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第9回ものづくりワールド名古屋

 

bmt配信ニュース

自動車技術会、第73 回自動車技術会賞の受賞者を決定

10ヶ月 3週 ago
自動車技術会、第73 回自動車技術会賞の受賞者を決定kat 2023年05日26日(金) in in

 自動車技術会(JSAE、会長:大津啓司氏(本田技研工業))は横浜市のパシフィコ横浜で、「2023年春季大会」開催中の5月25日に「第73 回自動車技術会賞」授賞式を開催した。

 自動車技術会賞は、1951年に自動車工学および自動車技術の向上発展を奨励することを目的として設けられ、自動車技術における多大な貢献・功績に対し贈呈されている。トライボロジー関連では今回、以下のとおり表彰がなされた。

浅原賞技術功労賞 「エンジンのトライボロジー技術と産学連携支援による技術深化と燃費向上への貢献」 菊池隆司氏(トヨタ自動車)

 受賞者は、30年にわたり摩擦・摩耗に関する技術開発に関わり、省燃費ガソリンエンジンオイルや高出力ディーゼルエンジンのピストン用リング溝用耐摩環材料などを製品化し、新型エンジンの燃費・性能向上に貢献した。特に近年はエンジン摩擦損失の低減のために、主として潤滑技術の進化に関わり、エンジン各部の摩擦解析に基づく技術開発を進めることでエンジンの燃費向上を実現した。一方で、それまでの経験を活かして、エンジンの潤滑に関しての教育的資料の執筆、滑り軸受などの標準化活動に参加し業界の競争力向上に貢献した。現在も産学連携研究を実行する自動車用内燃機関技術研究組合(AICE)に所属し、エンジンに関する様々な課題の解決を目指した共同研究の実行支援を行っており、エンジンに関わる幅広い日本の競争力向上と人材育成に大きく寄与した。

左から、プレゼンターの大津JSAE会長(本田技研工業)、菊池氏  技術開発賞 「業界初のJASO DH-2規格性能を有する金属非含有のディーゼルエンジン油の開発」 清水保典氏・甲嶋宏明氏・葛西杜継氏・藤浪行敏氏(出光興産)

 環境負荷低減を目的に、ディーゼル車には排ガス中の粒子状物質(すすや、エンジン油添加剤由来の粒子)を捕集するフィルターが搭載されている。捕捉されたすすは燃焼させて除去することが可能だが、金属系添加剤由来の粒子は残留しフィルターの目詰まりを引き起こす。そこで受賞者らは、従来のディーゼルエンジン油で必須成分とされてきた金属系清浄剤や金属系耐摩耗剤を使用せずに、独自開発の添加剤などを駆使して、金属非含有のディーゼルエンジン油を設計した。本エンジン油が、排ガス後処理装置を搭載するトラック・バス用エンジン油規格であるJASO DH-2規格に規定されたエンジン試験と実験室的性能試験に合格することを確認し、上市した。本技術は、環境負荷低減や車輛の保守管理における運転手の業務効率化などの労働環境改善に貢献できる点が高く評価された。

左から、大津会長、甲嶋氏、葛西氏、藤浪氏

 

kat

ベアリング&モーション技術の総合情報誌「bmt」2023年5月号「特集:カーボンニュートラルとbmt技術」発行!

10ヶ月 4週 ago
ベアリング&モーション技術の総合情報誌「bmt」2023年5月号「特集:カーボンニュートラルとbmt技術」発行!admin 2023年05日22日(月) in

 ベアリング&モーション技術の総合情報誌「bmt(ベアリング&モーション・テック)」の第42号となる2023年5月号が5月25日に小社より発行される。

 今号は、「特集:カーボンニュートラルとbmt技術」で構成。特集では、カーボンニュートラルに貢献するトライボロジーの全体像から、bmtと風力エネルギーで拓く脱炭素社会、カーボンニュートラル実現に貢献する燃料電池向けターボチャージャの技術と適用、E-Axle用潤滑油の開発と性能評価、EV向けフルードの技術動向と要求特性までを広く紹介する。

 

 

特集:カーボンニュートラルとbmt技術

◇カーボンニュートラルに貢献するトライボロジー・・・東京理科大学 佐々木 信也

◇bmtと風力エネルギーで拓く脱炭素社会・・・日本風力エネルギー学会 松信 隆

◇カーボンニュートラル実現に貢献する燃料電池向けターボチャージャの技術と適用・・・IHI 小篠 拓也 氏、田中 亨 氏、淺川 貴男 氏 に聞く

◇E-Axle用潤滑油の開発と性能評価・・・出光興産 成田 恵一

◇EV向けフルードの技術動向と要求特性・・・BASF Jan Strittmatter、Masayuki Hirosue、Rene Koschabek、Naohisa Nakagawa

連載

注目技術:工業用ギヤ油の新処方技術によるギヤボックスのエネルギー効率・耐久性向上の検証・・・独Evonik社

あるコスモポリタンの区区之心 第12回 マサダ砦と集団自決・・・紺野 大介

Q&A「浄油技術」の基礎知識 第12回 オイル清浄度の測定方法・・・RMFジャパン テクニカルサポート 

トピックス

TTRFと大豊工業、自動車のトライボロジーで第6回 国際シンポジウムを開催

日本滑り軸受標準化協議会、第36回総会を開催

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イグス、機械熱回収システムを開発

11ヶ月 ago
イグス、機械熱回収システムを開発kat 2023年05日19日(金) in

 イグスは、射出成形機で使用した冷却水の熱を、産業工場の暖房に利用する機械熱回収システム(MHRS)を開発した。ガス代の節約とCO2排出量の削減を実現するこの技術を誰でも利用できるように、詳細な情報をオンラインで無料提供している。この熱回収技術を適用することでコスト削減と環境保護への貢献が可能となる。

 

 イグスでは、2025年までにカーボンニュートラル生産を達成するという目標に向けた取組みの一環として、射出成形機の廃熱を利用した機械熱回収システム(MHRS)を開発、このMHRSの技術で、ドイツ・ケルン本社の大型工場のホールを暖房することに成功した。MHRSは、暖房要件に応じて、冷却回路を流れる熱を帯びた冷却水を直接ファンヒーターに誘導し、同時に機械の過熱を防ぐ。冷却水から抽出された熱でホールを暖めるため、ガス代を節約できる。また、ファンヒーターを通過する際に熱が取り出されるため、冷却塔での冷却要求が減少し、冷却に必要な電力も少なくなる。

 変動する冷却回路の温度は、システムで可変的に調整できる。MHRSは高価なヒートポンプを経由せず、熱交換器も必要ないため、温度損失を防ぐ。コンプレッサーから熱を追加で供給する必要がない。

 射出成形機の油圧モータは、オーバーヒートを防ぐために冷却水が使われる。熱を帯びた水は冷却塔で冷却され、配管システムで再び機械に供給される。冷却塔で取り出された熱は大気中に逃げ、エネルギーとして損失してしまう。

 MHRSでは、冷却回路の熱の一部を制御ユニットで取り込み、従来のガスヒーターの横に設置した新しいファンヒーターに直接送る。ヒーターの詰まりを防ぐため、ストレーナーが水中の浮遊物をろ過して除去。熱を帯びた水が新しいヒーターに入ると、従来のヒーターの動作が停止し、ヒーターに搭載されたファンで暖かい空気をホール内に行き渡らせる。その後、水が冷却塔に戻り、サイクルが再び開始する。熱交換器を使用しないため、低温域での運用も可能としている。

 イグスは将来的に、MHRSの技術を利用して、工場およびオフィスエリアの暖房を、すべて機械熱で対応することを計画している。次の計画は、7209m2の物流センターに、9個のファンヒーターを装備することで、これだけでも毎年約31.5tのCO2を削減できる。これは、イグスが2025年までに建物および生産の完全なカーボンニュートラル化を達成するという目標に近づくための重要なステップであり、同社はこの大きな可能性を秘めた技術を他の産業・企業にも無料で提供することを決定している。

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NTN、e-Axle 向け絶縁被膜付き軸受を開発

11ヶ月 ago
NTN、e-Axle 向け絶縁被膜付き軸受を開発kat 2023年05日19日(金) in in

 NTNは、電気自動車(EV)やハイブリッド車(HEV)で使用されるe-Axle向けの耐電食軸受「絶縁被膜付き軸受」を開発した。軸受内部への電流通過を低減する絶縁被膜加工を軸受の外輪外径と幅面に施すことで、耐電圧100V以上の絶縁性能により電食の発生を抑制し、バッテリーの高電圧化などに対応する。開発した絶縁被膜は世界最高水準の高速回転性能を誇る高速深溝玉軸受を含む同社のe-Axle向け軸受商品への適用も可能。

 同社はe-Axle の電食に対応する商品として、セラミック製の転動体を用いた軸受を提供してきたが、今後はコスト面に優れた本開発品を同社の電食対策商品のラインアップに加えることで、e-Axleの進化に伴って高まる耐電食のニーズに対応し、EV・HEV のさらなる普及や高機能化に貢献していく。開発品について同社では、2027年度に5億円/年の販売を目指す。

e-Axle向け耐電食軸受「絶縁被膜付き軸受」


 

平行軸e-Axleにおける適用例(赤丸部分)

 

 近年、脱炭素化に向けた取組みが進む中、自動車市場においてはEVやHEVをはじめとする環境対応車の開発・普及が加速している。これらのモータを主動力源とする自動車には、モータとインバータ、減速機の三つが一体化したe-Axleが搭載されている。e-Axleはバッテリーの電気により稼働するが、軸受内部に電流が通過した際にスパークが発生して金属組織が溶融するとはく離などの損傷につながることから、軸受には漏洩電流による電食への対応が必要とされている。これに対して開発品は以下の特徴を持つ。

1.耐電食性能:軸受内部への電流通過を低減する絶縁被膜加工を軸受の外輪外径と幅面に施すことで耐電圧100V以上の絶縁性能を実現。モータ用軸受にかかる電圧はバッテリー電圧の10%以下と想定されるため、今後増加が見込まれるバッテリー電圧800V に対応可能な耐電圧を有する

2.放熱性能:耐電食性と放熱性を両立する膜厚とすることで、被膜加工を施していない標準品と同等の放熱性能を備えている

3.耐摩耗性能:絶縁被膜は摩擦係数が低く耐摩耗性に優れており、被膜加工を施していない標準品と比べて外輪外径とハウジング内径の総摩耗量を88%低減できる。これにより、固定されていた外輪が円周方向に回転して摩耗するクリープ現象が発生した際も、絶縁に必要な被膜を維持できる

電食試験後の外輪軌道面(左:標準品、右:開発品)
標準品では電食特有の波板状の損傷が発生している


 

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NTN、リヤ用小型・軽量ドライブシャフトの販売を拡大

11ヶ月 ago
NTN、リヤ用小型・軽量ドライブシャフトの販売を拡大kat 2023年05日19日(金) in in

 NTNは、高級車に多く採用されている後輪駆動車に最適なリヤ用小型・軽量ドライブシャフト「Rシリーズ」の販売を拡大している。省燃費・省電費化に向けて自動車構成部品の小型・軽量化が進む中で、リヤ用ドライブシャフトとして世界最小・最軽量となる同シリーズは、その適用による高い燃費改善効果が評価され、日本や欧州などの自動車メーカー数社の後輪駆動を主とするSUVや電気自動車(EV)で採用されている。同社では2027年度に80億円/年の販売を目指す。

 ドライブシャフトはエンジンやモータなどのパワートレインユニットの動力(トルク)をタイヤに伝える部品で、タイヤ側(固定式)とデファレンシャル側(しゅう動式)の二つの等速ジョイント(CVJ)とそれらをつなぐシャフトで構成される。

 リヤ用小型・軽量ドライブシャフトRシリーズは、同社が2015年に開発した「リヤ用軽量ドライブシャフト」の設計をベースに幅広いサイズバリエーションを取り揃えたシリーズで、後輪駆動の内燃機関車やEVに適用が可能となっている。

 リヤ用ドライブシャフトには従来、フロント用CVJが流用されてきたが、Rシリーズは、リヤ用に必要な作動角や機能に限定した形状への最適化を図るとともに、肉厚を薄くした中空シャフトとコンパクトブーツを採用している。これら各構成部品の見直しにより、必要な負荷容量を確保しながら、フロント用CVJとして世界最高水準の小型・軽量を実現していた従来品よりもさらに30%軽量化(中型クラスの後輪駆動車に適用されるドライブシャフトの場合:2.2kg軽量化)、外輪外径を3~5%小型化し、リヤ用CVJとして世界最小・最軽量を実現した。作動角度は19°(固定式、しゅう動式)。

 脱炭素化社会を背景に自動車のCO2排出量の削減への対策が進む中、ドライブシャフトの軽量化へのニーズはこれまで以上に高まっている。Rシリーズの軽量化による燃費改善効果をJAPIA LCI算出ガイドライン(日本自動車部品工業会が定める自動車の製造、使用段階における効率的なライフサイクル環境負荷量の算出方法)に基づき内燃機関車で試算した場合、従来品適用車両に対して燃費は0.05%の改善、CO2排出量は0.075g/km の削減効果が見込まれる。こうした高い環境性能が欧州をはじめとする国内外の自動車メーカーに高く評価され採用につながったもので、2018年に量産を開始して以来、着実に販売を拡大している。

 今後、燃費規制が一層厳しくなる中、後輪駆動形式が採用される傾向にある高級車への適用の可能性が広がるほか、EVにおいては走行性能を向上させるために車両の前方と後方にそれぞれパワートレインユニットを配置する四輪駆動車(4WD)が増加する傾向にあり、軽量を特徴とする同シリーズの需要はさらに高まることが見込まれている。

 同社は、世界シェア2位を誇るドライブシャフトのトップメーカとして、自動車のトレンドや変化するニーズを着実に捉えた商品の開発・提供を通じて業界をリードするとともに、同シリーズをはじめとする高機能商品の一層の販売拡大を通じて、環境負荷の低減に貢献していく考えだ。

Rシリーズの構成

 

適用箇所

 

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エボニック、シンガポールに工場を新設しアルコキシド事業をグローバル規模で展開

11ヶ月 ago
エボニック、シンガポールに工場を新設しアルコキシド事業をグローバル規模で展開kat 2023年05日17日(水) in

 エボニック インダストリーズ(エボニック)は、東南アジアでアルコキシド製造プラントを新設する。新プラントはスコープ1および2の炭素排出量ゼロを目指す最先端技術を備えた近代的な施設で、シンガポール・ジュロン島にあるエボニックの拠点に設置される予定。数十億円規模の投資を行い、東南アジア地域の顧客への供給安定性を高め、グローバル規模でアルコキシド事業の強化を図る。操業開始は2024年末を予定、年間生産能力は10万t。

 同社は、主にバイオディーゼル製造や製薬・農業分野での合成に使用されるアルコキシド触媒の需要拡大に対応するため、製造能力の拡充に取り組んでおり、将来的にはアルコキシド触媒はPETプラスチックのケミカルリサイクルにも使用され、循環型経済において大きな役割を果たすことが期待されている。

 触媒部のシニアバイスプレジデント兼ゼネラルマネジャーを務めるサンジーヴ・タネージャ氏は、「アジア太平洋地域は当社の触媒事業にとって主要な地域であるとともに、東南アジアは当社の成長において重要な役割を果たしている。この投資はまた、顧客満足度と供給の信頼性を高めるために、グローバルな視点で地域に根ざした活動を行うという顧客中心のアプローチに取り組む当社の姿勢を明確に示すことができた」と述べている。

 アルコキシド製品ラインのグローバルヘッドを務めるアレクサンダー・ヴェーバー氏は、「当社はすでに、ヨーロッパ・北米・南米に主要なアルコキシド製造施設を持つ。すべての関連市場に対して地域に根ざしたサービスの提供を行うグローバル供給ネットワークにおいて、アジアはこれまで欠けていた部分」と説明する。

 アジア太平洋地域のアルコキシド事業ディレクター、 フー・ソン氏は、「シンガポール・ジュロン島という戦略的な立地から、非常にダイナミックなアジア太平洋地域におけるアルコキシドの需要拡大や、『サステナブル・ジュロン島』計画に対応し、顧客のカーボンフットプリントの削減をサポートする」と述べている。

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TTRFと大豊工業、自動車のトライボロジーで第6回 国際シンポジウムを開催

11ヶ月 1週 ago
TTRFと大豊工業、自動車のトライボロジーで第6回 国際シンポジウムを開催 in kat 2023年05日09日(火) in in

 大豊工業トライボロジー研究財団(TTRF)と大豊工業は4月13日、名古屋市の名古屋国際会議場で「TTRF-TAIHO International Symposium on Automotive Tribology 2023」を開催した。

開催のようす

 

 「トライボロジーの自動車社会への貢献」を全体テーマに掲げる同シンポジウムは、トライボロジー研究の進展と自動車技術への応用等に関しトップレベルの情報を交換するとともに、この分野での産学連携の現状と将来の可能性を示しその強化を図ることを目的に、2016年から開催されている。6回目となる今回は 、「Future Prospects of Tribological Materials Surviving a Once in a Century Period of Profound Transformation Part 2 Surface Treatment(100年に一度の大変革期に対応するためのトライボロジー材料の将来展望~Part2 表面処理~)」のテーマのもとで、低摩擦を目的とした表面処理技術や耐久性・信頼性向上を目的とした表面処理技術などが紹介された。

 開会の挨拶に立った鈴木徹志氏(大豊工業副社長)は、大豊工業が曾田範宗氏や木村好次氏をはじめとするトライボロジー研究の第一人者の指導を受けながらトライボロジーをコア技術としてマイクログルーブ軸受や樹脂コーティング軸受といった先進エンジンベアリングを世に送り出してきたことや、同社が多くの恩恵を受けてきたトライボロジーの研究開発支援と啓蒙に寄与する目的でTTRFを2000年に設立し、以降、多数のトライボロジーの研究テーマに対し累計220万USドルの助成を行っていることを報告した。また、学界と産業界のコラボレーションの強化によって一層のトライボロジー研究の活性化を支援していく目的で2016年から本シンポジウムを開催していることを紹介。自動車業界の大変革期にあってトライボロジーの諸課題が厳しさを増す中で、産学連携の強化によるトライボロジー技術の一層の高度化が課題解決に寄与できるとの観点から、「本日のシンポジウムにおいても、学界と産業界の両者の活発なディスカッションを通じて、トライボロジー研究開発の促進につながることを期待している」と述べた。

挨拶する鈴木氏

 

 続いて、Kenneth G. Holmberg氏(TTRF Director)をチェアマンに、以下のとおり基調講演が行われた。

「Development of Future Powertrains for Commercial Vehicles」石川直也氏(いすゞ中央研究所)…地球温暖化防止の重要な施策としてCO2削減が要求され、自動車の電動化が進められる一方で、電力を火力発電に頼っている現状からは車両の電動化だけではCO2削減にはつながらず、発電を含めた完全な電動化が達成されるまでは、内燃機関(ICE)車では再生可能エネルギー由来の燃料の使用や熱効率の改善を進める必要がある。本講演では、物流や生活を支える商用車として、稼働コストや耐久信頼性、航続距離といったユーザーの要求に対応しつつLCAでのカーボンニュートラルを実現するための取組みを紹介。EHL理論をベースにしたクランクシステムの摩擦低減・耐久信頼性向上のための解析技術や、潤滑技術や表面改質技術を活用した部品の寿命延長のほか、部品の潤滑状態や摩耗状態の予測技術を高めることでLCAでのCO2削減に貢献できると述べた。

「New Development of Functional Surface Finishing Technologies for Next Generation Automobiles」呉 松竹氏(名古屋工業大学)…ICE車から電気自動車(EV)への転換によるエネルギー消費の節減・改善を目的に軽量化が進められる中、表面改質の対象となる材料として、アルミニウム、マグネシウム、チタニウム合金といった様々な軽量素材が採用されてきている。本講演では、EVへの転換で登場してきた部品(リチウムイオンバッテリーの部品など)に対応する表面改質技術が求められる中で、変速機用部品向けなどでアルミ合金の潤滑性・耐摩耗性を高めるAl2O3/MoS2(-Sn, Ni) コーティングや、電気端子や電気接点向けなどで銅合金に高い導電性や耐摩耗性を付与するAg(Sn)グラフェン複合コーティング、リチウムイオン電池の電極材料などに大容量と高い安全性を付与するTiO2-TiN(Sn, MoOx)複合コーティングなど、次世代車両に対応する様々な非鉄材料系表面処理技術を紹介した。

 上記2件の基調講演に続き、加納 眞氏(KANO Consulting Office)をチェアマンに、「低摩擦(Low Friction)の表面処理」をテーマとするセッションが以下のとおり行われた。

「Friction Reducing Methods of DLC Films in Oil-less Conditions」徳田祐樹氏(東京都立産業技術研究センター)…環境問題などからしゅう動部品の無潤滑化が求められる中、低摩擦特性や耐摩耗性などを表面に付与できる表面改質技術としてダイヤモンドライクカーボン(DLC)コーティングが注目されている。ここでは、無潤滑下で低摩擦を実現するDLC技術として、300℃程度で予熱し最表面にグラファイトライク構造を形成した傾斜膜とすることで摩擦・摩耗特性を改善した事例や、マイクロスラリージェットエロージョン(MSE)法を用いてDLC膜に表面テクスチャを形成することでしゅう動とともにグラファイト化したDLC膜の摩耗粉をテクスチャ内に捕捉し低摩擦化を図った事例、塩素ドープDLC膜によって耐摩耗性と超低摩擦を付与した事例などを紹介した。

「Development of DLC Reinforced Metal Matrix Coatings for Low Friction Sliding Components」Shahira Liza binti Kamis氏(Universiti Teknologi Malaysia)…ベアリングなどしゅう動部品においては、オイルの使用に伴う環境への配慮から、また風力発電など遠隔地にあって保守の難しい用途において、DLCなどの自己潤滑性材料による低摩擦化が求められている。本講演では、電気化学的成膜法を用いて、しゅう動部品の一方の材料にDLCフレークを分散させることによって、しゅう動時の無潤滑下での低摩擦化を図る手法を紹介した。開発した自己潤滑性を有するDLC/CuやDLC/NiなどのDLC強化複合コーティングは、潤滑油の供給なしにしゅう動部品の低摩擦化を実現。金属膜にDLCを添加し効率的に自己潤滑性を得る本手法を適用することで、各種機械が少ないエネルギーで同程度の出力を得られ、さらに部品の寿命を延長できる、と総括した。

「Material Design for Control of Tribo-film Structure Formed from Friction Modifiers」小池 亮氏(トヨタ自動車東日本)…エンジン油の低粘度化とともに自動車しゅう動部品の境界潤滑下での摩擦が増え、MoDTCに代表される摩擦調整剤への要求が高まっている。しかし、自動車しゅう動部品において適用の進むDLCなど硬質膜の種類により、摩擦調整剤の効果を発現するトライボフィルムの形成が影響される。本研究では、MoDTC添加油中における硬質膜を用いた摩擦系での低摩擦発現に関し、硬質膜自体が反応性を持たないCrNなどの窒化物膜は摩擦初期のなじみ過程で相手材からのFeの移着が低摩擦発現のためのトライボフィルム形成の必要条件であることや、トライボフィルムが最表層にMoS2を形成するには硬質膜基材とFe酸化物の結晶の格子定数が整数倍となることによって形成される緻密な Fe酸化物のナノ界面の形成が必要なこと、などを明らかにした。

 また、上坂裕之氏(岐阜大学)をチェアマンに、「耐久信頼性向上(Improve Durability and Reliability)の表面処理」をテーマとするセッションが以下のとおり行われた。

「Advanced Durability Surface Treatment Materials of Sliding Bearing for High Performance Diesel Engine」児玉勇人氏(大豊工業)…ディーゼルエンジンの高出力化とともにエンジンベアリングに対する負荷は高まる傾向にある。同社では高PVに対応する鉛フリーの表面処理技術として、銅合金エンジンベアリング向けのビスマス(Bi)コーティングやアルミ合金エンジンベアリング向けの樹脂コーティングを開発している。Biコーティングはトライボロジー特性に優れるものの、より高出力化するディーゼルエンジンのベアリングとしては軟質金属のため機械的強度が足りず、疲労摩耗特性が十分ではないという課題があった。本講演ではこの課題に対して、Biコーティングにアンチモン(Sb)を添加した新開発のコーティングが耐疲労強度を向上したことや、樹脂コーティングにおいて組成を最適化することで同様のアプリケーションに耐える耐摩耗性を付与できたことなどを報告した。

「Development of High strength and Anticorrosive Aluminum Alloys and Improvement of Fatigue Property」芹澤 愛氏(芝浦工業大学)…自動車の軽量化を目的にアルミニウム合金の適用が進む中で、アルミニウム合金に耐食性を付与する表面改質技術が求められている。本講演では、蒸気コーティング法でアルミニウム合金表面に緻密に成膜した水酸化アルミニウム被膜(AlO(OH))が水酸化物結晶の腐食防止効果によって高い耐食性を示すことや、蒸気コーティングの熱エネルギーによって硬度が上昇しアルミ合金の強度が高まったことなどを紹介した。動電位分極曲線からは水酸化アルミニウム被膜を被覆した基材の腐食電流密度が減少していることや孔食が抑制されていることが分かり、平面曲げ疲労試験からは水酸化アルミニウム被膜を被覆した試験片疲労亀裂の発生が抑えられ、アルミニウム合金の疲労寿命延長に寄与できることが確認された。

「Improvement of Fatigue Strength by Mechanical Surface Treatment Using Sustainable Peening Method」祖山 均氏(東北大学)…自動車の燃費・電費改善から、低摩擦化や耐久性・信頼性の向上と、環境負荷低減が求められている。本講演では、この目的に対応した、消耗材であるショット材を用いることなく疲労強度改善が可能な、サスティナブルな機械的表面改質技術「キャビテーション・ピーニング」を紹介。キャビテーション気泡の崩壊時に生じた衝撃力を有効利用してピーニングを行うキャビテーション・ピーニングが、表面硬化や残留圧縮応力の付与を実現しつつ平滑な表面を生成できることや、キャビテーション・ピーニングによってギヤやローラの疲労特性が改善された事例などが紹介された。

 講演終了後は、杉原功一実行委員長(大豊工業社長)が挨拶に立ち、「今回は100年に一度という自動車業界の大変革におけるトライボロジー材料の将来展望と、低摩擦および耐久信頼性向上のための表面処理技術という、二つのテーマでセッションを設けた。その中でトライボロジー材料:表面処理技術についての貴重な講演がなされ、学界と産業界との活発な議論がなされた。本日のシンポジウムの成果がSDGS実現に向けたトライボロジー課題の解決につながることを祈念するとともに、今後シンポジウムをより意義のあるものとして開催できるよう、参加いただいた皆様からのご意見やご示唆をいただければ幸いである。本シンポジウムの開催を継続しつつレベルアップを図っていき、産官学の連携をより強固なものにしていく一助とできれば大変うれしい」と述べて、シンポジウムは閉会した。

挨拶する杉原実行委員長


 

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イグス、メタバース・拡張現実・AI駆使のデジタルサービス・製品など190の新提案を発表

11ヶ月 2週 ago
イグス、メタバース・拡張現実・AI駆使のデジタルサービス・製品など190の新提案を発表kat 2023年05日02日(火) in

 イグスは、2023年の新提案として、190の製品およびデジタルサービスを発表した。デジタルサービスでは、メタバースや拡張現実、AIなどの技術を利用した革新的なサービスを開発。コストを抑える最適なモーション・プラスチック製品を容易に選定でき、カーボンニュートラル実現とプラスチック廃棄物削減に寄与するツールやサービスを提供する。

 同社では、楽しみながらエンジニアリング力を発揮する「Enjoyneering」をコンセプトにした多様な技術を開発。新サービスには、デジタル空間でプロジェクトを進められる「イグバース(iguverse)」や、スマートフォンでスペアパーツを特定し注文できるAI技術、既存のアプリケーションに適用できる無潤滑部品を即座に特定するモバイルアプリなどがある。

 イグバースは新しい機械、システム、アセンブリの3Dモデルを1:1のスケールで構築するデジタル空間で、各分野の技術者や顧客が集まって意見を交わすことができる。これにより、迅速・低コストで信頼性の高い製品を開発でき、問題の早期解決とCO2排出量削減を実現する。トレーニングにも活用できるイグバースのデジタルツインは、機械設計におけるバーチャルリアリティの大きな可能性を提示。イグバースを使用することで開発費を抑制でき、予算が限られている企業においても簡単に開発を進めることができる。

 同社はまた、インダストリー4.0に対応するサービスとして、ベアリング・リニアガイドやケーブル保護管、可動ケーブルなどにセンサーを搭載しIoTネットワークに統合する「スマートプラスチック」のラインアップを拡充。スマートプラスチックは、状態監視や寿命予測計算など、インダストリー4.0のトレンド技術を中小企業でも容易に導入することを可能にしている。

 さらに、同社の製品とスマートプラスチック技術を一つにまとめた新しいデジタルサービス「superwise」をリリース。ユーザーのアプリケーションやプロジェクトのデータを体系的に評価し、イグス担当者と連携しながら必要な情報を提供していく。

 新たに開発したプラットフォーム「kopla」では、ユーザーが独自のオンライン設計・計算ツールを作成することが可能となっている。このプラットフォームは、国際的に事業を展開し、自社製品をオンラインで提示したいという企業を主に対象としている。モジュール方式を採用したクラウドソリューションにより、市場投入までの時間を大幅に短縮できる。

 

イグバースのイメージ

 

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NTN、移動型独立電源がバス停の待合室として採用

11ヶ月 4週 ago
NTN、移動型独立電源がバス停の待合室として採用kat 2023年04日20日(木) in

 NTNが開発した風力や太陽光による再生可能エネルギー由来100%の電力で稼働する移動型独立電源「N3 エヌキューブ」がバス停の待合室として、静岡県榛原郡吉田町に設置された。再生可能エネルギー由来の電力によるエコで安全なバス停で町づくりに貢献する。

移動型独立電源を活用した静岡県榛原郡吉田町のバス停の待合室(開館時間6:30~23:00)


 N3 エヌキューブは、小型風車や太陽光パネル、蓄電池をコンテナに格納した移動型独立電源。風力や太陽光により発電した電力を活用できるほか、コンテナ内部をカスタマイズして様々な機器を取り付けることが可能なため、再生可能エネルギー由来の電力で稼働可能な施設として様々な用途で活用が可能となっている。

 今回、吉田町にバス停の待合室として設置されたN3 エヌキューブは、室内にベンチやテーブル、エアコン、換気扇、LED照明、Wi-Fi機器、コンセントのほか24時間体制で稼働する防犯カメラが取り付けられており、各種機器の稼働に必要な電力はすべてN3 エヌキューブによる電力で賄われる。

 同町は、誰もが気兼ねなく出かけられる町づくりを目指して、町内の公共交通機関の整備に取り組んでおり、N3 エヌキューブを活用して再生可能エネルギー由来の電力で稼働するエコで安全なバス停を整備できることから、このたび町内の1ヵ所にバス停の待合室として設置されたもの。

 駿河湾に面する同町は津波や災害に強い町づくりも推進しており、2022年5月に災害時の水防活動と救護活動の拠点および災害支援物資の備蓄・保管などを目的とした水防センターが町内の沿岸部に設置され、同施設の電力の発電装置としてN3 エヌキューブが採用されている。水防センターと今回バス停の待合室として採用されたN3 エヌキューブは、町内で局所的な停電が発生した際にはトラックで運搬され、電力を供給することも想定されている。

 これらのほかにも、N3 エヌキューブは様々な用途における活用が可能で、温度管理が可能な防災倉庫や、処理槽付きの循環式水洗トイレを取り付けたエコトイレとしても採用されている。エコトイレについては、トイレに使用される水は処理槽でろ過され再生水として循環し、外部への排水がない環境性に加えて、電気や上下水道などのインフラが整っていない場所でも設置可能な点が評価され、2022年4月に三重県桑名市の多度山上公園に設置されたほか、2023年3月には三重県松阪市の三峰山の登山口にも新たに設置されている。

 近年、企業や自治体がカーボンニュートラルをはじめとするSDGs(持続可能な開発目標)に向けた活動を進める中、様々な施設を再生可能エネルギー由来の電力で稼働させる取組みが加速している。NTNでは引き続き、再生可能エネルギー100%由来の電力で稼働するN3 エヌキューブの用途展開を進め、企業や自治体の脱炭素化、再生可能エネルギーの活用の促進に貢献していく考えだ。

仕様

 

 

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JAST、5月29日~31日にトライボロジー会議 2023 春 東京をリアル開催、参加登録は5月15日まで

11ヶ月 4週 ago
JAST、5月29日~31日にトライボロジー会議 2023 春 東京をリアル開催、参加登録は5月15日まで in kat 2023年04日20日(木) in

 日本トライボロジー学会(JAST)は5月29日~31日、東京都渋谷区の国立オリンピック記念青少年総合センターで、「トライボロジー会議 2023 春 東京」(実行委員長:出光興産・上村秀人氏)を開催する。トライボロジー会議 春 東京のリアル開催は2019年5月以来、4年ぶりとなる。JASTでは現在、トライボロジー会議への事前参加登録(https://www.tribology.jp/event/register_form/index.php?event_id=202)と、東京都新宿区のバトゥール東京で開催される懇親会への事前参加登録(https://www.tribology.jp/event/register_form/index.php?event_id=207)を呼び掛けている。参加登録はいずれも5月15日まで受け付けている。

 

 今回は、「機械要素」、「潤滑剤」、「固体潤滑」、「表面処理・コーティング」、「分析・評価・試験方法」、「摩擦」、「摩耗」、「摩擦材料」、「バイオトライボロジー」、「表面・接触」、「流体潤滑」、「疲労」、「シミュレーション」、「境界潤滑」、「現象・理論」のテーマによる一般講演と、「“超”を目指す軸受技術の最前線」、「表面テクスチャによるトライボロジー特性制御の最近の成果と今後の展開」、「水素が関わるトライボロジーの諸現象」、「自動車用動力伝達系のトライボロジー」、「自動車用エンジン油最前線―自動車の低燃費、カーボンニュートラルに向けた潤滑油の貢献―」のテーマによるシンポジウムセッション、技術賞受賞講演と論文賞受賞講演で、全182件の発表が行われる。

 30日には第67期定時社員総会・学会賞授賞式が執り行われ、続いて14時50分~16:55実行委員長の出光興産・上村秀人氏の司会による特別フォーラムが開催され、長谷川晶一氏(東京工業大学)による講演「バーチャルリアリティにおける摩擦のリアリティの実現とメタバースへの応用の期待」と、三木哲也氏(公正研究推進協会、電気通信大学 名誉教授)による講演「事例に学ぶ研究不正の実情と対応」がなされる。

トライボロジー会議への事前参加登録は以下のとおり。
https://www.tribology.jp/event/register_form/index.php?event_id=202

 30日の18時30分~20時30分にはまた、トライボロジー会議会場の国立オリンピック記念青少年総合センターから参宮橋駅経由で30分圏内にある、東京都新宿区のバトゥール東京に会場を移して、横浜国立大学・大久保 光氏の司会のもと、懇親会が開催される。懇親会への事前参加登録は以下のとおり。
https://www.tribology.jp/event/register_form/index.php?event_id=207

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BASF、中国・湛江の新統合生産拠点にアクリル酸とアクリル酸エステルの生産設備を着工

1年 ago
BASF、中国・湛江の新統合生産拠点にアクリル酸とアクリル酸エステルの生産設備を着工kat 2023年04日19日(水) in

 BASFは、中国の広東省湛江市の新しいフェアブント(統合生産拠点)で、精製アクリル酸(GAA)、アクリル酸ブチル(BA)、アクリル酸2エチルヘキシル(2-EHA)の工場を含む、新たな生産設備を着工した。2025年までに稼働し、年間生産能力はBAが約 40万t、2-EHA が約10万tを見込んでいる。

 

 BASF 石油化学品事業本部のプレジデントであるハートヴィッヒ・ミッヒェルズ氏は、「今回の着工は、中国のアクリル酸バリューチェーンにおける生産能力をさらに拡大する上で重要な節目となる。これらの大規模な新設備によって、衛生・塗料などさまざまな産業で使用されるアクリル酸の中国およびアジア市場における需要の高まりに応えることができる」と述べる。

 BASF アジア太平洋地域の石油化学品事業本部のバイスプレジデントであるハイボ・ティアン氏はまた、「当社のユーザーの主要な市場でプレゼンスを強化することで、ユーザーのビジネスの成長をより効率的にサポートできる。湛江フェアブント拠点での一貫生産により、新たなアクリル酸工場は、アジア地域のユーザーに高品質の製品を短いリードタイムで確実に供給できるようになる」と語る。

 アクリル酸は高吸水性樹脂を製造するための重要な原料で、アクリル酸エステルの一種であるアクリル酸ブチルは接着剤や建築用塗料、工業用塗料の製造に使用される。アクリル酸 2エチルヘキシルは、接着剤や塗料の重要な原料となっている。

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やわらか3D共創コンソーシアム、5周年記念シンポジウムを開催

1年 ago
やわらか3D共創コンソーシアム、5周年記念シンポジウムを開催kat 2023年04日19日(水) in

 

 やわらか3D共創コンソーシアム(会長:古川英光 山形大学教授)は4月7日、東京都江東区の日本科学未来館7階未来館ホールでのオンサイト開催とオンライン開催からなるハイブリッド形式により、「5周年記念シンポジウム」を開催した。テーマは、「超デジタルものづくり―メタバース活用、AR/VR、物質転送―」。

 山形大学 古川研究室を中心とする同コンソーシアムでは、産学官の多様な関係者とともに、3Dプリンティング、デジタルファブリケーションなどこれからのものづくりを共創し、新産業・革新的事業の創出、新たな人材育成等を目指している。

 当日は、山形大学産学連携准教授で元NHKキャスターの臼井昭子氏を司会に、山形大学理事(研究、産学連携担当)・副学長の飯塚 博氏によるオンラインでの開会挨拶、古川氏による会長挨拶に続いて、以下のとおり講演がなされた。

・基調講演「カーボンニュートラルの実現に向けて―技術開発の現状・ 課題と加工技術の役割」:矢部 彰氏(新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO) 技術戦略研究センター(TSC) サステナブルエネルギーユニット フェロー)…2050年にカーボンニュートラルを実現するためにはあらゆる技術分野が連携して総合的に温暖化ガス排出削減を実現することが必須で、それには加工技術分野が連携して加工技術の観点から英知を結集することが不可欠。また、カーボンニュートラル実現には、CO2削減コストの高い技術まで活用する必要があり、世界で膨大な対策費用が必要になる。この対策費用を削減するため、CO2削減コストを低下でき、大きなCO2削減ポテンシャルを持つ革新的イノベーション技術開発を実現する必要がある。NEDOは2030年の地球温暖化対策目標、また、2050年のカーボンニュートラル実現を目指して、グリーンイノベーション(GI)基金事業に精力的に取り組んでいる。2050年のカーボンニュートラル実現に向けて、どのような技術開発が必要になるかを俯瞰的に予測し、分野横断・融合技術にも重きを置きながら技術開発を推進していくことが重要と述べた。

講演する矢部氏

 

・会長講演「超やわらかものづくり―超デジタルが変える―」古川英光氏(やわらか3D共創コンソーシアム 会長)…料理家・酒井研野氏との共創によるウニ寿司のプロトタイプや、米粉料理家・中村りえ氏との共創による新感覚スイーツのレシピづくりなど、さらには「面白くて 変なことを 考えている」をモットーにインターネット広告やPRイベントの企画・制作を行う会社・人間との共創による子どもの肌のやわらかさを残す「やわらか記念写真」など、古川研究室で開発された3Dフードプリンターあるいは3Dゲルプリンターを使う人を集めて、その使い方を決めてもらうことが大事と述べた。また、古川会長による会員企業同士のマッチングとコラボ事業化の伴走支援「お見合い事業」を開始したことを報告。帝人・児嶋大世氏から、お見合い事業の一例として、3Dゲルプリンターを用いた、組織モデルや薬物担持材など医療用途をはじめ様々な分野への適用が見込まれる機能性ゲル材料の開発のための技術獲得に向けた協業についての紹介がなされた。

講演する古川氏

 

お見合い事業について紹介する児嶋氏

 

・基調講演②「いつもEyeしています―目を通した疾患の検査―」秋葉正博氏(トプコン技術本部)…人間が外界から得る情報の8割は視覚から獲得されており、視覚が大事であることは分かっていても目の検査が後回しになることは少なくない。眼圧が異常に高くなることで発症する緑内障は、日本人の40歳以上の20人に1人、約440万人が発症していると言われるが、9割が検査を受けておらず発見に至っていない。緑内障は日本人の中途失明原因の第1位であり、その早期発見のためには眼底検査が大切だが、近年の眼底検査として近赤外線を利用して網膜組織の深さ方向の厚みを5μmの分解能で撮影するOCT (Optical Coherence Tomography:光干渉断層計)検査では、わずか1秒で緑内障の進行具合が分かる。OCTでは心疾患や循環器疾患など眼科以外の疾患や状態も検出できる可能性があることなどを報告。手軽に早期発見できるOCT検査の早めの受診を推奨した。

講演する秋葉氏

 

 このほか、同コンソーシアムの五つの部会のうち、食品部会について伊藤直行氏(ディレクションズ)が、医療部会について兼子博章氏(帝人)が、モビリティ(構造)部会について川端邦幸氏(日本軽金属)が、ソフトマシン部会について日下明芳氏(積水化成品工業)が活動報告・構想報告を行った。

 例えば食品部会では、①造形精度・速度向上や小型化などを図る次世代3Dフードプリンターの開発、②米粉や代替卵、コオロギなどアレルギー物質を使わず持続可能性のあるフードインクの開発、③首長竜の首肉ステーキといった古生物メニューなどのメニュー開発に取り組んでいる。2023年度の取組みとしては、①参加企業それぞれの強みをもっと打ち出す、②成果を持ち帰って事業に生かしてもらう、③よりアウトリーチを活発化し、消費者のフィードバックを今後の研究開発に生かしていく。さらに、3Dフードプリンターの発展と普及に伴う、パーソナライズ化された食や時空を超える食体験とメタバースの融合によって、家族や友人などがどこにいてもどんなバックグラウンドがあっても同じ食卓を囲む「全人類対応メタレストラン」といった未来構想を紹介した。

食品部会の活動報告を行う伊藤氏

 

 また、ソフトマシン部会では2022年度のミッションとして、ソフト材料・構造が真価を発揮しそうなソフトマシンR&Dを構想することを掲げ、同部会のオープンディスカッションの中で生まれた「ソフトマシン技術シーズの卵」を、ソフトマシン開発コアメンバーが実際のモデルとして創り上げて、その成果を広く普及させる目的で設立したウェブコンテンツ「ソフトマシンDOJO」を開設。やわらかい材料・構造を活かしたこれまでにありそうでなかった新しいプロダクトの形や、やわらかものづくりの中で生まれ社会実装の期待度が高い斬新なソフトマシンプロトタイプといった制作事例を提供し、オープンな研究アイデア創出の機会を増やしている。2023年度のミッションとしてはソフトマシン企画展を構想してソフト構造・アクチュエータ・センサー・AI研究のプレゼンスを高めることを掲げ、オープンな研究アイデア創出の機会を増やすとともに、ソフトマシンの実体験デモの機会を増やし企画展までつなげてプレゼンスを高めていく。

ソフトマシン部会の活動構想を紹介する日下氏

 

 さらにゲル部会を代表して、武藤崇史氏(人間)が「山形大学×マイラボ渋谷 やわらか記念写真」と題する話題提供を行った。2022年12月に東京都渋谷区のマイラボ渋谷で実施した、生後6ヵ月〜2歳の子どもを対象に、高強度ゲルと3Dゲルプリンターを用いた共同実験企画「やわらか記念写真-赤ちゃんの感触を残す記念撮影」では、1日親子4組限定=7日間28組の事前予約枠が早々に埋まり希望者多数で追加6枠が設けられるなど、好評だったことを報告。「未来を体験する」ポイントとして、子どもの頬の形状や硬さを再現し造形をできる古川研究室の先端研究と、自分の子どもの触感を残したいという多くの親が思っていた潜在的欲求をつなぐ場を提供できたことが、成功のポイントと述べた。

ゲル部会に関連した話題提供を行う武藤氏

 

 講演に続いて、「超デジタルものづくりーメタバース活用、AR/VR―」と題するパネルディスカッションが行われた。パネルディスカッションでは佐々木直哉氏(山形大学 客員教授/立命館大学 客員教授)がモデレータを務め、田中浩也氏(慶応義塾大学環境情報学部 教授/SFC研究所ソーシャルファブリケーションラボ 代表)による混合リサイクル式大型高速3Dプリンターを用いた樹脂のマテリアルリサイクル、小川 純氏(やわらか3D共創コンソーシアム 技術リーダー/山形大学 有機材料システムフロンティアセンター 准教授)によるソフトロボットの開発と社会実装、中村りえ氏(米粉料理家)による3Dフードプリンターにおける米粉の活用など各パネリストによる話題提供がなされた後、中谷光男氏(MAKErs SENSE 代表)と古川会長の質問担当者2名とパネリスト3名による議論が活発に行われた。

パネルディスカッションのようす

 

 当日はまた、交流会・名刺交換会が設けられ、スペシャルゲストとして、西成勝好氏(大阪市立大学 名誉教授)と岸野文郎氏(大阪大学 名誉教授/関西学院大学 客員教授)が挨拶を行ったほか、帝人、日本軽金属、ユシロ化学工業、積水化成品工業による「お見合い事業ポスター展示」が行われた。

交流会のようす:西成氏(左)と古川会長

 

帝人によるポスターセッションのようす

 

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イグス、高耐久の樹脂ワイヤーセンサーを備えたケーブル保護管用の破損検知システムを開発

1年 ago
イグス、高耐久の樹脂ワイヤーセンサーを備えたケーブル保護管用の破損検知システムを開発kat 2023年04日19日(水) in

 イグスは、ケーブル保護管「エナジーチェーン」用の破損検知システム「i.Sense EC.B」向けに、測定距離の延長を図り極めて高い耐候性と堅牢性を持つ新しい樹脂ワイヤーセンサーを開発した。従来二つのセンサーを要した本体長35m以上のエナジーチェーンの状態監視を、一つのセンサーで対応。大型クレーンなど過酷で長ストロークの屋外用途でも安全なケーブルガイドを確保できる。リアルタイムの状態データを走行部全体で収集し、予期せぬ機械停止やコストを回避する。

 

 同社は、エナジーチェーンの状態監視を目的に長いストロークでも破損の兆候を即座に検知できる i.Sense EC.Bシステムを提供している。従来は35m以上では移動端と固定端両側に2セットのセンサーの設置が必要だったが、今回、新しい樹脂ワイヤーセンサーの採用により移動端に一つのセンサーを設置するだけで、本体長35m以上のエナジーチェーンの状態監視が可能となった。これによりイニシャルコストの低減とよりロングストロークでの検知精度が向上した。

 破損を検知するとセンサーが即座にエラー通知を発し、それを受けて制御盤モジュールはシステムPLCにI/O信号を送る。新しい i.Sense制御盤モジュールには、最大で2セットのEC.Bセンサーを接続可能のため、エナジーチェーン走行軸が2軸対向設置の場合もモジュールは1式で運用可能となっている。これらをPLCのデジタル入出力ポートに接続すれば、システムの迅速なシャットダウンのトリガーとしても使用できる。新しい樹脂ワイヤーセンサーは、既存のEC.Bシステムおよび i.Senseモジュールと互換性があり、IoTコンセプトにも組み込むことができる。

 i.Senseシステムは、自動車産業のガントリーローダーなど、多くの産業ですでにその性能が実証されている。イグスではこれまでの実績をもとに、インダストリー4.0で増大する機械や監視システムへの要求に対応。移動距離の延長に伴い動作が高速化するクレーンシステムでは、堅牢で耐久性のあるエネルギー供給システムが非常に重要で、過酷な環境下で負荷の高いケーブルを安全にガイドするには走行部全体でのリアルタイム状態データの収集が大きなメリットとなる。

 新しい樹脂ワイヤーセンサーは測定距離を延長できるほか、極めて高い耐候性と堅牢性を有するため、屋外用途に最適。完全自動化のクレーンシステムでは、現場で問題に気づくオペレーターが不在のため、予期せぬ機械停止の影響を大きく受けるが、信頼性の高いi.Sense EC.B状態監視システムを導入すれば、故障のない安全な動作を確保できる。

 また、i.Sense EC.Bにより最適なメンテナンスのタイミングが明確になり、交換部品・作業人件費・機械停止時間の削減にともなうメンテナンスコスト低減が期待できる。

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東京理科大学・佐々木研究室、第8回トライボサロンをハイブリッド開催

1年 ago
東京理科大学・佐々木研究室、第8回トライボサロンをハイブリッド開催kat 2023年04日18日(火) in

 東京理科大学・佐々木研究室(主宰:佐々木信也 教授)が主催する「トライボサロン」(https://tribo-science.com/salon)の第8回目が3月4日、東京都葛飾区の葛飾キャンパスでのオンサイト参加とオンライン参加からなる、ハイブリッド形式によって開催された。

オンサイト開催のようす

 

 トライボサロンは、トライボロジーに関係する情報・意見交換の場として、毎月1回のペースで開催しされている。もともとは佐々木研究室の博士課程学生の勉強会として発足し研究成果の発表や最新の研究動向などに関する意見や情報交換を重ねてきたが、2022年9月からは佐々木研究室に限らず広く参加の戸を開き、関係者のネットワーク作りも目的の一つとして活動している。トライボロジーに関する情報交換、人材交流等を通し、関連技術の向上と発展に資することを目的に、次の活動を円滑に行えるよう運営に努めている。

 第8回目となる今回のトライボサロンでは、小野寺 康氏(本年4月よりENEOS所属)が、原子間力顕微鏡(AFM)のダイヤモンド探針を用いた摩耗試験による、硫黄系添加剤とリン系添加剤の耐摩耗性発現のその場観察をテーマに、話題提供を行った。

 話題提供と質疑応答の後は、年度初めということもありオンサイト参加およびオンライン参加のサロンメンバーから近況報告が行われた。続いて、交流会が設けられ、サロンメンバーによる活発な情報交換・意見交換がなされた。

 なお、トライボサロンに関心のある方は以下のURLを参照されたい。

 https://tribo-science.com/salon

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THK、単純作業の自動化に最適な円筒座標型モジュールの受注を開始

1年 ago
THK、単純作業の自動化に最適な円筒座標型モジュールの受注を開始kat 2023年04日05日(水) in in

 THKは、人手で行っているワーク投入をはじめとする単純作業の自動化に最適な円筒座標型モジュール 「MLS」の受注を開始する。省力化が必要な半自動機の“後付け自動化”を実現する。

円筒座標型モジュールMLS

 

 円筒座標型モジュール MLSは、伸縮/昇降/旋回の単純機構を組み合わせたボルトオンタイプ(追加の加工や部品製作を伴わずにボルト締めだけで連結できる機構)のモジュール型ロボット。

 各モジュールは独立構造で取り回しに優れ、既存設備への後付け設置が可能なため、人手に頼っていた単純作業の自動化を簡単・迅速に行える実現できる。従来の多関節ロボットと比べて、MLSは設置スペースに制限のある場所やクレーン作業を伴う大掛かりな据付工事ができない場所など、これまで様々な理由から導入に踏み切れなかったケースに対し、柔軟に対応できる。

 既存設備の自動化ニーズは、製造業の働き手不足も相まって高まりを見せている。その一方で、コストを抑えながら限られた作業スペースの中で人手による単純作業をいかにして手軽に自動化へシフトさせるかといったことが、自動化の豊富な実績を持つ自動車・電機業界だけでなく、食品や物流などの業界でも課題となっている。

 また近年は、人手不足の影響もあり、作業者一人で加工機・検査装置などの半自動機を複数台掛け持ちすることも珍しくなく、既存設備の自動化はもちろんのこと、短時間・低コストで省力化設備を導入したいというユーザーの声も多数寄せられていた。

 これに対しTHKでは、人の手を介さずに単純作業の自動化を最大限に図るべく、円筒座標型モジュールMLSを開発したもの。可動部の基本構造は伸縮/昇降/旋回の三つの単純機構を組み合わせたシンプルなものに特化。これにより制御方法も非常にシンプルで、専用のプログラム言語を学習することなく普段から使い慣れているPLCで操作が可能となっている。加えて、時間のかかるティーチングの工数も削減できる。

 同社では独自の新製品開発を通して、あらゆる分野の自動化、省力化需要に対応し、生産性向上、工程改善のためのソリューションを提案していく考えだ。

 円筒座標型モジュールMLSの特徴は以下のとおり。

・シンプル機構で広い可動領域 広い作業領域が確保でき、可動領域に筐体が残らない

・簡単制御 普段使い慣れた一般的なPLCで操作が可能なほか、ドライバーは 主要なFAネットワークに対応し、ティーチング工数も少なく、何より専門のプログラム言語の学習が不要

・早期導入、早期復旧 配線ケーブルやチューブ等をモジュール化したことで取り回し性が高く、構造の簡略化/省配線化に優れる。そのため、短時間で導入から稼働までが実現できるほか、保守・ メンテナンスも効率的に行える

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トライボロジー研究会、第33回講演会を開催

1年 ago
トライボロジー研究会、第33回講演会を開催admin 2023年04日03日(月) in

 トライボロジー研究会(運営委員長:杉村丈一 九州大学教授、事務局:協同油脂)は3月7日、横浜市西区のパシフィコ横浜会議センターで、「第33回講演会」を開催した。今回は『みんなに聞いて欲しい開発ストーリー:トライボロジーの挑戦』をテーマに、以下のとおり行われた。

第33回講演会のもよう

・KEYNOTE SPEECH

「建設機械用オイル状態監視システムの開発」 秋田秀樹氏(日立建機)

・CASE STUDY:SESSION Ⅰ パイオニアの開発ストーリー(材料・設計編)

「グリース潤滑下における繊維強化PA66-鋼のトライボロジーとウォーム減速機の開発」国島武史氏(ジェイテクト)

「エンジン軸受用樹脂コーティングの開発」神谷周氏(大豊工業)

「流体動圧軸受「動圧ベアファイト」の開発」栗村哲弥氏(NTN)

・CASE STUDY:SESSION Ⅱ パイオニアの開発ストーリー(潤滑剤編)

「低粘度エンジン油による省燃費技術について」奥山庸介氏(本田技研工業)

「GRモーターオイルの開発」山守一雄氏(トヨタ自動車)

「ジウレアグリースの適用拡大に向けた製造技術への挑戦」今井裕氏(協同油脂)

・CASE STUDY:SESSION Ⅲ コラボレーションによる開発ストーリー

「プレス成形性評価に優れた摺動試験法の開発」竹林浩史氏・石垣一氏(日本製鉄)、伊原智章氏(トヨタ自動車)

「水環境下での製鉄設備ロール軸受構造の改善」岡本和樹氏(JFEスチール)

「消音グリースの開発」榊原功次氏・岡崎 末広 氏(デンソー)、池島昌三氏,柿崎充弘氏・伊熊亨介氏(協同油脂)、大野信義氏(佐賀大学)

・特別講演

「気象のビジネス化 顧客価値創造とインフラマーケティング」山本 雅也 氏(ウェザーニューズ)

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イグス、軽量・省スペースの無潤滑ロータリーテーブルベアリングを開発

1年 ago
イグス、軽量・省スペースの無潤滑ロータリーテーブルベアリングを開発kat 2023年03日30日(木) in

 イグスは、軽量・コンパクトのイグリデュール ロータリーテーブルベアリング PRT-04シリーズとして、高荷重に対応する優れた性能は保持しつつ、より軽量・省スペース化を実現した製品「PRT-04マイクロ」(https://www.igus.co.jp/info/small-size-slewing-ring-bearing)を開発した。アルミ製リングと高機能ポリマー製スライド部の組み合わせにより、優れた耐摩耗性と長い耐用年数を確保。無潤滑で使用できるため、汚れや湿気などの外部環境による影響を受けない。

PRT-04マイクロ

 

 設置スペースの縮小など、機械部品に対する要求は近年ますます厳しくなってきている。そうした課題を解決すべくイグスでは、堅牢で小型アプリケーションに最適なロータリーテーブルベアリングPRT-04マイクロを開発したもの。開発品は外径60mmで、PRTシリーズの中で最も小さな取り付けサイズとなる。三つのアルミ製リングと、ボールやローラーの代わりとなるスライド部で構成。新開発したスライド部はアルミニウムとの相性が良い高機能ポリマー「イグリデュールJ」製で、耐摩耗性が高い上、吸湿性が低く、耐薬品性にも優れる。

 アルミニウムとポリマーの組み合わせはまた、軽量性と高い安定性を実現。PRT-04マイクロは極めてコンパクトでありながらアキシアル方向の高荷重(最大3500N)に対応、小さな設置スペースでの滑らかな回転・旋回運動と軽量化の実現により、可動式の照明器具(ムービングヘッド)、電車や飛行機の座席テーブル、自動車内での各種用途など、多様な用途に適用できる。また、軽量化によりエネルギー消費量を節約できるため、持続可能な社会の実現に貢献する。

 スライド部のイグリデュール材質には固体潤滑剤が含まれ無潤滑動作が可能なため、ベアリングの耐久性向上とメンテナンスフリーを同時に実現するほか、メンテナンスコストの削減も図れる。また、すぐに取り付けが可能なため、設計コストや設置作業を軽減できる。

 オンラインツールのPRTエキスパートを利用することで最適なタイプが選定可能で、設置スペース、荷重、速度、環境のパラメータを入力するだけで、個々のアプリケーションに最適なロータリーテーブルベアリングを検索し、製品寿命を計算する。

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IHI、燃料電池向け電動ターボチャージャを披露

1年 ago
IHI、燃料電池向け電動ターボチャージャを披露kat 2023年03日30日(木) in in

 IHIは3月15日~17日に東京都江東区の東京ビッグサイトで開催された「第19回 FC EXPO―【国際】水素・燃料電池展―」に出展、様々な燃料電池システムの性能・コスト・信頼性要求に対応する、高効率の電動ターボチャージャ「ETCシリーズ」(https://www.ihi.co.jp/turbocharger/products/electric_turbocharger/index.html)を紹介した。

会場のようす

 

 展示会では独メルセデスベンツ の燃料電池PHEV「GLC F-CELL」に搭載されている、世界初のタービン搭載電動ターボチャージャ「ETC-S(モータ出力11kW)」を展示。

ETC-S

 

 また、大型商用車などへの燃料電池の適用拡大に伴い燃料電池システムの高出力化が進む中で、高出力スタックに対応してモータ出力を20kWに高めた「ETC-M」と、さらにモータ出力を30kWに高めた「ETC-L」の次世代ETC2種を展示した。

ETC-M

 

ETC-L

 

 燃料電池システムは主に、水素タンク、燃料電池スタック(FCスタック)、パワーマネジメントシステム、電動コンプレッサで構成され、水素と空気中の酸素で直流電気を発生させているが、酸素の供給は電動コンプレッサで空気を圧縮して支えている。

 ETCはコンプレッサ、タービン、モータ、軸受、インバータで構成。ETCで圧縮された空気(酸素)と水素タンクから供給された水素がFCスタックで化学反応し、発電されてバッテリーに充電され、充電された電気が主機モータの駆動やETCの駆動に使用される。FCスタックで化学反応した後に排出される排気ガス(湿り空気)と水はタービンを通過して外部に排出されるが、この際にタービンは排気ガスが持つエネルギーを回収しETCの回転をアシストする。使用条件に対して最適なコンプレッサとタービンの組合せを選定することで圧縮動力の30%程度の動力をタービンで回収でき、これによりモータやインバータの小型化が可能になる。

 IHIのETCの特徴は以下のとおり。

(1)タービンアシストによる高効率化
・FCスタックから排出される排気ガスのエネルギーをタービンで回収することで,コンプレッサ必要動力の30%を賄い、ETCの小型化・消費電力削減が可能
・ETCの消費電力削減により、燃料電池システムの高効率化を実現し、用途に応じて小型化・高出力化が可能

(2)オイルフリー
・潤滑油ミストによる触媒の被毒に起因する燃料電池の性能低下対策のため、動圧タイプの空気軸受採用によりオイルフリーを実現

(3)起動停止運転が可能
・空気軸受しゅう動面へのコーティング適用により,アイドリングストップのような起動と停止時の一時的な接触状態での回転しゅう動に対応、ETCの起動停止運転を可能にすることで燃料電池システム未使用時の省電力化が可能

(4)高出力密度
・回転数の高速化により、量産実績のある従来機に比べ58%の出力密度向上

(5)モータとインバータの一体化
・モータとインバータを一体化し、合計サイズの最適化をすることで小型化を実現。これにより燃料電池システムの小型化が可能

 IHIでは燃料電池スタックの出力に応じたシリーズ展開を進めており、ユーザーは必要とする出力ごとの選択が可能となっている。また、複数台のETCを用いることで大出力のシステムへの対応も可能となる。さらに、エアロパーツの最適化により最大限の効率を提供していく。

ETCのラインナップ

 

ETCのラインナップの位置付け(横軸:修正質量流量,縦軸:圧力比)

 

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Rtec-Instruments、三円筒型ピッチング試験機1号機を東京理科大・佐々木研究室に納入

1年 ago
Rtec-Instruments、三円筒型ピッチング試験機1号機を東京理科大・佐々木研究室に納入kat 2023年03日28日(火) in

 Rtec-Instruments(https://rtec-instruments.com/?lang=ja)は、ピッチング、トラクション、摩耗、およびローリングとスライドの様々な組み合わせのもとで試験が可能な三円筒型ピッチング試験機「MPT-3000」を開発し、第1号機を先ごろ、東京都葛飾区の東京理科大学・佐々木研究室(主宰:佐々木信也教授)に納入した。セットアップが容易で、完全に自動化された高度なコントローラーにより、負荷、温度、速度の高い再現性と高精度の測定が可能になる。

三円筒型ピッチング試験機「MPT-3000」

 

 同試験機は、中心ピン試験片とリングで独立したモータが回転方向と回転数を制御し中心ピンにかかるトルクを測定。また、ピッチング発生時には振動を検出して試験を安全に停止させる。

 潤滑剤試験、電気自動車(EV)、表面処理、作動油、ピッチング、レール摩擦、圧延、転がり接触、トラクション係数測定など、研究開発から品質保証まで適用できる。5000N以上・6000rpm以上の高荷重・高速回転を実現するほか、最大測定トルク50Nm(9000rpmまで対応)、すべり率制御0~200%まで制御が可能。

Rtec-Instruments日本法人社長の國井卓人氏と
佐々木研究室に納入された三円筒型ピッチング試験機

 

kat

日本滑り軸受標準化協議会、第36回総会を開催

1年 ago
日本滑り軸受標準化協議会、第36回総会を開催kat 2023年03日27日(月) in

 日本滑り軸受標準化協議会(PBSA)は3月7日、東京都千代田区の学士会館での対面参加とウェブ参加からなるハイブリッド形式により、「2022年度 第2回総会(通算第36回総会)を開催した。

 総会ではまず、開会の挨拶に立った林 洋一郎PBSA会長(オイレス工業)が会員各位の参加に謝意を示した後、「今回は、前回の2022年度第1回総会に続いてハイブリッド形式で開催しているが、本会場での参加が12名、ウェブでの参加は4名となっている。本日は総会の終了後、経済産業省の根岸様、復興庁の森下先生から講演をいただく。後ほど背景の説明があるが、 ISO/TC123国内委員会の委員長は森下先生から大同メタル工業・片桐氏に交代となる。ISO/TC123の国際会議は昨年秋にフランスでハイブリッド形式にて開催されたが、現地参加は開催国のフランスと日本のみだった。幹事国の日本としては前向きに現地参加を検討した結果、議長を中心とした最小限の人数の参加とし、PBSAは要望に合わせた支援を行った。本年の国際会議は日本開催となり、会場は京都にすることになった。これも可能な限りの支援を行いたいと思う。今回は講演会終了後の懇親会を再開することにした。諸般の事情により理事の方々の都合を確認せずに日程を決めたことから、残念ながら総会・懇親会ともに現地参加者が多くはならなかった。対面で少しでも多く参加していただき、情報交換ができればと考えており、本年6月の総会では少しでも多くの方に会場にて参加いただけるよう調整していきたい」と語った。

挨拶する林PBSA会長(右)と議事進行を務める橋爪PBSA会計担当(左)

 

 続いて前回(通算第35回)総会議事録の確認がなされた後、PBSA会計担当の橋爪 剛氏(オイレス工業)より2022年度の経過報告がなされた。総会および理事会については、第1回総会をハイブリッド形式にて開催し2021年度活動報告・会計報告および2022年度活動計画・予算計画が承認されたことや、書面理事会にて理事就任や役員の交代が承認。また、関連会議については、国際会議が2022年11月23~25日の3日間、フランス・ポワティエでの対面参加とウェブ参加によるハイブリッド形式で開催され、PBSAが旅費等を支援したことや、国内本委員会および国内小委員会の審議へPBSA会員が参加し、TC123関連ISO規格および規格開発の際に必要な規格を購入し規格開発を支援している。

 また、PBSA役員の退任・新任・交代、会員の交代が報告された。染谷常雄顧問(東京大学名誉教授)、山本隆司理事(東京農工大学名誉教授)、森下 信理事(横浜国立大学名誉教授)が退任し、新しい理事に三原雄司氏(東京都市大学)、是永 敦氏(産業技術総合研究所)、片桐武司氏(大同メタル工業)が就任する。片桐氏はまた、ISO/TC123国内委員会委員長に就任する。監事は田中博美氏から土信田 孝氏(ともに折橋製作所)へ、会計は片桐氏から花橋 実氏(ともに大同メタル工業)へ交代する。

 さらに、ISO/TC123平軸受国内委員会の2022年度活動報告および2023年度活動計画が発表。ISO/TC123森下委員長よりTC123活動へのPBSA会員からの協力に対する感謝が述べられたほか、国内幹事の橋爪氏(オイレス工業)より2022年度の国際標準規格開発状況・国際会議参加状況、2023年度の活動計画の説明がなされた。2023年度のISO/TC123国際会議は日本(京都)での開催が予定されており、PBSAへ支援要求書を提出したことが報告された。


 総会終了後は、以下2件の講演がなされた。

1.「第1部 経済産業省の最近の標準化政策/第2部 標準化ヒストリー(番外編)」根岸喜代春氏(経済産業省 産業技術環境局 国際標準課…第1部では経済産業省が行ってきた政策について、標準化の歴史を交えながら解説された。標準化は『コンセント・ネジ』など物の互換性・品質の確保から始まり、その後物の『安心・安全』の確保へと広がり、現在は『サービス、社会システム、SDGs・環境分野』へと拡大している。また、標準化を活用した市場創造・拡大について実例を示し、標準化とビジネスが密接に関係していることが説明され、今後は『標準化に対応した人材の育成や組織づくり』が重要であることが解説された。第2部ではJISを例に日本における標準化の変遷や標準の国際化に向けた変化について解説がなされたほか、今後のISO/TC123活動へPBSAに求められる対応についての見解が示された。

講演する根岸氏

 

2.「福島の現状と福島国際研究教育機構の設立」森下 信氏(復興庁 参与)…2023年度に『福島国際研究教育機構』が設立予定である。講演では、現地の現状および機構の概要やその広域的波及効果について語られた。

講演する森下氏

 講演終了後は、会員の親睦を深めるとともに自由な意見交換を行うために、懇親会が実施された。

 次回総会(通算37回)は、本年6月に都内にて開催される予定となっている。
 

kat
Checked
7 分 27 秒 ago
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