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SEMICON Japan 2024

 

人とくるまのテクノロジー展2012開催、くるまの環境・安全・快適性を支える表面改質技術

人とくるまのテクノロジー展2012 自動車技術会は5月23日~25日、横浜市西区のパシフィコ横浜で「2012年春季大会」を開催、「学術講演会」では81セッション・370件の講演発表が行われ、第21回目を迎えた自動車技術展・EV展「人とくるまのテクノロジー展2012」では、400社・914小間で製品・技術の展示が行われた。学術講演会、展示会ともに、表面改質関連のテーマが多数発表された。

春季大会論文賞に4WD車へのWCとDLCのナノ多層膜技術

 春季大会では「第62回自動車技術会賞」の発表があり、表面改質関連では今回、ジェイテクト・安藤淳二氏らによる「遊星歯車式トルク感応型 LSD(リミテッド・スリップ・ディファレンシャル=差動制限装置)の摩擦挙動に及ぼす粗さとコーティングの影響」が論文賞を受賞した。高い静粛性と安全性を要求される4WD車で、歯車式トルク感応型LSDの適用拡大に必要不可欠な自励振動の抑制に関する独創的な技術。車両の走行状態によって、歯車式トルク感応型LSD内部では、摩擦しながら歯車を差動回転させる必要があり、摺動部のスティックスリップを抑制しつつ、スムーズに摩擦させねばならない。このため本技術では、混合潤滑下での摩擦挙動(μ-v特性)の理論計算により最適化された摺動面の微細粗さと、WC(タングステンカーバイド)とDLC(ダイヤモンドライクカーボン)のナノ多層膜を採用することで、制振性と耐焼付き性、耐摩耗性を両立した。これにより車両の自励振動の抑制を実現し、パワーを確実に4輪に伝達できることが、今回評価された。

 「学術講演会」では、日産自動車・片山拓也氏らによる「DLC対応GF-5 0W-20省燃費エンジン油の開発」や、トーカロ・砂原亮介氏らによる「プレス金型用コーティング皮膜の摺動損傷と動摩擦特性」などの発表があった。

自動車に必要とされる表面改質技術が多数展示

 「人とくるまのテクノロジー展」では、環境技術や安心・安全技術、快適・利便(通信)技術の三つの分野で人・くるま・社会をつなぐスマート技術を中心に、完成車、部品、材料、試験計測機器などの製品・技術が出展され、表面改質関連では以下のような展示があった。

不二WPCのブース不二WPCのブース 不二WPCでは、低燃費車に必要な部品のダウンサイジングとフリクション低減について、ダウンサイジング化した部品に対して微粒子の高速衝突により耐久性を向上させるWPC処理と、さらなるフリクション低減と耐摩耗性向上を図るDLCコーティングの複合処理を提示した。


丸紅情報システムズのブース丸紅情報システムズのブース DLCコーティングではまた、先ごろ受託加工サービスを開始した丸紅情報システムズが、プリント配線基板(PCB)用超硬ドリルで量産実績のある、ビッカース硬さ6,500の高硬度水素フリーDLCを出展し、100℃以下の低温でコーティング処理できるため母材の変形や変質を抑えることができる上、価格も2~3割程度安価に提供可能という点を押し出して、自動車摺動部品などでのメリットをアピールした。

スルザーメテコジャパンのブーススルザーメテコジャパンのブース スルザーメテコジャパンでは、自動車軽量化のための部品の耐久性向上を図る環境にやさしいドライ処理として、各種の溶射皮膜技術を提示した。セラミック溶射皮膜では、電気自動車(EV)などで多用されるモーターの軸受などで絶縁皮膜を形成し電気腐食(電食)を防止するという。展示では、スイスのスルザーメテコ社で受託加工を行っている「SUME Bore」溶射技術を紹介。同技術は欧州で乗用車、トラックなどのガソリンおよびディーゼルエンジンなどでフリクションの低減や放熱性、耐摩耗性などに優れた溶射技術として普及しているという。今回はサンプルとしてヤマハ発動機の船舶用エンジンの展示を行った。さらに欧州で実績のあるメタプラスのPVD/DLCコーティング装置の提案を行った。

NOFメタルコーティングスのブースNOFメタルコーティングスのブース NOFメタルコーティングスでは、自動車のボルトやナット、ホースクリップ、シャーシ周りなどで実績のある防錆処理技術「ジオメット」を紹介。完全クロムフリーでありながら高い耐食性を有しており、加えてアルミニウムとの電食防止効果があることなどをPRした。フランスパビリオンでは、H.E.Fグループがガス軟窒化よりも環境にやさしいという液体軟窒化処理による自動車部品の耐摩耗性、耐焼付性、耐食性、疲労強度向上などについて提案した。

 今回もEVやハイブリッド車(HEV)とその関連部品・材料の出展が目立ったが、エネルギー需給の厳しい中、依然として主流の内燃機関車での燃費向上は喫緊の課題となっており、たとえばスズキでは、JC08モードで30.2km/Lという低燃費を実現した軽乗用車「アルト エコ」を展示した。ピストンスカート波状のパターンに加工された樹脂コーティングでは、樹脂皮膜のない部分が10μm低いためシリンダに接触しない分、摩擦抵抗を低減しているほか、3本のピストンリングのうちトップリングとオイルリングにDLCコーティングを処理し油膜が形成されにくいアイドリングストップからの再始動時などで摩擦抵抗を減らした。

 EVでも、モーターの軸受などで予想される電食対策でも、上述のセラミックス溶射皮膜など、要求される機能を付与する表面改質技術の活躍する場面は多いだろう。ますます進展するグローバル化の中で、コスト競争力の向上には廉価な材料を使いながら表面の特性を向上する必要性も増してくると思われる。今回の主要テーマである自動車の環境・安全・快適性を高める上で、表面改質技術の重要性はますます高まってきている。