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SEMICON Japan 2024

 

産総研、液体を強くはじく表面に半導体を塗布する成膜技術

 産業技術総合研究所は、液体を強くはじく高撥水性表面に有機ポリマー半導体溶液を塗布し、材料のロスなく均質に薄膜化する技術を開発した。この塗布技術によって、電子ペーパーなどの情報端末機器に不可欠の高性能な薄膜トランジスタ(TFT)を、従来法よりも著しく簡便に製造できる。

 半導体薄膜を撥水性の高いゲート絶縁膜表面に形成してTFTを作製すると、TFT性能の安定性が向上するが、従来の塗布法では表面が液体を強くはじくため成膜が困難であった。今回、有機ポリマー半導体を溶解させた溶液を3層構造のシリコーンゴムスタンプで圧着し、溶液を撥水性の高い表面全体に均一に濡れ広がらせることによって成膜する新技術「プッシュコート法」を開発した。

プッシュコート法の製膜プロセス(左)と製膜したポリマー半導体薄膜(右)プッシュコート法の製膜プロセス(左)と製膜したポリマー半導体薄膜(右)

 この技術により、撥水性の極めて高い表面に、均質性と結晶性に優れた半導体薄膜を得ることができるとともに、従来の塗布法と異なり、材料の無駄をほぼゼロに抑えることができる。この半導体薄膜の結晶性の改善は、大学共同利用機関法人 高エネルギー加速器研究機構(KEK)の放射光施設を用いて確認した。今回開発した新技術は、フレキシブルデバイスの研究開発を大きく加速するとともに、液体がなじみにくい表面への新しい塗布成膜技術として、さまざまな材料の薄膜化技術への応用が期待される。

 今後は、印刷条件・ポリマー半導体材料・デバイス構造を一層最適化し、TFTの性能と安定性の向上を図る。また、金属配線、電極などの印刷法による作製技術と組み合わせて、全塗布法による高性能のアクティブバックプレーンの試作に取り組む。