転移点などを評価するCliff試験について紹介した。SRV®を用いて、20時間ごとに採取したSequence ⅢGエンジン試験中のエンジン油でASTM D6425/DIN 51834-2規格に準拠した150℃での摩擦摩耗試験を実施。得られた摩擦摩耗データを最先端のオイル分析技術と相関させることで、潤滑油の状態監視や劣化原因の究明も可能となり、オイル交換の時期の特定や異常摩耗の起こりにくい添加剤配合の決定などの判断材料となるとした。

・「Traction curves of oils and greases ― Friction response of additives, base oils and alloys, wear resistance and fatigue resistance under slip-rolling in 2disk ―」Mathias Woydt氏(Matrilub社)…潤滑剤のトラクション曲線はCVTやトロイダルギヤの潤滑油や鉄道などのグリースの機能を定義する。実アプリケーションでの動作環境を再現するには、広範囲にわたる温度・速度・ヘルツ接触応力のトラクション曲線を記録する必要がある。このトラクション曲線とストライベック曲線が描けるOIP 社製 「2円筒式摩擦摩耗試験機」は、二つのディスクを独立制御でき高荷重下(ヘルツ接触応力P0max~4.2GPa)での転がり滑り接触(滑り率0~100%)における潤滑剤やコーティングなどの試験に最適で、転がり接触下での摩擦力となじみ効果の可視化評価や疲労ダメージ進行の評価などが可能。2円筒式摩擦摩耗試験機を用いて、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)コーティングと各種添加剤の転がり滑り接触下での摩擦低減効果を評価した事例などを紹介しながら、潤滑油や添加剤、材料、コーティングの容易に短期間に行えるスクリーニング試験として有用であることを示した。

 なお、OIP社の日本総代理店であるパーカー熱処理工業( https://pnk.co.jp/ )では今秋、上述の2円筒式摩擦摩耗試験機を導入し、受託試験を開始する計画だ。