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潤滑油協会、2024年度 潤滑油研究会を開催

8ヶ月 4週 ago
潤滑油協会、2024年度 潤滑油研究会を開催kat 2024年08日01日(木) in

 潤滑油協会(JALOS)は7月10日、「2024年度 潤滑油研究会」を開催、約140名が参加した。資源エネルギー庁の支援を受け、潤滑油の品質確保事業等への支援事業(補助事業)の一環として、潤滑油技術等に携わる人材を育成するために必要な潤滑油関連情報を提供することを目的として開催。2020~2023年度はコロナウイルス感染対策としてウェブミーティング形式で開催されていたが、本年度より通常の会場開催となったもの。

開催のようす

 

 当日は開会の挨拶として、JALOS潤滑油製造業近代化委員会 委員長で三和化成工業顧問の和川敬之氏が「本研究会はアンケートに基づき、その時々に応じた話題を提供している。エンジン油の規格から基油の話、最近では厳しさを増す化学物質の話題や、昨今ではEV化やカーボンニュートラル関連の話題も取り扱っている。本日は2件の講演があり、出光興産からは潤滑油産業が社会全体の脱炭素化に貢献し続けるために必要な取り組みと同社が提供するソリューションの各種事例について、本田技術研究所からはモビリティにおける電動パワーユニットの性能進化に必要な技術について、それぞれ講演をいただく。本日の研究会が皆様にとって有意義なものとなるよう祈念している」と述べた。

開会の挨拶を行う和川氏

 

 続いて以下のとおり講演がなされた。

講演1「持続可能(サステナブル)な社会の実現に向けた潤滑剤産業の課題と出光の挑戦」田村和志氏(出光興産)

 潤滑剤産業のサステナビリティに関する課題としては、サステナビリティに関する潤滑剤へのニーズや付加価値の具体化、潤滑剤業界固有の標準化されたサステナビリティ評価方法と製品間の比較可能性を有する製品別算定ルール(PCR)の策定があり、これらが①潤滑剤による社会全体のサステナビリティへの貢献(削減貢献とカーボンプライシング)に必要とされる。また、潤滑剤のリサイクル・資源循環を推進するための社会システムの整備、植物由来基油に関する技術開発・市場創造が、②サステナブルな原材料を使用した潤滑剤の市場導入(資源循環の実現と再生可能原材料の利用)につながる。

 潤滑剤による社会全体のサステナビリティへの貢献では、社会全体のサステナビリティに貢献するために、カーボンフットプリント(CFP)の低減とともに削減貢献量の維持・向上、削減貢献量を犠牲にしてCFP低減を図るような取り組みの防止、省エネ・省燃費性能の継続的な向上(CFP、削減貢献量に関するガイドライン整備、省エネ・省燃費製品の規格・標準化)、環境対応技術の社会実装を後押しするようなカーボンプライシング制度の戦略的活用が重要。

 サステナブルな原材料を使用した潤滑剤の市場導入では、潤滑剤製品のサステナブル化の方策としてマテリアルリサイクル(基油再生)の推進と再生可能原材料の利用、基油再生は欧米島ではすでに事業化されておりバージン基油同等の性能を発揮させることが技術的に可能、基油再生が真にサステナブルであるかは慎重な検討が必要(基油再生の実現には環境影響の正確な把握と社会システムの整備が必要)、再生可能原材料の利用は現時点ではコストが過大(再生可能原材料を使用した革新的な製品の開発と市場創造が必要)。

 さらに出光興産のソリューションとして、同社が製品CFPはもちろん削減貢献量も重視し「社会全体のサステナビリティに貢献する潤滑剤」の開発・製造・販売に取り組んでおり、サステナブル潤滑剤の市場創造のため「サステナブルな原材料を活用した革新的な潤滑剤」の開発に取り組んでいることを紹介。これらの活動を通じて、持続可能な社会の実現に貢献していくと総括した。

講演する田村氏

 

講演2「電動パワーユニットの進化に伴うトライボロジー技術」加藤維識氏(本田技術研究所)

 自動車の電動化の状況について概説したほか、電気自動車の電動パワーユニット(PU)においても軸受やギヤ、ギヤの冷却油、電動ポンプ、各部位のフリクションなど、トライボロジー技術が要求されるテーマは多いと説明。

 モータ性能は温度に依存するため冷却が重要など、電動PUにおいて性能を向上させるには熱を効率的にマネジメントすることが大切となる。高電圧モータの冷却では、大型ラジエータで冷やした水を循環させ壁を介して冷やした水と接触させる「顕熱方式」が主流で、冷却能力を向上させるには接触部の表面積を増やしつつ冷却流体の量を増やす必要があり冷却システムが大型化するという問題がある。熱を効率的にマネジメントするには内燃機関でさまざまな採用実績を有する潤滑油を用いた小型でレイアウトに左右されない「コイル内油冷」が望ましいとしつつ、コイル冷却する技術を進化させる大容量の熱交換技術、油中泡の影響、表面性状の影響などについて検討を加えた。

 潤滑油による顕熱で冷却性能を向上させるには表面積と油量が大きいほうが良いため冷却システムの大型化につながってしまうため、絶縁流体を用いた潜熱方式が検討されているが、ウォータージャケット内にて沸騰させた絶縁流体の大きな気化潜熱を利用することで冷却系をコンパクトにできる「沸騰冷却システム」を紹介。自社の沸騰冷却テストの結果、表面の性状による違いでは、表面積を増やしつつ流体の流れを変えることのできるディンプルの付与によって熱交換がしやすくなり、流れが大きくなることによる冷却効果の向上によって、熱交換能力が合計で40%向上したと報告した。電動PUの冷却において、同じ流体の量でも表面テクスチャなどで表面積を増やすことや、フルードの動的接触角、ぬれ性を改善することで冷却性能を向上できることを示唆した。

 今後必要な研究として、①大容量の熱交換に必要な高性能の流体システム、②同流体システムにも使える動力損失の少ない表面積が大きい表面構造、③システムの各要素部品を電動化に対応させた改良、と総括した。

講演する加藤氏

 

 講演終了後の挨拶に立ったJALOS会長の石川裕二氏(中外油化学工業会長)は、「本研究会は毎回、7月10日の『潤滑油・オイル(OIL)の日』に開催しているが、この記念日は私が制定した。コンサドーレ札幌のコンサドーレは道産子(ドサンコ)を逆さに、また、私の地元である埼玉県の草加市にあるアコスホールのアコス(AKOS)は草加(SOKA)を逆さに読んだもので命名している。こうした連想から、2007年の全国石油工業協同組合の長い会議の最中に、眠気覚ましにノートに落書きしたOIL の文字を逆さにしたら710に見えたので、本日7月10日をOILの日に決めたものだ。さて、潤滑油協会では本日講演いただいたようなテーマに対しても前向きに取り組んでいるが、さまざまな取り組みの中でもBCP(事業継続計画)対策に力を入れている。集中豪雨や地震などの災害だけでなく、社員の多くがコロナウイルスや熱中症に罹患した際にも、我々の潤滑油を製造する工場がすぐに復旧・稼働できるような体制を構築する必要がある。本年から当協会は新社屋において本格的に実務をスタートしている。新人スタッフも新たに2名加わり新体制で職務に邁進しているので、当会に対し引き続き、皆様のご指導、ご協力を仰ぎたい」と述べて、閉会した。

閉会の挨拶を行う石川JALOS会長


 

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TECHNO-FRONTIER 2024が開催

8ヶ月 4週 ago
TECHNO-FRONTIER 2024が開催kat 2024年07日30日(火) in

 日本能率協会は7月24日)~26日、東京都江東区の東京ビッグサイトで、モーション・エンジニアリング展、モータ技術展など22の展示会で構成される「TECHNO-FRONTIER 2024」を開催した。ベアリング&モーション技術(bmt)関連では、以下のような展示がなされた。

 DICは、歯車試験によりポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂よりも高トルク領域で使用可能なことが確認されているポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂「DIC.PPS」製の遊星歯車を紹介した。

 また、金属製ニードルベアリングを代替できる、TPRと共同開発の「DIC.PPS製スラストワッシャ」を展示。金属製ニードルベアリングよりも70%の軽量化、5dBのノイズ低減、30%の摩擦係数低減が可能とした。

 さらに、ロボットフィンガー自体にMID(射出成形によって立体的にめっき配線を形成する手法)で回路を形成し、位置センサや歪みゲージなど各種センサ機能を付与できる、軽量で多機能なPPS製ロボットフィンガー「MoR」をデンソーウェーブ製の協働ロボット「COBOTTA」に装着し、大きさの違う柔らかいワークを把持するデモなどを実施した。

DIC  PPS製ロボットフィンガー「MoR」を協働ロボットに装着し、大きさの違う柔らかいワークを把持するデモ

 

 THK は、超低ウェービングのボールリテーナ入りLMガイド「SPHシリーズ」を初披露した。転動溝条列数を8 条列と倍にすることでボールの負荷を半減し、ナノメートルレベルの超低ウェービングを実現しつつ、ISO 規格に準拠した標準寸法のため従来の超低ウェービングLMガイドSPR形にない互換性を有する。

 また、ボンディングマシンなど半導体製造装置の高性能化要求に対応する高加減速対応・低摺動ミニチュアLMガイド「AHRシリーズ」を初出展。最大加速度300 m/s²の、最高速度5m/sの高速稼働に耐える。

 さらに、本体をハウジングに圧入して組み付けるタイプのリニアブッシュ「LMHB」を紹介した。組付工数の削減を可能にし、組立の自動化や生産性の向上に貢献する。

THK 高加減速対応・低摺動ミニチュアLMガイド「AHRシリーズ」

 

 ハイウィンは、は超薄型で低重心、そして大中空径が特長のダイレクトドライブ(DD)モーターのラインアップに新たに加わった「DMHシリーズ」展示機を初披露した。テストハンドラー(半導体デバイスの後工程試験を自動化する装置)や外観検査装置、振動発生装置、テーピングマシンなど、高応答、高トルク、高速位置決め動作角度が小さく、周波数が高いアプリケーションに最適。Eシリーズドライバー搭載で、より早く、より安定し、より正確な産業需要を実現、生産効率が大幅に向上し60000UPH(Unit Per Hour)の生産能力を実現する。

ハイウィン DDモーター「DMHシリーズ」

 

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NTN EUROPE、新本社社屋起工式を開催

9ヶ月 ago
NTN EUROPE、新本社社屋起工式を開催kat 2024年07日29日(月) in

 NTNの連結子会社で、欧州地域で軸受などの開発、製造、販売を行うNTN EUROPEは7月10日にフランス・オートサヴォア県・アヌシー市の新本社社屋建設予定地で起工式を執り行った。新社屋は2026年3月に完成する予定で、欧州事業の中核拠点として地域戦略に向けた事業推進体制を強化していく。

 今回の新社屋建設は市の都市開発を機に決定したもので、起工式には、オートサヴォア県のイヴ・ルブルトン知事、アヌシー市のフランソワ・アストーグ市長をはじめとする自治体関係者のほか、NTNグループからはNTNのCEO・鵜飼英一氏、欧州地区担当執行役の山本正明氏、NTN EUROPE 社長のドミニク・ラヴィラ氏など、約60名が出席した。

 ルブルトン知事からは、地域雇用の創出や今後の発展への期待を込めた言葉が寄せられ、鵜飼CEO は、「新社屋で新しい技術や技能を開発し、将来の変化に対応していく」と挨拶した。

 その後、次の100年も地域とともにNTN EUROPEおよびNTNグループが成長していくことを願って、ルブルトン知事ら来賓とともに桜の植樹を行った。

 NTN EUROPE は、2008 年にNTNグループに加わり、欧州事業の中核拠点として自動車や航空機、鉄道車両、各種産業機械向けベアリング(軸受)の開発、製造、販売を行ってきた。2023年には社名をNTN-SNR ROULEMENTS からNTN EUROPE に変更し、NTNの欧州戦略における役割を高めており、今後も事業推進体制を強化するとともに、脱炭素化をはじめとする市場ニーズへの対応力の強化を通じて欧州地域における販売拡大やNTNブランドの浸透に取り組んでいく。

挨拶する鵜飼CEO

 

桜の植樹(写真左より、サディエ議長、ルブルトン知事、鵜飼CEO)

 

NTN EUROPE 本社新社屋完成予想図

 

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木村洋行、直接潤滑方式LEGスラスト油膜軸受の適用を拡大

9ヶ月 ago
木村洋行、直接潤滑方式LEGスラスト油膜軸受の適用を拡大kat 2024年07日29日(月) in in

 1898年にキングスベリー博士はオズボーン・レイノルズの潤滑理論をもとにセンターピボット式スラスト軸受の第1号を完成させ、この独自設計の軸受を実用化、1910年には米国政府よりキングスベリー・スラスト軸受に関する特許が承認され、1912年にキングスベリー社(当時キングスベリー・マシーンワークス社)を設立した。以降キングスベリー社では着実な成長を遂げ、新しい軸受を設計しながら軸受の性能を向上させ、さらに厳しい運転条件での要求を満たす軸受の設計技術と製造技術を習得してきた。

 油膜軸受にはスラスト軸受とジャーナル軸受があるが、その中でもティルティングパッド式スラスト軸受の代表格としてはキングスベリー博士の考案したキングスベリータイプとミッチェル博士の考案したミッチェルタイプに大別される。また、潤滑方式としては100年以上前から確立されている油槽式と1980年代から登場した直接潤滑方式がある。

 ここでは、木村洋行が日本総代理店を務めるキングスベリー社の直接潤滑方式のスラスト軸受「LEG(Leading Edge Groove)スラスト軸受」について、その特長と適用によるメリットを中心に紹介する。

LEGスラスト軸受の構成および機能

 LEGスラスト軸受は、主にティルティングパッド(またはシュー)、ベースリング、オイルフィードチューブ、レベリングプレートから構成される(図1)。

 パッドは、低炭素鋼表面に、スズを主成分とするホワイトメタル合金を鋳込んだものが標準材質となる。表面温度が160℃付近に達するとホワイトメタルが溶出し始め、軸受としての機能が損なわれるため、LEGスラスト軸受では運転時のパッド表面の最高温度が120℃以下となるよう、撹拌抵抗の低減や低温油膜の形成につながる、さまざまな工夫がなされている。また、パッド本体に温度センサを取り付けてパッド表面温度を常時モニタリングし、閾値を超えた際にアラームを出す予兆保全システムが組まれることも少なくない。

 LEGスラスト軸受は一方向回転での使用を前提に設計されているため、パッドそれぞれの前縁部に給油溝(LEG)を設けることで、給油溝から直接パッド表面を潤滑できる機能を有する。また、キングスベリーのパッド底面にはピボットと呼ばれる球面形状の支点を設けており、これにより各パッドが自動でティルティング(調心)し、均等に荷重を受けようとする。通常はパッド有効長の50%の位置にピボットが設けられている(センターピボット)が、LEGの場合は一方向回転を前提としているため、パッド有効長の60%の位置にピボット(オフセットピボット)が設けられている。これによって、スラストカラーとパッドの間に「くさび型の油膜」が、より形成されやすくなる。

 ベースリングは、パッドとレベリングプレートを適切な位置で保持し、ベースリング背面の環状の給油溝とパッド表面のLEG溝を接続するオイルフィードチューブによって、ベースリング側からパッド表面に潤滑油を直接給油する。

 上下2 段のレベリングプレートは、ロータにミスアライメントがある場合でも軸方向に動作してパッドの軸方向位置を補正するため、後述するイコライジング機能をベアリングに持たせることができる。

 こうした独自の構成要素と後述する機能によって、従来の油槽式と比較してLEGスラスト軸受は以下の特長を有する。

・最も高温になりやすいパッドの75%/75%位置の表面温度が、荷重と回転スピードに応じて、油層式よりも8~28℃低下

・負荷能力が15~35%向上

・潤滑油量が最大60%低下するため、損失馬力も45%低減
 

図1 LEGスラスト軸受の構成LEGスラスト軸受適用のメリット イコライジング機能

 キングスベリー型スラスト軸受の最大の特長は「イコライジング機能」を持つことである。ミスアライメントが原因でスラスト軸受の各パッドに掛かる荷重に差異が生じた場合でも、上下2 段のレベリングプレートが動作することでパッドの軸方向位置を調整し、各パッドにかかる荷重を平均化して、パッドの片当りを防止する機能のことをイコライジング機能と呼んでいる(図2)。

 実際の回転機械では、横軸ロータのたわみや、スラストカラーとハウジングとのミスアライメントをゼロにはできない。

 このため、イコライジング機能を持たないミッチェル型スラスト軸受の場合はレベリングプレートがないため軸方向の厚さ寸法を抑えられるものの、理論上はスラスト軸受全体として許容可能な荷重でも、片当たりによって特定のパッドに荷重が集中すると、このスラスト軸受は過負荷によって損傷する可能性がある。

 これに対してキングスベリー型は、構成部品に上下2段のレベリングプレートを含むため軸方向の厚さ寸法は増すものの、レベリングプレートによるイコライジング機能の効果によって特定のパッドに荷重が集中せず、すべてのパッドの負荷レベルを平均化できるメリットがある。このイコライジング機構とティルティングパッドの機能が相まって、0.13°までのミスアライメントが許容可能となっている。
 

図2 上下2段のレベリングプレートによるイコライジング機能LEG方式

 油槽式軸受では、軸受箱内を潤滑油で満たすことで油膜を形成させているが、油膜部分以外にも油膜軸受の機能としては不要な部分にまで過剰な油量が必要とされ、また高速回転時の撹拌ロスが大きく、損失馬力が大きい。

 これに対しキングスベリー社では、さらなる高速化を図り損失馬力を低減した高効率な回転機械を実現すべく、スラストカラーとパッドの間に必要量の潤滑油のみを給油する直接潤滑方式「LEG方式」を開発している。

 このLEG軸受では、低温の潤滑油がパッド前縁側のLEG溝から直接給油され、回転とともにスラストカラーとパッドの間に均一に効率的に油膜が形成される(図3)。このため、油槽式に比べ給油量が少なくて済み、また、撹拌抵抗を小さくできるため損失馬力を大幅に低減できる。油槽式と異なりオイルシールリングも不要で、ここでも撹拌抵抗を低減している。

 軸受ハウジング下部に設けられた大きな直径の排油口からパッド後縁部の高温の残留油を積極的に排出するとともに、LEG溝からは冷却された低温の潤滑油が直接供給されるため、パッドの温度を低下させることができる。その結果、パッド温度が低くなる分だけ軸受の許容荷重を増やすことが可能となっている。

 直接潤滑方式としては欧州で開発されたスプレー式もあるが、オリフィスの機能を持ったスプレーノズルによってスラストカラーに対して潤滑油を吹き付け、パッドとの間に潤滑油膜を形成する方式をとる。給油量の削減やメカロスの低減については効果が見込めるが、スプレーノズルから低温の油が供給されてもパッド後縁部の高温の残留油によってパッドの表面温度が下がりにくくなる可能性がある。また、スプレー方式ではノズル穴がオリフィスの機能を持つためにノズルの穴径が小さく、潤滑油の管理レベル次第では油中の異物による目詰まりの発生が懸念される。

 これに対して、LEG方式では軸受ハウジングの外部にオリフィスを設けて油量を調整しているほか、オイルフィードチューブの径が大きいため目詰まりが発生することもない。

 従来の油槽式の軸受をLEGスラスト軸受に交換することで、同じ軸受サイズのままでも給油量と損失馬力の低減、メタル温度の低下を実現でき、結果的に軸受負荷能力を飛躍的に向上できる。回転機械の効率化による省エネルギー性能の向上とランニングコスト低減など、回転機械の付加価値向上が図れる。こうした軸受の油槽式からLEG直接潤滑式へのアップグレードによって、既存の回転機械の性能向上を図ることも有効である。

図3 LEG直接潤滑方式高速性能

 センターピボットのキングスベリー製を含む油槽式軸受やスプレー式の直接潤滑軸受が両方向回転に対応しているのに対し、LEGスラスト軸受は一方向回転での使用を前提に設計している(軸受速度によっては正回転の許容荷重の約60%で逆回転運転にも対応)。しかし、オフセットピボットを用いて正回転一方向の用途に特化したLEGスラスト軸受は、撹拌抵抗が極めて小さくパッド温度を低く抑えることが可能なことなどから、特に高速回転向けの用途で高い優位性を示す(図4)。

 図4に示すように、周速が上がるにつれて、油槽式軸受(図中のFLOODED)ではスラストカラーとパッド間の油膜部分から生じる機械的ロス(Film Shear)に、撹拌抵抗など荷重支持に必要のない機械的ロス(Parasitic Loss、図5参照)が加わり、損失馬力が大きくなる。これに対し機械的ロスが荷重支持に必要なFilm Shear のみとなるLEGスラスト軸受は、高速回転時の損失馬力が小さい。直接潤滑方式のメリットは、油膜とは関係のない無駄な機械的ロスと言えるParasitic Lossを大幅に減らせることにある。

図4 高周速時のLEGスラスト軸受と油槽式軸受との損失馬力の比較

 

図5 Parasitic Lossが発生する油槽式軸受の各部位LEGスラスト軸受の適用拡大:エチレンプラント向けの採用が増加

 LEGスラスト軸受を含むキングスベリーの軸受製品は、発電所関連のガスタービンや蒸気タービン、ポンプ、コンプレッサ、減速機、掘削機、船舶用タービンといったように、広範囲に適用されている。しかしながら我が国の「2050年カーボンニュートラル実現」に向けた取り組みの中で、長期的には脱炭素化に向けた開発が進む火力発電向けガスタービンではあるものの、現状は新規受注が減る中で火力発電向けのLEGスラスト軸受の採用が減少する傾向にある。

 一方で近年、エチレンプラントの蒸気タービンやコンプレッサ向けに、直接潤滑式LEGスラスト軸受の引き合いが増えてきている。エチレンプラントでは通常、分離ガス用、エチレンガス用、プロピレンガス用の3種類のコンプレッサトレイン(コンプレッサ複数台とそれらを駆動させる蒸気タービンが連結されたシステム)が稼働している(図6)。エチレンプラントでは近年プラントの大型化が進められ、大容量化に伴う荷重の増大や定格回転数のさらなる高速化と、蒸気タービンへの要求性能が厳しさを増しているが、油膜軸受で最も採用実績が多く、高速性能に優れ信頼性の高いLEGスラスト軸受が有力視されている。油膜軸受ではパッドの温度を下げることによって高荷重を支持できることから、パッドの裏金材(Shoe body)として、熱伝導性の良好なクロム銅を使用している。エチレンプラントの心臓部である一軸多段圧縮機タイプのコンプレッサもまた、極めて大型で高馬力のものが使用されるが、蒸気タービンほどの高荷重がかからないことから、通常の低炭素鋼製の裏金材を用いたLEGスラスト軸受が採用されている。

 シェールガス由来の低価格天然ガスを原料とする米国でのエチレンプラントの大規模な新設・増設や長期にわたる原油高などを背景として、中国や韓国の石油化学業界では自国内のエチレンプラントを新設・増設する動きが相次いでおり、中国や韓国のエチレンプラントの蒸気タービン・コンプレッサ向けを中心に、LEGスラスト軸受の採用の検討が進んできている。

 LEGスラスト軸受のさらなる用途拡大にあたっては、面圧を上げたい、同じサイズで性能を高めたい、同じ性能でコンパクト化を図りたいといった各種のユーザーニーズに対応する必要があるが、パッド表面の標準材質となるホワイトメタルの温度上限(120℃前後)によって、軸受の運転温度条件が制約されてしまう。そのため、使用条件に応じてポリイミド(PI)樹脂など耐熱性の高いスーパーエンプラを表面に用いたパッドや、耐食性の高いステンレス製のパッドなど、ユーザーのカスタマイズの要求に対応している。現在もさらに、より耐熱性の高いスーパーエンプラ・ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂製のパッドをトライするなど、パッドの耐熱温度の向上に取り組んでいる。
 

図6 エチレンプラントの一例(提供:荏原製作所)今後の展開

 木村洋行ではキングスベリー社からの技術支援も得ながら、サービス面においても長年にわたり綿密なサポートを行っている。キングスベリー社では面圧、周速、シャフト径といった運転条件に基づく軸受性能の計算データを蓄積し、当社を通じてユーザーに提供しているが、キングスベリー社内の豊富な設備による実験・検証によって計算プログラムをアップデートしており、ユーザーにおいて、LEGスラスト軸受の採用前に、実際の運転結果に近い精度の高いシミュレーションが可能になっている。

 木村洋行では引き続き、高速・高荷重対応などの高性能の油膜軸受製品を紹介するとともに、より良いサービスを提供していくことで、タービン・コンプレッサなど回転機械のメーカーにおける、高効率製品の開発に貢献していく。
 

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東京理科大学・佐々木研究室、第22回トライボサロンをハイブリッド開催

9ヶ月 ago
東京理科大学・佐々木研究室、第22回トライボサロンをハイブリッド開催kat 2024年07日27日(土) in

 東京理科大学・佐々木研究室(主宰:佐々木信也 教授)が主催する「トライボサロン」(https://tribo-science.com/salon)の第22回目が7月27日、東京都葛飾区の葛飾キャンパスでのオンサイト参加とオンライン参加からなる、ハイブリッド形式によって開催された。

開催のようす

 

 トライボサロンは、トライボロジーに関係する情報・意見交換の場として、毎月1回のペースで開催されている。もともとは佐々木研究室の博士課程学生の勉強会として発足し研究成果の発表や最新の研究動向などに関する意見や情報交換を重ねてきたが、2022年9月からは佐々木研究室に限らず広く参加の戸を開き、関係者のネットワーク作りも目的の一つとして活動している。トライボロジーに関する情報交換、人材交流等を通し、関連技術の向上と発展に資することを目的に、次の活動を円滑に行えるよう運営に努めている。

 第22回目となる今回のトライボサロンでは、「高強度鋼の転がり疲れにおけるき裂形成」のタイトルで、横浜国立大学・梅澤 修氏を講師に話題提供が行われた。

 講演では、転がり軸受の高サイクルの転がり接触疲労におけるき裂の形成過程や、浸炭歯車におけるピッチング疲労におけるき裂形成過程(トライボフィルムの形成・寄与をまじえて)、さらには、電気自動車(EV)などで求められる高速回転・高面圧・高静粛性を実現するための歯車の疲労強度向上で要求される、鋼の窒化処理・浸炭窒化処理への期待と課題などについて紹介した。

 なお、トライボサロンに関心のある方は、以下のURLを参照されたい。
 https://tribo-science.com/salon

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ものづくり ワールド [東京] 2024が開催

9ヶ月 ago
ものづくり ワールド [東京] 2024が開催kat 2024年07日26日(金) in

 RX Japanは6月19日~21日、東京都江東区の東京ビッグサイトで、「機械要素技術展」や「次世代 3Dプリンタ展」などからなる「ものづくり ワールド [東京] 2024」を開催した。ベアリング&モーション技術(bmt)関連では以下のような展示がなされた。

 イグスは、機械や設備などの画像からAIが無潤滑化につながる樹脂部品を提案するアプリ「igusGO(イグスゴー)」の日本語対応バージョンを紹介した。同アプリは、可動機構を持つ幅広い対象物をAIが認識し、ベアリングやリニアガイドなど、活用・置き換えの可能性があるイグスのモーションプラスチックをユーザーに提案するもの。ブースではまた、廃樹脂材を使用して製作したサステナブル自転車「igus:bike」を披露した。
 

イグス「igus:bike」

 

 オイレス工業は、水中や湿潤環境下で優れた寸法安定性と摩擦特性を発揮する充填剤入りポリエステル自己潤滑軸受「オイレス ファイバーフロンGH」を紹介した。①低膨潤のため初期のクリアランスを金属軸受同等に小さくできる、②高い耐摩耗性があり装置の長寿命化につながる、③無給油で使用できるので装置のクリーン化とメンテナンスの低減が可能なほか、初期グリース塗布作業の工程削減につながる、④食品衛生法ポジティブリストに適合、などの特長を持つ。また、従来金属に埋め込んでいた固体潤滑剤を埋め込むタイプでより低摩擦化の実現を展開した。
 

オイレス工業「オイレス ファイバーフロンGH」

 

 木村洋行は、エバリックス製ピラー型電動アクチュエータをベースに、サーボモータと力覚センサを内蔵し、胸部Ⅹ線写真を撮像するためのレントゲンの位置合わせなどにおいて、力覚センサが検知した力の大きさに応じて最適なアシスト力が加わるため軽々と医療機器の上下動(位置合わせ)が可能なシステム「Effortless Motion Control」を披露した。また、300~5000Nmの広いトルク範囲をカバーする、バックラッシ0.1arcmin以下の高精度遊星ギヤユニット「PSCシリーズ」(シェフラー製)を紹介した。減速比は1/35.5~1/200で、低騒音、低振動、低発熱で長寿命、オイル潤滑メンテナンスフリーといった特長を持つ。
 

木村洋行「Effortless Motion Control」

 

 グーテンベルク/大塚化学は、最高速度700mm/s、最高加速度30000mm/s、積層ピッチ50~200μmという業界トップレベルの高速・高精度造形を実現する、FFF方式の大型産業用樹脂3Dプリンター「G-ZERO L1」を披露した。チタン酸カリウム繊維材料(TISMO)の含有量やポリアミド(PA)やポリフェニレンスルフィド(PPS)など熱可塑性樹脂基材の組み合わせをコントロールすることで、基本性能の高強度・高寸法安定性に加え、耐熱性、帯電防止などの性能を付加/強化できる大塚化学製「POTICON FILAMENT」との組み合わせで、射出成形に迫る高強度・高精度を実現できることをアピールした。
 

グーテンベルク/大塚化学「G-ZERO L1」

 

 THKは、自社開発のムービングマグネット方式のリニアモータを駆動に採用した「次世代リニア搬送システム」を紹介した。小型でありながら高推力、高速循環が可能なため、生産性を最大化できる。また、製品の品種を変えたい場合は、上位PLCよりポジションを直接変更することにより自由に位置決めポイントの変更が可能で、変種変量生産に柔軟に対応できる。モジュールを組み合わせて、垂直あるいは水平循環の自由な搬送レイアウトを構築できるほか、モジュール側のLMレールに特殊部品を搭載することで走るたびスライダ側への自動給油を実現できる。
 

THK「次世代リニア搬送システム」

 

ニッペコは、フッ素系溶剤を用いない環境と人にやさしい水希釈型潤滑剤「HYDLUBTER™ CFP-12」を紹介した。グリースのようなべたつきがなくサラサラで、薄膜塗布が可能。潤滑油成分を水で希釈し、有効成分として摩擦低減剤、防錆剤、防腐・防カビ剤を添加。①ゴム・樹脂・金属部材への優れた塗布性、②優れた乾燥性、③対鋼材で高い防錆性、④対樹脂で潤滑剤による樹脂割れなどの劣化がない、⑤対ゴムで潤滑剤によるゴムの膨潤や硬度変化などの劣化がない、⑥樹脂潤滑用途での擦れ音防止、⑦ゴムの一時的挿入助剤としての理想的特性、などの特長を持つ。
 

ニッペコ「HYDLUBTER CFP-12」

 

 日本ベアリングは、小型アクチュエータ「BG9」を参考出品した。4条列4点接触の高剛性はそのままに、高さ9mm、幅20mmの小型化と、精密級の繰り返し位置決め精度±1μmを実現する。ガイド・ボールねじ一体構造によって組み立て工程を削減する。シリンジポンプや文注装置、チップマウンターなどに活用できる。また、本年4月に発売した高剛性・高負荷容量・コンパクト化を実現した進化系クロスローラーガイド「スライドウェイHV形」や、クロスローラーを使用したケージずれ防止機能付きの有限タイプの曲線運動軸受「ゴニオウェイ」などを展示した。
 

日本ベアリング「BG9」

 

 ハイウィンは、コンパクト・高トルク・高精度な波動歯車減速機「DATORKER🄬」の新シリーズとして追加した、重負荷型の「DGC/DGHシリーズ」、耐モーメント型の「DSC-Mシリーズ」、軽量型の「DLCシリーズ」を紹介した。小型・軽量で組み立てが簡単で、各種産業用ロボットだけでなく、工作機械や半導体製造装置、歯科ミリングマシンなど幅広い精密機器に使用可能で、厳しい負荷条件でも高い角度伝達特性を発揮するため、特に産業用ロボットや工作機械などに最適。コンパクト、高性能、長寿命で、ゼロバックラッシで安定した高い位置決め精度を実現できる。
 

ハイウィン「DATORKERシリーズ」

 

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日本食品機械工業会、FOOMA JAPAN 2024を開催

9ヶ月 ago
日本食品機械工業会、FOOMA JAPAN 2024を開催 kat 2024年07日26日(金) in in

 日本食品機械工業会は、6月4日〜7日、東京都江東区の東京ビッグサイトで、「Breakthrough FOOMA」をテーマに47回目となる「FOOMA JAPAN 2024」を開催した。

 食品産業界は現在、食品の安全・安心の提供はもとより環境に配慮した持続可能な食品産業の発展、食料安全保障の確立、生産性向上、労働力確保、海外展開の促進等さまざまな社会課題を抱えている。そうした中で今回の開催テーマでは、本展が達成したこれまでの成果を礎に、ブレークスルーしたFOOMA JAPANが、食品機械産業界及び食品産業全体の持続可能な産業基盤を保持させ、より一層の発展に寄与していくという決意を表した。

 本展では「食の安全・安心」という基本を堅持し、生産性向上や高効率のための技術、自動化、省人化を図るロボット、AIなど最先端テクノロジーと最新鋭の製品・サービスが披露されたが、ベアリング&モーション技術関連では、以下のような展示がなされた。

 ファナックは、食品・クリーン仕様のロボットによる自動化、省人化を提案。協働ロボット「FANUC Robot CRX(食品対応仕様)」は、耐環境性の高い米国FDA認証の白エポキシ塗装を施しているほか、NSF H1認証の食品対応潤滑油が使用されているが、オペレータが軽い力でロボットを直接動かして作業をロボットに簡単・正確に再現できるよう教示する「ダイレクトティーチ」機能によって、サイクルタイムを圧縮できるとした。また、やわらかいゴム製の指を使用したSoft Robotics社製のロボット用ハンド「Soft Gripper mGrip」を装着した食品仕様のパラレルリンクロボット「FANUC Robot DRシリーズ」とスカラロボット「FANUC Robot SR」を用いて、やわらかく不定形の食品を協調ハンドリングするデモンストレーションなどが行われた。

ファナック「ソフトハンドを装着したパラレルリンクロボットとスカラロボットによる
食品の協調ハンドリングのデモ」

 

 新東工業は、各軸(X、Y、Z)の力荷重と、各軸周りのモーメントを高精度で検出、ロボットに人間の手首のような力感覚である力覚を付与し、高度な自動化を可能にする6軸力覚センサ「ZYXer®」を紹介した。多くの応用用途の中で今回は、食品などを「運びながら計る」重量測定ソリューションを提案した。ロボットに装着することで食品などを高速で持ち運びながら、力検知を活用して重量を測定して箱詰め、計量不良品の排出までを一貫で自動化できる。水平・垂直方向の動作不要で搬送中に正確に計量を行えるため、サイクルタイム改善と省スペース化が可能。ZYXer®はそのほか、食材のカットなど、ロボットはもちろん装置の力制御にも応用できる。

新東工業「6軸力覚センサ「ZYXer」を活用した運びながら図る重量測定ソリューションの提案」

 

 大同メタル工業は、市販の360°カメラで撮影した現実の写真や動画をクラウドにアップロードするだけでVRコンテンツを簡単に作成できるクラウドソフト「製造業のためのVRクラウドソフト」を紹介した。「文章中心のマニュアルで伝わりづらくOJT頼みになっている」、「教育者が講義工数増加による負担増」、「人によって教え方がバラバラでルールが遵守されない」といった研修での課題に対して、VR導入による解決を提案。コンテンツ作成の不安や悩みは同じ製造業でありユーザーでもある同社が伴走型サポートによって解決するとアピールした。新人作業研修、作業手順書作成、安全教育、異常処置訓練、工場見学など、さまざまな用途に柔軟に対応できる。

大同メタル工業「製造業のためのVRクラウドソフト」

 

 COCは、ステンレス製玉軸受ユニット「サニライン」を展示した。無給油でメンテナンスフリーの上、防塵・防水保護性能規定「IP69K」の認証を国内で初めて取得、高圧洗浄にも対応する。独自のロック構造「オクロック」でシャフトを傷つけず、機械から12mmの隙間を確保するスタンドオフハウジングによる定置洗浄が可能。金属探知機に反応するステンレス製の安全カバーはワンタッチで簡単に脱着可能で、食品衛生管理基準「HACCP」の要求に応えた食品衛生とプラスチック材料を一切使わない環境対策に則している。ブースでは、スタンドオフハウジングによる定置洗浄のデモが行われた。

COC「サニラインのスタンドオフハウジングによる定置洗浄のデモ」

 

 サーフテクノロジーは、異物混入対策の独自微粒子投射処理「MD®(マイクロディンプル®)処理」と、PFAS対策となるフッ素樹脂コーティング代替のシリコーン系コーティング「Infinity」を展示した。MD処理は、独自の微粒子投射処理でコーティングではないため、はく離などの異物混入がなく、粉体や包装品の付着抑制、滑り性向上に効果的で、食品製造での採用が進んでいる。また、Infinityは食品業界で実績のある非粘着・耐摩耗性を付与するLibelte製の、フッ素を含まないシリコーン系コーティングで、粘弾性食品やテープ糊等の付着抑制に優れている。

サーフテクノロジー「MD処理による粉体の付着抑制と滑り性向上のデモ」

 

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自動車技術会、人とくるまのテクノロジー展 2024を開催

9ヶ月 ago
自動車技術会、人とくるまのテクノロジー展 2024を開催kat 2024年07日26日(金) in in

 自動車技術会は5月22日~24日、横浜市のパシフィコ横浜で「自動車技術展:人とくるまのテクノロジー展 2024」を開催した。590社/1378小間の規模で開かれ、3日間で75972名が来場した。ベアリング&モーション技術(bmt)関連では、以下のような展示がなされた。

会場のようす

 

 イグスは、機械や設備などの画像からAIが無潤滑化につながる樹脂部品を提案するアプリ「igusGO(イグスゴー)」を紹介した。ブースでは、来場者に同アプリをスマートフォンにダウンロードしてもらい、可動機構を持つ自動車やロボットの模型を撮影してもらうことでAIが画像を認識し、対象物で使われるベアリングやリニアガイドなど、活用・置き換えの可能性があるイグスの無潤滑部品をユーザーに提案するというデモンストレーションを行った。

イグス「igusGO(イグスゴー)」

 

 NTNは、タイヤ側に搭載される固定式CVJの従来の構造概念を大きく変え、ボールが転がる転動溝が内輪・外輪で互いに交差するとともに、隣り合う転動溝が互い違いに傾斜した独自の「スフェリカルクロスグルーブ構造」を有する高効率固定式等速ジョイント「CFJ」を紹介した。その構造によってCVJの内部部品間に発生する力を相殺でき、世界最高水準の高効率化(従来品に対しトルク損失率を50%以上低減)と軽量・コンパクトを達成、「第74 回自動車技術会賞・技術開発賞」を受賞している。

NTN「CFJ」

 

 ジェイテクトは、カーボンニュートラル達成に向けて注目を集める水素社会への貢献を目指し、化石燃料の代わりに水素をエンジンで燃焼させて走行する水素エンジン車向けに開発した「高圧水素減圧弁」を紹介した。バルブから供給された高圧水素をエンジンで必要な圧力に調整(減圧)する製品で、燃料電池自動車向け第2世代高圧水素減圧弁のコア技術を生かし、エンジンが必要とする圧力の水素を供給できる。

ジェイテクト「高圧水素減圧弁」

 

 大同メタル工業は、「大同は挑む!高速領域(30000rpm)のその先へ‼」と謳って、E-Axle向け転がり軸受の滑り軸受化を提案した。滑り軸受化によって流体潤滑による大幅な低摩擦化やモータの高速回転への対応や高負荷時の耐久性向上が図れるほか、最大65%減の省スペース化と平均85%減の軽量化が可能な点などをアピールした。

大同メタル工業「E-Axle向け転がり軸受の滑り軸受化の提案」

 

 大豊工業は駆動ユニット各部位における転がり軸受の滑り軸受化を提案した。ユニットの小型化、低NVかの課題に対して、転がり軸受を最小板厚1.0mmの滑り軸受に置き換えることで、外径で約40%減の省スペース化が図れるほか、流体潤滑の滑り軸受への置き換えで約40%NVを軽減できるとアピールした。

大豊工業「駆動ユニット各部位における転がり軸受の滑り軸受化の提案」

 

 日本精工は、超低フリクションT-HUB(円すいころ)ユニット軸受を体感する展示を行った。同軸受は、電動車の低フリクション化と軽量化に貢献するユニット軸受で、ブースでは現行品(第2.5世代)と、予圧範囲を縮小しボールハブで培った設計仕様を盛り込み低フリクション化を図った開発中の新製品(第3世代)を展示。現行品と新製品の回転トルク差を体感できる展示とした。

日本精工「超低フリクションT-HUB(円すいころ)ユニット軸受の体感展示」

 

 不二越は、EVモータの5万回転対応を目指した高速回転軸受を紹介した。CAEにより高速回転時の保持器応力を低減することで早期破壊、疲労破壊を回避できるほか、保持器変位を低減することで軸受の昇温・焼付きを回避できる。保持器形状の最適化により軸受幅の短縮が可能となり、ユニット重量の低減に貢献する。軸受内部諸元の最適化により低トルク化を実現している。シムにより保持器の変形/応力を抑制

不二越「EVモータの5万回転対応を目指した高速回転軸受」

 

 ミネベアミツミは、超精密加工技術により小型軽量化と高速高出力化の両立を実現した「電動コンプレッサ用ボールベアリング・リテーナリング」を紹介した。超精密機械加工技術によってボール転走溝の粗さを向上させているほか、可動スクロールの複数のリテーナリングは回転時の抵抗を防ぐために極めて高い真円度が要求されることから、ボールベアリング部品を転用した専用のリテーナリングを採用している。

ミネベアミツミ「電動コンプレッサ用ボールベアリング・リテーナリング」

 

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イグス、第9回ベクター賞 受賞事例を公開

9ヶ月 ago
イグス、第9回ベクター賞 受賞事例を公開kat 2024年07日26日(金) in

 イグスは、ケーブル保護管「エナジーチェーン」や可動ケーブル「チェーンフレックス」を使用した独創的なエネルギー供給システムの事例を表彰する「ベクター賞」を2年に一度開催しているが、今年の「第9回ベクター賞」の受賞事例4件を公開した。

 今回37カ国から集まった328の使用事例のうち、研究機関や製造業の専門家で構成された審査員による選考プロセスを経て、最も革新的なアプリケーションである「ベクター金賞」にリスボン大学 天体物理学・宇宙科学研究所(ポルトガル)の多天体近赤外線分光器MOONSが輝いた。また、銀賞はTDK RFソリューションズ社(アメリカ)のビークルインザループ(VIL)試験用装置に、銅賞はMECAoctet社(フランス)のACCORアリーナの鏡張り可動式天井に贈られた。さらに、サステナブルな事例に贈られるグリーンベクター賞には、Bear Machines 社(ドイツ)のトラックタイヤを再生させる機械「ベアカット」が輝いた。

ベクター金賞:多天体近赤外線分光器MOONS/リスボン大学 天体物理学・宇宙科学研究所(ポルトガル)

 リスボン大学の天体物理学・宇宙科学研究所が参加しているMOONSコンソーシアムは、広範囲の観測視野を持つ多天体近赤外線分光器「MOONS」を開発している。この分光器を設計するうえで課題となったことの一つが、回転するフロントエンドから分光器に光を運ぶ、高感度光ファイバーの誘導だった。光ファイバーを安全に、観察の障害となる圧力を発生させずに移動させるため、イグスの多軸動作向けケーブル保護管・トライフレックスシリーズのエナジーチェーンが採用された。リスボン大学の天体物理学・宇宙科学研究所は、本事例で2024年のベクター金賞と賞金5,000ユーロを獲得した。

ベクター銀賞:ビークルインザループ(VIL)試験用装置/TDK RFソリューションズ社(アメリカ)

 TDK RFソリューションズ社は、運転支援システムを搭載した車の電磁両立性(EMC)を測定するためのビークルインザループ(VIL)試験用の装置に、エナジーチェーンとe-spoolを使用した事例でベクター銀賞を受賞した。
試験車両を取り囲み強い電界を発生させる5本のテストアンテナに沿う制御ケーブルと圧縮空気ホースをガイドするために、イグスのエナジーチェーン1400シリーズが使用され、これを巻き取る機構として e-spoolシリーズのばね式ケーブルリールが採用された。スリップリングが不要になったことにより、メンテナンスにかかる時間が大幅に短縮できるようになった。

ベクター銅賞:ACCORアリーナの鏡張り可動式天井/MECAoctet社(フランス)

 ベクター銅賞は、ナイトクラブの可動式天井にe-spoolシリーズのばね式ケーブルリールを使用した事例でフランスのMECAoctet社が受賞した。ACCORアリーナの天井は16×15mの鏡でできており、32個の三角形に分割され、うち16個は可動式となっている。天井にスポットライトを当て、息を呑むような光のショーを生む仕組みだが、設計上の課題は三角形の鏡を動かしながらLEDストリップに電力を供給することだった。この仕組みを実現するために、三角形の各角に電動ウインチを三つ設置。電源供給にはスリップリングを使わないばね式ケーブルリールであるe-spoolシリーズを使用し、ハイブリッドケーブルを取り付けて三角形の重心に接続している。同社のエンジニアからは、「イグスのソリューションがなければ、回転コレクターを備えた複雑なコイルを使用することになり、高価で信頼性の低い機構になっていた」との声が寄せられている。ケーブルループ付きのスライダーシステムと比較して、見た目も美しく収めることができた。

グリーンベクター賞:トラックタイヤを再生させる機械「ベアカット」/Bear Machines 社(ドイツ)

 環境に優しく持続可能な未来に向けた取り組みを選出するグリーンベクター賞は、自動車やトラックのタイヤを再カットする、ベアカットという半自動機械を開発したBear Machines 社が受賞した。この機械でタイヤを再カットすることにより、100kmあたり最大0.5Lの燃料を節約でき、タイヤ1本あたり最大650kgのCO₂排出を回避できるという(調査:ミシュラン、コンチネンタル)。同社で使用していた従来のモーター用ケーブルでは柔軟性の要件を満たすことができず、E2シリーズのエナジーチェーンで動く頑丈で柔軟なケーブル、チェーンフレックスシリーズが採用されている。

 

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日本ベアリング、プレファクトを子会社化

9ヶ月 ago
日本ベアリング、プレファクトを子会社化kat 2024年07日25日(木) in

 日本ベアリングは、各種特注加工品の製作を手掛けるプレファクトの全株式を取得し、子会社化した。株式取得の目的は、スライドウェイ(クロスローラーガイド)の安定供給体制を強化するため。

 子会社化したのは山形県東根市に本社を置くプレファクト(2006年4月21日設立、従業員数30名(2024年4月30日現在))で、精密加工技術を売りに、各種特注加工品の製作実績を持つ。

 日本ベアリングでは注力製品の一つであるクロスローラーガイドの生産強化拠点とすることを目的に今回、精密加工技術や熱処理技術に強みを持つプレファクトを子会社化した。プレファクトの持つ技術を生かし、クロスローラーガイドの生産量の拡大や、難易度の高い特殊品への対応能力の強化を目指す。新会社はプレファクトの社名は継承するが、代表取締役会長として日本ベアリング社長の福永暢彦氏が入り、日本ベアリングとプレファクトの協力関係の強化を図る。

 新会社の経営体制は以下のとおり。

代表取締役会長:福永暢彦(日本ベアリング代表取締役社長)
執行役社長:白田良晴(プレファクト前社長)
取締役:渡邉和宏(日本ベアリング)
取締役:大平圭一(日本ベアリング)
監査役:佐藤壽展(日本ベアリング) 

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bmt2024年7月号「特集:自働化・電動化とbmt」「キーテク特集:設備管理・潤滑管理技術」発行!

9ヶ月 ago
bmt2024年7月号「特集:自働化・電動化とbmt」「キーテク特集:設備管理・潤滑管理技術」発行!admin 2024年07日24日(水) in in

 ベアリング&モーション技術の総合情報誌「bmt(ベアリング&モーション・テック)」の第49号となる2024年7月号が7月25日に小社より発行される。

 今号は「特集:自働化・電動化とbmt」、「キーテク特集:設備管理・潤滑管理技術」で構成。特集「自動化・電動化とbmt」では、食品分野や建設分野など各種産業分野での自動化・電動化導入の状況について報告するとともに、それら自動化・電動化を支える電動アクチュエータや樹脂製3Dプリンティング部品などベアリング&モーション技術(bmt)関連の製品・技術を紹介する。

 また、キーテク特集「設備管理・潤滑管理技術」においては、設備総合効率の最大化に貢献するAIソリューションや、振動摩擦摩耗試験機を用いた潤滑剤の性能管理技術などの話題を紹介する。

特集:自働化・電動化とbmt

◇製造現場の自動化を支えるロボット技術と食品分野などでの適用展開・・・ファナック 安部 健一郎 氏に聞く

◇アプリケーション志向の電動アクチュエータを用いたロボット・医療機器における自動化・電動化支援・・・木村洋行 足立 健太 氏 に聞く

◇材料×機械の共創による樹脂3Dプリンティング技術のロボットなど産業展開・・・大塚化学 稲田 幸輔 氏、グーテンベルク 梶 貴裕 氏に聞く

◇建設機械におけるカーボンニュートラルに向けた取り組み・・・日立建機 久冨 伯夫

キーテク特集:設備管理・潤滑管理技術

◇設備総合効率の最大化に貢献するAIソリューション ・・・THK 髙野 修一 氏、今村 恵輔 氏に聞く

◇摩擦学的接点における潤滑グリースの電気接触抵抗値の評価・・・Optimol Instruments Ameneh Schneider、Matrilub Mathias Woydt、訳:パーカー熱処理工業 佐藤 雅之

連載

注目技術:第43回 高剛性・多機能型摩擦試験機に搭載可能なミニトラクションモジュール・・・

Rtec-Instruments
あるコスモポリタンの区区之心 第19回 ハイデルベルグ大学にて・・・紺野 大介

トピックス

日本トライボロジー学会、2023年度学会賞表彰式を開催

「染谷常雄先生を偲ぶ会」が開催

自動車技術会、第74回自動車技術会賞授賞式を開催

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World PM(粉末冶金国際会議)2024が本年10月13日~17日に開催、参加者募集

9ヶ月 2週 ago
World PM(粉末冶金国際会議)2024が本年10月13日~17日に開催、参加者募集kat 2024年07日11日(木) in

 日本粉末冶金工業会(JPMA)と粉体粉末冶金協会(JSPM)の主催により、「World PM2024(粉末冶金国際会議、https://www.worldpm2024.com/index.html)」(Congress Chairs:園田修三JPMA会長(福田金属箔粉工業)、尾﨑由紀子JSPM会長(大阪大学/九州大学))が本年10月13日~17日、横浜市西区のパシフィコ横浜で“Make a better world with PM(粉末冶金(PM)でより良い世界を作る)”をメインテーマに開催される。

 粉末冶金国際会議は、論文発表と展示会の2本立ての会議となり、論文発表の聴講は有料だが、展示会は誰でも無料で参加できる。詳細は以下のWORLD PM2024のウェブサイトまで。
https://www.worldpm2024.com/index.html

 World PMは粉末冶金の国際会議では最も大規模な催しで、北米、欧州、アジアとロケーションを変えて隔年開催している。日本での開催は、「World PM 2012」開催以来の12年ぶりとなる。
World PM2024では、最新のPM技術に関する430件の論文発表や、PMサプライチェーンの最新の製品・技術を紹介する展示会が100社140小間の規模で設けられる。また、Welcome Reception、Congress Partyなどのさまざまなソーシャルイベントや、テクニカルビジット(先進技術を学ぶ視察旅行)やオプショナルツアーなどの特別プログラムも用意されている。
 

 

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日本半導体製造装置協会、半導体・FPD製造装置の需要予測を公表、半導体製造装置で初の4兆円超えへ

9ヶ月 3週 ago
日本半導体製造装置協会、半導体・FPD製造装置の需要予測を公表、半導体製造装置で初の4兆円超えへkat 2024年07日05日(金) in in

 日本半導体製造装置協会(SEAJ、会長:河合利樹・東京エレクトロン社長)は7月4日、2024年~2026年の半導体・フラットパネルディスプレイ(FPD)製造装置の需要予測を発表した。2024年度の日本製装置販売高は、年度後半からのメモリー投資回復を見込み、前年度比15%増の4兆2522億円と予測した。2025年度はロジック・ファウンドリー、メモリー全体で堅調な投資が予想されるため、10%増の4兆6774億円とした。2026年度もAI関連半導体の需要押上げ効果が顕在化することから、10%増の5兆1452億円と予測した。半導体製造装置での4兆円超えは初めてとなる。

 冒頭挨拶に立った河合SEAJ会長は、「昨今の世界情勢はロシアによるウクライナの長期化、イスラエル・ガザ情勢、米朝対立など地政学リスクの高い状況となっている。欧米を中心としたインフレに伴う政策金利の上昇は高のぼりを見せており、国内では依然として歴史的円安が続くなど、マクロ経済の動向にも引き続き注視が必要。半導体業界に目を向けると、昨年は中国企業による設備投資が堅調に推移する一方、全体的には半導体の在庫調整に伴い先端デバイス向けの設備投資が抑制傾向にある。こうした動向を受けWSTS(世界半導体市場統計)によると2023年の世界半導体市場は、前年比8.2%減の5269億ドルとなったが、2024年は16%増の6112億ドルと再拡大が予測されている。1947年のトランジスタの誕生から76年、半導体市場は初めて6000億ドルを超える見込みとなっており、2030年ごろには市場ドルを超える市場となることが予想されている。2006~2021年の15年間に倍になった市場規模が、この約半分の期間でさらに倍になることを示しており、市場拡大の規模は早くなってきている。そのけん引役となるのがAIであり、今後、産業や社会のあらゆる場面でAIの活用が広がり、スマートなライフスタイルを伴いながら、我々の生活は一層便利に発展していくと思われる。半導体に対する技術要求はさらなる大容量、高速、高信頼性、低消費電力など、とどまるところを知らない。そうした半導体を形にする製造装置に対する期待や需要もますます高まっていくことが予測される。半導体産業が拡大していくことに伴い、当協会の役割も重要性を増している。脱炭素社会の実現に向けたネットゼロや、PFASに代表される環境規制物質への対応、地政学やサプライチェーン、そして半導体産業のサステナブルな発展を支える人材育成が、業界として喫緊の課題となっているが、各企業の努力のみならず業界全体が一体となり取り組んでいくことが必要だと感じている。協会としては日本製の半導体・FPD製造装置を取り巻くグローバルな市場環境の変化についてSEMIとも連携して調査分析し、適切な対応を取っていくことで、業界および会員企業の発展につながるよう精一杯務めていく」と語った。

挨拶する河合SEAJ会長

 

 WSTS(世界半導体市場統計)によれば、2023年の世界半導体市場は、メモリー価格下落の影響から前年比で8.2%減と4年ぶりに減少した。2024年はメモリー市場が単価・数量ともに上昇し、ロジック市場も回復する見通しである。6月の発表では、2024年全体で16.0%増加の6112億米ドルと、過去最高額を更新するとしている。2025年も引き続き12.5%の増加が予想されており、高い成長を見込む。

 メモリー各社の業績は2023年1Q(1~3月)をボトムに4四半期連続で回復傾向となっている。現在までPCやスマートフォンの販売台数そのものに顕著な変化は見られないが、ウェーハ投入数としては減産を終了する動きが出ており、需給関係は改善している。サーバーについては、AIサーバー向けGPUは極めて需要旺盛であり、組合せて用いるHBM(High Bandwidth Memory)は、引き続き需要が急増している。

 今後については、AI機能をサーバーだけでなく、オンデバイス(エッジ・ローカル)という形でPCやスマートフォンに搭載する動きが加速する。AI PCでは従来のCPU、GPUに加えてNPU(Neural Processing Unit)を標準搭載し、高度なAI処理をCPU、GPUの負荷を軽減させつつ最適化し、低消費電力を実現する。スマートフォンでも、6月には最大手企業からAI機能の全面刷新が発表され、大きな話題となった。
CPU、GPUに加えてNPUを同時搭載するには、相対的に集積度を上げるか、ダイ面積を増やす必要がある。発表されたAI PCの最低システム要件は、DRAM「16GB以上」、SSD「256GB以上」が指定され、動画を含め快適に動かすには更なる高容量が推奨される。オンデバイスAIが半導体市場に与える影響は、ロジック、メモリー双方にとってプラスとなる見込みである。加えて2025年10月のWindows10サポート終了に合わせ、エンタープライズ向けのPC買換えも促進される。

 AIサーバー向けには、今後AI機能に最適化した様々な半導体の登場が見込まれる。現在、特定企業に需要が集中するAIサーバー用GPUも、徐々に選択肢が広がると予想する。データセンター投資も、AI用途だけでなく、いずれ汎用サーバーを含めた更新投資に向かうとみられる。
半導体製造装置では、2022年10月の米国による対中規制強化、2023年7月に日本、9月にオランダで輸出管理の厳格化が始まった。結果的には、規制対象外の分野に投資がシフトしたことで、現在まで中国向け装置需要は増加し、現在も堅調である。2024年度は中国以外の国・地域での投資が増加するのに伴い、相対的に中国向けの比率は下がるとみている。

 2024年度はロジック・ファウンドリー、DRAMの投資回復が予想される。2025年にはNANDフラッシュも大きく回復し、加えて各国政府の支援が投資を下支えする。AI技術の浸透は、現在のAIサーバー用GPUとHBMだけにとどまらず、2026年に向けオンデバイスAI PC、AIスマートフォン用半導体の需要を喚起し、端末の買い替え促進でも広範な波及効果をもたらす。更にAR/VR/デジタルツイン、EV/自動運転などの多様なアプリケーションの伸長に支えられた成長が期待される。

 世界半導体市場は2023年の5268億米ドルから2030年には1兆ドルを目指すと言われており、半導体製造装置も同様に中期的な高い成長率が見込まれている。
半導体製造装置・日本製装置販売高予測としては、2024年度は現在続いているメモリー価格の上昇に稼働率の上昇が追い付くタイミングで、DRAM投資が本格的に復活するとみている。中国向けは引き続き堅調であるが、他地域向けの投資拡大に伴い比率は若干下がる傾向となる。これらにより15%増の4兆2522億円と予測した。4兆円を超えるのは、今回が初めてである。

 2025年度はNANDフラッシュが投資回復し、ロジック・ファウンドリーの投資も堅調であることから、10%増の4兆6774億円とした。
2026年度も引き続き順調な伸びが期待されるため、10%増の5兆1452億円を予測した。4兆円から5兆円へは2年で到達することになる。
半導体製造装置・日本市場販売高予測としては、2024年度はメモリー市況の回復に加え政府による補助金効果や、大手ファウンドリーの順調な立ち上がりも手伝い、17%増の1兆3375億円と予想した。2025年は複数の大手ファウンドリー投資が重なり、メモリー投資も大きく復活が期待されることから、30%増の1兆7388億円と予測した。2026年度も引き続き堅調な投資が見込まれるため、7%増の1兆8605億円を予測した。

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日本ベアリング工業会、新会長に鵜飼英一NTN社長

9ヶ月 3週 ago
日本ベアリング工業会、新会長に鵜飼英一NTN社長kat 2024年07日02日(火) in

 日本ベアリング工業会(JBIA)は、市井明俊前会長(日本精工社長)の任期満了に伴い、鵜飼英一NTN社長を新会長に選出した。任期は、2024年6月~2026年6月の同会総会まで。

 日本ベアリング工業会は、ベアリング(転がり軸受および同部品)を製造する法人により構成された団体で、技術標準化、不正商品対策、環境対策、中小企業対策などさまざまな課題について、業界として対応している。

 鵜飼新会長は、「日本ベアリング工業会の会長として、ベアリング業界全体の健全な発展に向け、取り組みを進めていく」と語っている。

鵜飼新JBIA新会長

鵜飼英一氏
1957 年生まれ。1980 年エヌ・テー・エヌ東洋ベアリング(現NTN)入社。入社後は、国内外の製作所において品質保証・製造部門などで経験を積み、2011年に執行役員、2014年より常務執行役員、アセアン・大洋州地区総支配人を経験。2017年に取締役、2021年4月より現職(代表執行役 執行役社長)。

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日本トライボロジー学会、トライボロジー会議 2024 春 東京を開催、学会賞受賞者を表彰

9ヶ月 3週 ago
日本トライボロジー学会、トライボロジー会議 2024 春 東京を開催、学会賞受賞者を表彰kat 2024年07日02日(火) in

 日本トライボロジー学会(JAST)は5月27日~29日、東京都渋谷区の国立オリンピック記念青少年総合センターで、「トライボロジー会議 2024 春 東京」(実行委員長:日立製作所・小山田具永氏)を開催、900人強が参加した。
 

実行委員長の小山田氏

 

 今回は、「機械要素」、「潤滑剤」、「摩擦材料・固体潤滑」、「表面・接触」、「摩擦」、「流体潤滑」、「表面処理・コーティング」、「バイオトライボロジー」、「疲労」、「分析・評価・試験方法」、「境界潤滑」、「摩耗」、「バイオトライボロジー」、「シミュレーション」のテーマによる一般講演と、「トライボロジー技術へのAIの活用」、「トライボロジー界面における最新の計測・解析技術の進展」のテーマによるシンポジウムセッション、技術賞受賞講演と論文賞受賞講演で、全177件の発表が行われた。
 

表面処理・コーティングの一般講演のようす

 

 28日には特別フォーラムが開かれ、寺田 努氏(神戸大学)が「ウェアラブルデバイスが切り拓く人間とコンピュータの新たな関係」と題して講演を行った。
 

特別フォーラムのようす

 

 28日にはまた、「2023年度日本トライボロジー学会賞」表彰式が行われ、ベアリング、潤滑関連では、以下などが表彰された。

論文賞

「しゅう動特性に及ぼすHFO冷媒の影響(第1報)―冷媒雰囲気下のしゅう動特性および金属新生面への吸着特性―」設楽裕治氏(ENEOS)、森 誠之氏(岩手大学)…本論文はトライボロジー特性における冷媒分子構造の影響を新生面への吸着特性と分子シミュレーションによって表面化学・トライボ化学の面から検証したもので、工学的に意義深く、冷凍システムや冷凍機油の技術確立への貢献が期待できるとして評価された。
 

左から、設楽氏、梅原徳次JAST前会長、森氏 技術賞

「低フリクションハブベアリングⅢ用グリースの開発」川村隆之氏・関 誠氏・近藤涼太氏(NTN)…本技術はタイヤの回転を支えるハブベアリングの回転トルクを大幅に低減させるために必要なグリース技術で、ハブベアリング以外の一般の転がり軸受にも量産適用可能でありカーボンニュートラル社会への貢献が大いに期待されるとして評価された。
 

左から、梅原JAST前会長、川村氏

 

「金属系添加剤非含有のディーゼルエンジン油の開発」清水保典氏・甲嶋宏明氏・葛西杜継氏(出光興産)…金属系添加剤非含有の開発油は、DPF搭載車の燃費悪化の抑制や廃棄物の削減など、省燃費・省資源への貢献が期待できることに加え、運輸業界における運転手不足や高齢化、2024年問題など、急務となっている業務効率化に対し、DPFトラブルに起因する労働環境の悪化の改善による貢献も期待できるとして評価された。
 

左から、梅原JAST前会長、清水氏、甲嶋氏、葛西氏


「超高速にトライボロジー現象を解明できるAI分子シミュレータおよび潤滑剤のバーチャルスクリーニング技術」小野寺拓氏・設楽裕治氏・柴田潤一氏・緒方 塁氏(ENEOS)…本技術は従来の不可能を可能にするAI分子シミュレータを世界に先駆けてトライボロジー課題へと適用し、摩擦界面の現象解明に留まらずマテリアルズ・インフォマティクス(MI)による材料スクリーニングへと発展させたもので、実験コストを抑えるとともに迅速な要因解明や材料選定に資することができ、トライボロジー分野だけでなく触媒や電池などMIの適用が盛んな他分野での材料設計にも汎用的に活用できるとして評価された。
 

左から、梅原JAST前会長、小野寺氏、設楽氏、柴田氏、緒方氏奨励賞

「マイクロEHL解析と内部応力解析による表面損傷への影響因子の解明」柳澤穂波氏(日本精工)…本研究は転がり軸受表面に生じる損傷に関わる影響因子の解明を試みたもので、これまで測定が困難であった表面損傷の影響因子が、数値シミュレーション技術により明らかにされた。この成果は軸受長寿命化、エネルギー効率化への取り組みの飛躍的な加速につながる重要な知見と考えられるとして評価された。

「転がりすべり接触下における潤滑剤からの水素発生に及ぼす油種の影響」江波 翔氏(日本精工)…本研究は転がりすべり接触下における潤滑剤からの水素発生の影響因子を調べ、水素発生メカニズムを考察したもので、潤滑剤からの水素発生に関する有益な知見が得られている。本成果は白色組織はく離の対策技術や寿命予測技術の開発に貢献し、軸受の信頼性向上が期待されるとして評価された。
 

左から、柳澤氏、梅原JAST前会長、江波氏

 

「着色剤による転がり軸受内のグリース挙動の可視化」小畑智彦氏(NTN)…本研究は狭小すきま通過時に分裂する特殊な着色剤微粒子の凝集体をグリースに添加し、軸受運転時の凝集体の微細化に伴うグリース色の変化を利用してグリース挙動を可視化したもので、転がり軸受でのグリース流動およびその時の流動履歴を高精度に推定できる技術である。得られた成果は低トルク化が要求される軸受の内部設計およびグリース開発に貢献すると期待されるとして評価された。

「X線回折環分析装置による転動接触疲労の評価」嘉村直哉氏(NTN)…本研究では、転動接触面から得られるX線回折環の回折強度分布の変化が転動疲労進行と相関することを確認し、これを定量化して疲労度のパラメータとして利用した。従来の手法では疲労が進行した領域で推定精度が低下するが、本手法では疲労度の評価精度を高めることが可能である。本研究成果は、転がり軸受の疲労度推定精度の向上に寄与し、機械のライフサイクル延長の観点で重要な転がり軸受再使用の可否判断といった用途での活用も期待されるとして評価された。
 

左から、小畑氏、梅原JAST前会長、嘉村氏

 

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「染谷常雄先生を偲ぶ会」が開催

9ヶ月 3週 ago
「染谷常雄先生を偲ぶ会」が開催 in kat 2024年07日02日(火) in

 昨年7月14日に逝去した染谷常雄・東京大学名誉教授を偲ぶ会が5月25日、東京都目黒区のホテル雅叙園東京で、約70名の参列のもと開催された。染谷氏が在職した東京大学および武蔵工業大学(現 東京都市大学)の各研究室OBと、同氏が主宰した「ISO/TC123平軸受国内委員会」、日本機械学会RC分科会が合同で企画・開催したもので、発起人は畔津昭彦氏(東海大学)と飯山明裕氏(山梨大学)、三原雄司氏(東京都市大学)、三田修三氏(東京都市大学)、橋爪 剛氏(オイレス工業)。染谷常雄氏の令室・房子氏と、長男で東京大学副学長の隆夫氏を迎え、橋爪氏が司会進行を務めて、染谷常雄氏の業績やエピソードを語った。

会場のようす

 

司会進行を務める橋爪氏

 初めに発起人代表の畔津氏が挨拶に立ち、「染谷先生のご葬儀後に、東大OBを代表して私と、武蔵工大OBを代表して三原雄司先生、ISO/TC123を代表して山本隆司先生が染谷先生のご自宅を訪問してご焼香させていただいた。その際に、染谷先生と深いつながりを持つ多くの方々が集まって思い出を語る『偲ぶ会』を開きたいという話になった。逝去され1年が経過したが、本日無事に開催できることとなり関係各位に厚くお礼申し上げたい。教え子にとって染谷先生は、我々の首根っこを捕まえて“あれをやれ、これをやれ”というタイプの先生ではなく、丁寧にアドバイスはするが、後は自主性に任せる方だった。我々は、自ら研究に没頭する先生の背中を見て研究を続けることができた。ご冥福を祈りたい」と挨拶した。

挨拶する畔津氏

 染谷氏は1931年、千葉県東葛飾郡鷲野谷という無医村に生まれ、時折やってくる医者の自動車から漏れたガソリンの良い香り(芳香族成分)に魅了され、東京大学工学部機械工学科に入学し内燃機関の研究を始めた。1955年に大学院で川田正秋教授の研究室に入り研究を続けたが、幼少からのドイツへの憧れをばねに交換留学生の試験を受けて合格、同年11月シュトゥットガルト工科大学に留学し、半年後にカールスルーエ工科大学に移って本格的な研究を進めドイツの工学博士号を取得した。帰国後に再度日本でも博士号を取得し1973年に東大工学部教授に就任、1991年3月に東大を定年退官した。その後、同年4月に武蔵工業大学の教授に就任し10年間、研究・教育活動を続けた。その後も研究と社会活動を継続してきたが、2023年7月に逝去した。

 メインの研究課題は、カールスルーエ工科大学で始めた滑り軸受に関する研究。滑り軸受の中での軸心の軌跡をコンピュータを駆使して計算して触れ回り運動を明確にする研究を進め、ドイツで博士号を取得した。二番目が、東大に戻って始めた、軸受を2方向から加振する自作の実験装置を用いた、軸受油膜の動特性と回転軸の振動の研究。これにより東大で博士号を取得し、また日本機械学会論文賞を受賞した。三番目が、武蔵工大での三原氏との共同研究となる、エンジン主軸受の油膜圧力分布を測る「薄膜圧力センサ」の研究開発。生涯を通じて滑り軸受からトライボロジー、さらには内燃機関へと研究を進め、集大成として2020年に『滑り軸受』(養賢堂刊)を出版した。一方、燃焼に関する研究も幅広く行い、科学研究費補助金重点領域研究「燃焼機構の解明と制御に関する基礎研究」では、国内の第一線の内燃機関研究者ほぼすべてを束ねてプロジェクトを成功に導き、1993年に成果報告書『Advanced Combustion Science』(Springer社刊)を出版した。

 また、研究と並行して多くの社会貢献への取り組みを続けたが、中でも生涯を通じて滑り軸受の国際標準化(ISO/TC123)に努めた。1995年に日本機械学会平軸受調査班班長としてISO規格準拠のJIS原案作成に取り組んだ後、日本をISO/TC123の発言権のあるPメンバーに昇格させて標準化を推進、複数のSCの幹事国を獲得し、さらには親委員会の幹事国となってISO/TC123国際議長に就任し国際標準化を強力に推し進めた。

 染谷氏に続きISO/TC123国際議長を務めた山本隆司氏(東京農工大学名誉教授)は献杯の挨拶に立ち、「染谷先生の著書『滑り軸受』の巻頭言に見られる先人の尽力・功績に対して敬意を払う染谷先生の姿勢は、研究者としての高潔な人柄を彷彿とさせるものがある。染谷先生からさまざまな指導をいただいたJIS・ISOなどの標準規格作成活動は、先生の教育・研究分野に並ぶ、大きな活動分野。先生の国際標準活動における業績を偲ぶ際、「飲水思源」という四字熟語が最もふさわしいと思う。染谷先生の先人への敬意を払う姿勢と、標準化に従事した、まさに井戸を掘る取り組みは、軌を一にしている。一方で、染谷先生がご高齢ながら標準化活動に邁進されたことはご家族の支えがあってのことで、皆さまのご協力にも心から感謝を申し上げたい」と語った。

献杯の挨拶を行う山本氏

 東大OB代表として挨拶した田中 正氏(元大同メタル工業)は、その人柄から染谷氏を偲び、ドイツの著名なDr. Pischingerの名前を間違って発音した際に小声で正確なドイツ語の発音を教えてくれたことや、声楽もたしなんだ染谷氏が名古屋で開催されたOB会で三田氏とともにシューベルト作『美しき水車小屋の娘』を合唱した思い出、さらには奥方の健康面のアドバイスに対し忠実に従うなど家族に対する究極のやさしさなどについて語った。また、研究活動だけでなく国際標準化活動に積極的に従事したことに触れ、2016年のISO/TC123ロンドン国際会議で国際議長退任の挨拶を行った後、ドイツ代表が欧州だけでなくアジアを含め全世界的な視野で推進した染谷氏の国際標準化活動への尽力と成果に対し感謝の言葉が述べられ、参加者全員によるスタンディングオベーションへと展開したエピソードなどを紹介した。

エピソードを語る田中氏

 武蔵工大OB代表では東京都市大学教授で現在ISO/TC123国際議長を務める三原雄司氏が、染谷氏が東大在籍のころから構想していた薄膜センサの研究を進めるよう念仏のように言われ、中古の成膜装置を東大OBの会社から譲り受けてトラックで運んだことや、研究がうまくいかず大学を辞めるか迷っていた矢先に開発・実験が成功し慌てて博士論文を書いたこと、薄膜圧力センサをようやく開発し薄膜センサの研究で得た基礎技術を共同で特許申請したが、ホンダ、トヨタが連名で特許申請するのは初めてと言われながらも2010年に特許が成立した、といったエピソードを紹介した。染谷氏が強く希望していた薄膜センサ研究から多くの研究成果が生まれ、数々の受賞をして多くの成果を得て、今なお電気自動車や水素エンジンの開発など社会に貢献し続けていることを報告しつつ、染谷氏の指導に対し感謝の意を述べた。

思い出を語る三原氏

 ISO/TC123からは笠原又一氏(元オイレス工業)が、日本機械学会平軸受調査班でISO規格準拠のJIS原案作成に取り組む中で、ISO規格に承服できない部分があったのを機に、日本がISO/TC123のPメンバーとなり標準化を推進、六つのSCのうち三つのSCの幹事国、さらにはTC123親委員会の幹事国の認証を受けた経緯を語った。また、国内委員会を支援する日本滑り軸受標準化協議会を設立、アジア・太平洋地域8カ国に対し研修会や出張セミナーを実施、熱心な教育者としての本領を発揮してアジアでの標準化への関心を一気に押し上げたことを紹介。2018年のベルリン国際会議の席上で日本をPメンバーに後押しした元DIN軸受担当Herbert Tepper博士が「ISO/TC123が50周年を迎え我々がこうして集まることができたのは滑り軸受と標準化のエキスパートでオーソリティーの染谷先生のお陰」とその功績を讃えたエピソードを語った。

挨拶する笠原氏

 ISO/TC123からはまた、Kim Choong Hyun博士(Korea Institute of Science and Technology)が、染谷氏のお陰で韓国がISO/TC123のメンバーになれたことに感謝の意を述べつつ、2008年に学士会館で開かれた会合で染谷氏のISO/TC123関連のプロジェクトに関するガイダンスを聞いたのが初顔合わせで、以来、温かく親切に接してもらったことや、Kim氏の担うプロジェクトなどに関して染谷氏が積極的に協力・支援し成功に導いてくれたたことなどの思い出を語った。「染谷先生は、滑り軸受のプロフェッショナルとして世界の滑り軸受産業の発展に寄与し、また、その生涯をかけてISO/TC123の活動を世界的に推進し、発展させてきた」と称賛しつつ、染谷氏の冥福を祈った。 

挨拶するKim氏

 家族代表として挨拶に立った長男・染谷隆夫氏は、父親の背中を追ってきた氏が、2020年に刊行した『滑り軸受』の執筆に関して90歳で200頁を超える執筆をした集中力と根気を目の当たりにしたことや、『滑り軸受』の続巻の執筆に意欲的な構想があったこと、2021年に体調を崩して東大近くの病院に入院することになったが意識がはっきりとしていて海外出張で体調を崩さないよう心配されたことなどを追想。その生前最後の日(逝去日)に遡って従四位の叙位・瑞宝章中綬章叙勲が行われ、同時に位階が授与されたが、功労に関する多くの資料を関係各位が提供してくれたことに触れつつ、「皆さまからの父のエピソードを聞いて、皆さまのお陰で父が研究者として充実した人生を送れたものと実感している」と謝意を述べた。

挨拶する染谷隆夫氏

 最後に東大OB会の羽山定治氏(羽山技術士事務所)のハーモニカによる伴奏で、参加者全員が『仰げば尊し』を合唱し、偲ぶ会は閉会した。

羽山氏のハーモニカによる伴奏(上)で参加者全員が合唱(下)

 

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日本滑り軸受標準化協議会、第39回総会を開催、新会長に持丸昌己氏(オイレス工業)

10ヶ月 1週 ago
日本滑り軸受標準化協議会、第39回総会を開催、新会長に持丸昌己氏(オイレス工業) in kat 2024年06日19日(水) in

 日本滑り軸受標準化協議会(PBSA)は6月11日、東京都千代田区のTKP 東京駅セントラルカンファレンスセンターで「2024年度 第1回総会(通算第39回総会)」をハイブリッド形式(集合&ウェブ配信)により開催した。
 

開催のようす

 

 当日は開会の挨拶に立った林 洋一郎 会長(オイレス工業)が、「私が会長に就任して6年が経過したが、そのうち4年がコロナ禍で、その影響を受け、ISO/TC123委員会も対面での活動が制限されてしまった。また、PBSAの総会も、最初は書面のみの回覧、それからウェブ方式を経て、現在も続けているハイブリッド方式の開催へと変化してきた。全体的に活動が制限されてきたように思う。私自身は本総会をもって会長を退任し、後任には持丸理事が総会の承認をもって就任することが決まった。会員各位の長年のご支援、ご協力に感謝したい。昨年10月にISO/TC123国際会議を日本・京都で開催し、この際に試験的に同時通訳を採用し、その有効性は確認され、その結果に関しても日本機械学会ISO/TC123平軸受国内委員会で記録として残している。しかしながら同時通訳の費用を支援したPBSAとしては、予算面で大幅なマイナスを計上することとなった。さらに海外支援に関しても、航空運賃や宿泊費の値上がり等もあり、マイナスが膨らんだ状況となった。経済産業省より今回大幅に増額のご支援をいただくこととなり大変感謝している。しかしそれでもなお、PBSAの収支バランスが取れない状況のため、この対策に関しては後ほど全体説明の中で私から説明したい。また、先日無事終了した「染谷常雅先生を偲ぶ会」に関しても、国内委員会から、韓国のISO/TC123メンバーであるKim氏の参加費等の支援要請があり、PBSAとして支援したが、事前の会合の中で電気自動車の軸受に関する研究の話題が各国で増えてきているという情報も得られ、国際協調の重要性、国際会議に参加して情報を得ることの重要性を改めて感じた。今後も積極的に継続していきたい。本総会の終了後は、カシオ計算機 開発本部 品質統轄部 統轄部長 小山 睦氏から「G-SHOCKの品質」という演題で講演をいただく。私の幼馴染でカシオ計算機の現社長でかつてG-SHOCKの商品企画を担当していた「G-SHOCKの育ての親」である増田裕一氏からは、一緒に遊ぶ折にG-SHOCKの魅力を度々PRされてきたので私自身も購入し、長持ちなので今に至るまで釣りやダイビングの折に使用している。今回の講演会も非常に興味深い。ルビーの軸受が使われるなど腕時計は我々の滑り軸受が関わるところが少なくないが、違う業態の品質試験・管理がいかに行われているのかをうかがい、活発な質疑応答をしていただければと思う」と述べた。
 

挨拶する林PBSA会長

 

 続いて、来賓の経済産業省 産業技術環境局 国際標準課の青山直充氏が「ISO/TC123国際標準化活動に協力をいただき感謝している。国際標準化の活動について、経産省としては今後も予算面で支援していく。今回支援の予算が増額されることとなったが、PBSAが注力する標準化にかかわる人材の育成の予算が含まれたものとなっている。経産省でも、我が国の標準化人材の情報を可視化することで、企業や団体において外部人材の活用を促進し、また、我が国の標準化人材のプレゼンスを向上させることを目的として、標準化人材のデータベースである「標準化人材情報Directory(STANDirectory)」をリリースしているが、国際標準化を担うための若手人材の育成に引き続き尽力してほしい」と挨拶した。
 

挨拶する青山氏

 

 さらに、日本機械学会ISO/TC123平軸受国内委員会 委員長の片桐武司氏(大同メタル工業)が挨拶に立ち、「日頃のPBSAのご支援に対し、また、昨年度の京都でのISO/TC123国際会議での非常に多大なご支援に対し、感謝している。2024年度の国内委員会の計画については後ほど山田幹事から説明があるが、引き続き費用面での支援をいただきたい。円安の影響からドイツ・ベルリンで行われるISO/TC123国際会議への参加においては渡航費も宿泊費も高騰しており、宿泊費に関する日本機械学会の規定にある金額は、円安だからといって増額されることがない。その部分でご支援をいただくことになるものと思う」と述べた。
 

挨拶する片桐氏

 

 総会ではまず、日本機械学会ISO/TC123平軸受国内委員会の2024年度の活動計画について国内幹事の山田 晃氏(大豊工業)が、11回の国内委員会と1回の国際委員会に参加することや、省エネルギー等に関する国際標準の獲得・普及促進事業委託の1テーマである「環境配慮型の水潤滑用軸受材料に関する国際標準化」への取組み状況や、「テーマ名:軸受の廃棄・リサイクルの国際標準化(SC6)」(プロジェクトリーダー:笠原又一氏)と「テーマ名:水潤滑用の軸受材料の国際標準化(SC7)」(プロジェクトリーダー:笠原又一氏)という新規規格制定および改正提案の2024年度に規格化を目指す状況、本年11月13~15日にドイツ・ベルリンで対面方式により開催されるISO/TC123国際会議、同国際会議にかかる費用に関するPBSAへの支援要請などについて報告した。
 

ISO/TC123平軸受国内委員会の活動報告を行う山田氏

 

 続いてPBSAの2023年度の活動報告と2024年度の活動計画について、PBSA会計の橋爪 剛氏(オイレス工業)より報告がなされ、2023年度の活動報告として、2023年6月と2024年3月の2回の総会と書面理事会が開催されたこと、国際会議が2023年10月に京都で対面形式にて開催された際の旅費・同時通訳の費用等をPBSA が支援したこと、第1回・第2回総会で計3件の講演会を設けたことが報告され、さらに2022年度会計報告がなされた。2024年度の活動計画としては、第2回総会を2025年3月に2回開催し、理事会を必要に応じて開催する予定のほか、本年11月にドイツ・ベルリンで開催されるISO/TC123国際会議の経産省予算の不足分の支援や、日本機械学会ISO/TC123平軸受国内委員会活動の支援、PBSAおよび同会員に寄与する講演会・研究・調査などの実施、標準化作業を円滑に進めるための会員が活用しやすいホームページの更新・整備、さらには新規規格開発のために参考となる他TC規格などの購入などの予定について報告された。
 

PBSAの活動報告を行う橋爪氏

 

 また、PBSA予算の今後の収支バランス改善に向け林会長から、総会の開催回数の見直しや、PBSAライブラリの流用、活動報告書の印刷から電子データ化への移行(国内委員会とPBSAとの議論が必要)、会費増額、会員増強といった経費削減に関する案が出され、この案にとどまらず引き続き議論・検討を進めてほしい、との要請がなされた。

 

 本日付けで理事会互選によりPBSA会長に就任した持丸昌己理事(オイレス工業)が挨拶に立ち、「明日から会長の重責を務めることになったPBSAは、ISO/TC123平軸受国内委員会のサポートを行う団体。ISO/TC123平軸受国内委員会は、国内さらには海外の他のTCの活動の参考になるような、非常に活発でまとまりのある団体であり、素晴らしい組織だと思っている。PBSAは、国内委員会の活動をサポートする団体であり、引き続き予算面で厚く支援して滑り軸受の国際規格・標準化活動を推進していきたい。その一方で、PBSAの収支バランスを改善するための経費の削減案を理事会で諮って進めていきたい。今後ともPBSAに対するご支援、ご協力をお願いしたい」と挨拶した。
 

挨拶する持丸PBSA新会長

 

 また、林会長の退任に伴いPBSAオブザーバーから会員に就任した冨田博嗣氏(オイレス工業)は、「持丸新会長より引き継ぎ、ISO/TC123 SC6の議長を務めることになった。PBSAの活動については良く分からない部分もあり、理事の方々に教えていただきながら取り組んでいきたい。また、SC6では新しい規格として静圧気体軸受の用語の準備委員会を設けることを鋭意進めていく予定なので、PBSAのご協力をお願いしたい」と挨拶した。
 

挨拶する冨田氏

 

 総会終了後には、カシオ計算機 開発本部 品質統轄部 統轄部長 小山 睦氏が「G-SHOCKの品質」と題して講演を行った。“落としても壊れない丈夫な時計を作りたい”という構想のもと生みの親である伊部菊雄氏が「5段階の衝撃吸収構造+点接触の心臓部浮遊構造」を確立し、10mからの落下にも耐える初代G-SHOCKの開発に至ったストーリーや、“世の中にないもの、品質、規格を創造、異業種を参考にしつつそれを超える”という長年受け継がれたスピリットから、現時点で202項目に及ぶ独自開発の品質試験と、品質試験のための耐衝撃性(ハンマー衝撃)試験、加速落下衝撃試験、静電気試験、耐泥性試験、振動試験といった独自開発の試験機、それら試験機を設置した「時計品質保証実験室」を一般公開することでG-SHOCKの品質・ブランドプロモーションへと活用していること、さらにはISO/TC123に関連して時計業界の国際標準化活動の概略などについて、紹介がなされた。
 
 

講演を行う小山氏

 

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三洋貿易、実践講座「トライボロジーの基礎」を開催、7月5日、7月26日の会場・オンライン参加を継続募集

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三洋貿易、実践講座「トライボロジーの基礎」を開催、7月5日、7月26日の会場・オンライン参加を継続募集kat 2024年06日18日(火) in

 三洋貿易は6月7日、東京理科大学 佐々木信也教授を講師に4回シリーズで開講される実践講座「トライボロジーの基礎」の第1回を開催した。

 いずれも佐々木教授による座学と実演・実習が行われる。第1回目となる今回は「摩擦・摩耗のメカニズム」をテーマに、実学としてトライボロジーを見た場合の制御対象となる課題が①摩擦の制御、②摩耗の制御、③エミッションの制御に大別されることを解説。摩擦のメカニズムについては摩擦表面と真実接触、ストライベック線図、摩擦の潤滑形態について解説した。また、摩耗メカニズムについては①凝着摩耗、②アブレシブ摩耗、③腐食摩耗、④疲れ摩耗の四つにシンプルに分類することで対策が取りやすいとした。摩擦摩耗試験にいついては、その分類(カテゴリーⅠ~Ⅲ)、形態と関連工業標準、今後のDXのための要件としては質の良いデータを多くとることがあり、データの汎用性と信頼性、天のデータから面・空間へ、感性価値の定量化など求められるトライボロジー特性に関する評価・分析装置を使うことが重要、と総括した。

佐々木教授による座学のようす

 

 座学に続いて、三洋貿易の取り扱い製品としてRtec-Instruments製を中心とした摩擦摩耗試験機の性能・特長について紹介、その後、Rtec-Instruments製多機能摩擦摩耗試験機「MFT-5000」を用いたボールオンディスク試験(回転と往復動)の実演・実習が行われた。

多機能摩擦摩耗試験機「MFT-5000」を用いた実習・実演のようす

 

 次回は6月14日で座学は「摩擦材料とその評価方法」で、実演・実習は四球試験とスラストシリンダーオンディスク試験、7月5日の座学は潤滑剤とその評価方法で、実演・実習はリングオンブロック試験とトラクション試験、7月26日の座学は表面改質とその評価方法で、実演・実習はスクラッチ試験とインデンテーション試験、表面形状・粗さ計測。

 三洋貿易では、7月5日と26日の実践講座について、会場参加についても若干の枠があるとして追加募集を行っている。会場参加が難しい場合は、オンラインでの視聴が可能。参加申し込みは、こちらまで。

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ハイウィン、コンパクト・高トルク・高精度波動歯車減速機の新シリーズを発売開始

10ヶ月 1週 ago
ハイウィン、コンパクト・高トルク・高精度波動歯車減速機の新シリーズを発売開始kat 2024年06日18日(火) in

 ハイウィンは本年6月、コンパクト・高トルク・高精度な波動歯車減速機「DATORKER🄬」の新シリーズを日本で発売した。6月19日から東京都江東区の東京ビッグサイトで開催される「機械要素技術展[東京]で初披露される。

 同社では今回、波動歯車減速機DATORKER🄬に、新しい重負荷型の「DGC/DGHシリーズ」、耐モーメント型の「DSC-Mシリーズ」、軽量型の「DLCシリーズ」を新たに追加したほか、標準型も従来よりもサイズ展開が広がっている(11、40)。

「DATORKER」の新シリーズ

 

 小型・軽量で組み立てが簡単で、各種産業用ロボットだけでなく、工作機械や半導体製造装置、歯科ミリングマシンなど幅広い精密機器に使用可能。厳しい負荷条件でも高い角度伝達特性を発揮し、産業用ロボットや工作機械などに最適。コンパクトなだけでなく、高性能で長寿命、ゼロバックラッシュで安定した高い位置決め精度と、幅広いラインナップが特徴となっている。

 主な用途は、産業用ロボット、自動化設備、半導体装置(ウエハ研磨装置・ウエハ搬送ロボット)、工作機械(レーザー加工機)、歯科ミリングマシン、など。

HIWIN波動歯車減速機「DATORKER」の仕様概要

 

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エボニック、エコヴァディスのサステナビリティ調査で最高位「プラチナ」評価を再度獲得

10ヶ月 1週 ago
エボニック、エコヴァディスのサステナビリティ調査で最高位「プラチナ」評価を再度獲得kat 2024年06日18日(火) in

 エボニック インダストリーズは、 サステナビリティに対する取り組みにおいて、格付け機関であるエコヴァディス(EcoVadis)からプラチナ評価を獲得した。これにより、スペシャルティケミカルカンパニーであるエボニックは、過去12カ月間にエコヴァディスの調査対象となった企業の中で、上位1%に入る高い評価を受けることになった。同社のプラチナ評価獲得は、2021年、2022年に続いて3回目となる。

 

 エボニックの最高人事責任者兼労務担当取締役・サステナビリティ担当執行役員のトーマス・ヴェッセル氏は、「エコヴァディスからプラチナ評価をいただけたということは、当社のサステナビリティ管理システムの質の高さが認められたということ。またバリューチェーン全体を通じて透明性を確保するという当社のコミットメントを証明するものでもある。我々は、ステークホルダーとともに、このテーマを継続的に推進している」と述べている。

 この目標達成に向けて、エボニックは自社の生産とビジネスプロセスだけでなく、バリューチェーン全体、とりわけサプライチェーンと顧客にとっての製品のメリットや用途にも常に注意を払っている。

 エコヴァディスのサステナビリティ評価では、「環境」、「労働と人権」、「倫理」、「持続可能な資材調達」の各分野における企業のサステナビリティ・パフォーマンスが評価の対象となる。また、公開情報をもとに評価が行われる。

 エボニックは、化学業界のイニシアチブ"Together for Sustainability” (TfS:サステナビリティのための協力)の創設メンバーで、パートナー企業はサプライヤーに対し統一性のある監査と評価を実施し、さらにトレーニングを行うことで、グローバルサプライチェーンの透明性と持続可能性を高めたいと考えている。本イニシアチブのパートナーであるエコヴァディスは毎年、サステナビリティ評価を通じてTfSメンバー企業の評価を行っている。

kat
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