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トライボコーティング技術研究会、令和3年度第3回研究会を開催

 トライボコーティング技術研究会(会長:大森 整・理化学研究所 主任研究員)は12月10日、東京都江東区青海の東京都立産業技術研究センター(都産技研)で、「令和3年度第3回研究会」を開催した。
 

トライボコーティング技術研究会 研究会のようす mst メカニカル・テック社
研究会のようす

 

 当日は、大森会長から第14回岩木賞で埼玉工業大学 長谷亜蘭氏、川邑研究所 川邑正広氏・JAXA 松本康司氏、ティ・ディ・シーが受賞した旨の説明がなされたほか、令和3年度 第4回研究会となる来年2月25日開催のトライボシンポジウム 第24回「トライボコーティングの現状と将来」についての告知がなされた。

 続いて、以下のとおり講演が行われた。

・「特殊環境下における超低摩擦化現象に関する研究」川口雅弘氏、齋藤庸賀氏(都産技研)…本講演で説明された「超低摩擦」とは、乾燥摩擦、境界潤滑領域を対象とし、摩擦係数0.01を下回る現象、つまり固体接触が支配的な摺動界面であるにもかかわらず摩擦係数が0.01を下回る現象をさす。DLC膜による超低摩擦研究の動向としてA.Erdemirらの取組み(摩擦係数~0.001)やメカニズムの一例などを紹介。続いて、講演者らのDLC膜による超低摩擦研究テーマである、負加荷重63.7Nで摩擦係数0.001以下という「FFO(Friction Fade Out)現象」について、トライボフィルムの観察と分析による生成メカニズムの解明やFFO現象の発現条件の精査による発現メカニズム解明に向けた取組みを、摺動界面の観察事例をまじえて紹介した。総括として、①摩擦材にDLC膜を使用する必要があり、ZrO2/DLCの摺動やN2+H2雰囲気、エタノール水の導入といった特殊な環境下でFFOが発現すること、②トライボフィルム生成過程とFFO発現過程、③トライボフィルムは導入したエタノールが主原料であること、④FFO発現中においてトライボフィルムが気化している可能性(仮説:FFO発現時の静圧軸受モデル)を確認した。

・「ヘルスケア産業支援の対象となるトライボロジーと計測機器」柚木俊二氏(都産技研)…都産技研が支援に力を入れるヘルスケア(人の健康・管理・増進)としては、体に触れて機能を発揮する化粧品・医薬部外品や健康用・医療用雑貨、医療機器、再生医療等製品が挙げられる。本講演では、褥瘡へのずり応力を滑りシートで低減する試みとして、臀部を模して開発したバイオスキンと創傷被覆材、滑りシート(TASS)を組み合わせて、TASSによる褥瘡内部ずり応力低減効果を評価するためのトライボロジー試験を行った結果を報告。TASSによる褥瘡内部のずり応力低減効果と臨床成績の対比を示した。一方、肌にクリームを塗り込む現象は、塗り始めは指・手のひらと肌との間のずりに対してクリームが示す応力(レオロジー)が、塗り込む際にはレオロジーとトライボロジーが、最後にはクリームの塗膜を介した摩擦力(トライボロジー)が関連すると考えられる。都産技研では、乾燥肌用の保湿クリームを塗りこんだ時のレオロジー・トライボロジー測定を実施。摩擦係数と使用感の比較、粘度と使用感の比較、貯蔵弾性率(G’)と使用感の比較を示した。

 講演終了後は、都産技研 ヘルスケア産業支援室の見学会が行われた。
 

トライボコーティング技術研究会 見学会のようす mst メカニカル・テック社
見学会のようす