トライボコーティング技術研究会( http://www.tribocoati.st/ )とドライコーティング研究会( http://www.ampi.or.jp/studygroup/studygroup.html#dryct )は9月28日、東京・青海の東京都立産業技術研究センターで、「トライボコーティング・ドライコーティング合同技術研究会」を開催した。トライボコーティング技術研究会では、2012年度第3回研究会を兼ねて開催、講演のほか同センター内施設・研究室などの見学会も行われた。
挨拶する山田氏 会の冒頭、ドライコーティング研究会から山田猛氏(近畿高エネルギー加工技術研究所)が「現在、新興国の技術的な追い上げが非常に厳しい中で、我が国はさまざまな工業分野で後れを取りつつあるのが現状である。これに対処するには技術を磨き、先進性を保持して良い製品を生み出していくのが最も重要である。コーティング技術は製品を高度化するには非常に有効な手段であり、諸外国に比べて日本のコーティング技術は進んでいる。本日は、東西でコーティングの研究会を行っている人達が集った、いわば日本のコーティング技術の叡智を結集した場である。将来の優れた製品開発につながる先端技術がこの場から生まれることを期待している」と挨拶を述べた。
挨拶する熊谷氏 続いてトライボコーティング技術研究会から熊谷泰副会長(ナノコート・ティーエス)が「日本は受託コーティングの製品化などについては優れた技術を持っていると思うが、日本からものづくりが離れている中で、地場で行われることの多い受託加工は厳しい状況にある。また、ドライコーティングにおけるプラズマを使用したプロセスはイノベーションがあって然るべき分野だと思うが、最近の日本では装置のイノベーションが生まれていないと感じている。アイディアは多くあるのだろうが、装置化するまでに至っていない。日本人の極め細やかな品質管理はコーティングの受託加工には向いていると思うが、ポテンシャルを決めるのは装置である。日本の若い人の中から新しいチャレンジ精神を持って研究開発にあたる人材が出てくることを期待している」と挨拶した。
当日の講演内容は以下のとおり。
- 講演を行う榊氏「最新の低温溶射(コールドスプレー)の現状」榊 和彦 氏(信州大学・准教授)・・・コールドスプレーのパイオニアである榊氏が概要、歴史、原理、アプリケーションの動向などを解説。その上で「従来のコーティング技術とは異なり、材料を溶融または半溶融しない固体状態のまま成膜するという特徴は、従来の課題を克服する可能性を秘めている。単に従来の溶射技術の代替というより、新規分野への適用の可能性を秘めており、その兆しも見えてきた。今後はデータベースの充実と成膜のメカニズムの解明を含め、材料科学や圧縮性流体力学などの学際的な研究を組織的に進める必要がある」とした。
- 講演を行う高瀬氏「作業からものづくりへ(21世紀 我が国のものづくりを考える)」高瀬 公宥 氏(ものづくり支援センター・センター長)・・・トヨタ自動車で生産開発技術部長、豊田中央研究所で顧問などを務めた高瀬氏が自身の経験を交えて、主に自主管理(セル)型生産方式について講演。同方式は、会社と価値観の共有が図れる自律性、権限と責任が明確な完結性、ラインを短くし環境変化などへの対応力を備えた迅速性、などが優れていると解説。同方式を成立させるための方法や同方式によって納期達成率や不良品流出数が激減した事例などを紹介した。また、同方式により小グループに権限と責任を集中させることにより、「分業によって作業化されたものづくりが再び楽しいものづくりに戻ることができる」とした。