日本航空電子工業( https://www.jae.com )は、電気自動車(EV)用コネクタにおいて課題となっていた電気接続部の銀めっき膜の摩耗を大幅に抑制する新技術「wearzerOTM」を開発した。当技術は、高い導電性と耐摩耗性を両立するコンタクト(端子)を実現可能にするとともに、めっき材の省資源化やめっき工程の省エネルギー化および製品の長寿命化に貢献する。今後、EV向け充電プラグや車載パワーライン系コネクタに適用し、製品化を進めていく。
この技術は、銀めっき膜の摺動部(接点部同士が接触し摩擦を生じる部分)に特殊な界面構造を形成することによって、銀めっき膜の摩耗の原因となる銀同士の凝着を制御する。この特殊な界面設計によって、電気伝導を妨げない程度に銀めっき面同士が接触する一方、摩耗が進行しないように離脱を繰り返すため、高い導電性と耐摩耗性を両立させるコンタクトを実現することができる。
また、同技術は、標準的な軟質銀をわずか数µm程度めっきした電気接続端子にも適用できるため、省資源化やめっき工程の省エネルギー化、製品寿命の向上に伴う廃棄物の削減など、環境にやさしいコネクタを実現することができる。
昨今、気候変動問題の解決に向けた脱炭素化の取組みが世界中で進められる中で、EVを中心とする次世代モビリティへの社会的関心が高まっている。EV充電用コネクタにおいては、高電圧・大電流といった従来の自動車用コネクタにはない新たな性能が求められる一方、製造工程を含めた環境への配慮やサステナビリティへの貢献も不可欠になっている。
特に、EVの普及に向けた課題である「充電時間の短縮」のためには大電流を流す必要があるため、電気接点での損失を防ぐために電気抵抗の低い銀めっきが用いられるが、銀めっき膜はやわらかいため、繰り返し嵌合などにより接点の銀めっきが摩耗し、電気特性や挿抜特性が悪化する、という問題があった。
この問題を解決するため、業界では銀めっきの硬質化や潤滑粒子を内包した複合銀めっきの技術開発が行われてきたが、硬質化は耐摩耗性に限界があり、複合銀めっきは製造工程が複雑化し環境負荷も大きくなるという課題があったという。