ASTEC2014/SURTECH2014開催、医療・環境・エネルギーを支える表面改質・評価技術を提案
「nano tech 2014 第13回 国際ナノテクノロジー総合展・技術会議」や「ASTEC 2014 第9回 先端表面技術展・会議」、「SURTECH2014 表面技術要素展」などの展示会が、1月29日~31日に東京・有明の東京ビッグサイトで開催、約46000名が来場した。
ナノテクノロジーは情報通信、エレクトロニクスから医療・健康、バイオ、環境・エネルギーまで、様々な重要課題解決のキーとして注目されるが、いずれの展示会においても、特に日本の新産業として注目される医療や環境、新エネルギーの技術革新を支える新技術や新製品が披露された。
特にASTECとSURTECHでは、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)コーティングやセラミックコーティングなどのドライコーティングから、めっきなどの環境対応の表面改質技術や、その処理による材料の機械的特性などを評価する硬さや密着性、摩擦・摩耗特性などの試験・評価技術などが紹介された。
パーカーグループのブースでは、パーカー熱処理工業が、韓国J&L Tech社製の新型ハイブリッドPVDシステム「CarboZenシリーズ」を出展した。リニアイオンソース(LIS)、UBMスパッター(UBMS)などプラズマ源の適切な組み合わせにより、耐摩耗、高潤滑、高耐食など適切なDLC膜を成膜できる。CarboZen 1000は6ポート(LISが4ポート、UBMSが2ポート)まで、CarboZen 1200は8ポート(LIS、UBMSが各4ポート)、プラズマ源を配置でき、膜の多彩化や成膜効率の向上などが図れるという。
ナノテックでは、DLC薄膜を機能別、用途別に分類した「ICFコーティング」(真性カーボン膜)を紹介するとともに、大電力パルススパッタリング(HiPIMS法)によって高機能水素フリーICFを660nm/minの超高速で成膜できるRoll to Roll成膜装置を紹介した。丸紅情報システムズは、ユニオンツールが開発したDLCコート/ダイヤモンドコート「ULFコート」の受託サービスを提案した。特に、内部応力を緩和しながら高硬度の成膜を実現、従来のULFコートに比べ、鉄系素材に対して耐摩耗性を3割向上させた水素フリーDLC膜「ULF-S」を処理サンプルとともに紹介した。自動車や機械の摺動部品に適用することで、低フリクション化やロングライフ化が可能になると強調した。
めっき関連技術では今回も、有害な重金属としてRoHS指令やELV規制などで規制の進む六価クロムの代替技術が多く紹介された。日本マクダーミッドは、六価クロム化合物を含まない耐食仕様のめっき群、ZinKladシステムを紹介した。同システムは亜鉛/亜鉛合金めっき~三価クロム化成処理~トップコートまでを組み合わせたRoHS指令やELV規制適合のシステムで、GMやフォードなど厳しい塩水噴霧試験をクリアし採用されているという。
また、コーティング薄膜の評価装置も多数出展された。薄膜の機械的特性評価装置を専門に扱うCSM Instrumentsは、昨年アントンパール社が買収、新しい体制のもと、薄膜やコーティング表面の機械的特性、たとえば密着性や破壊特性、変形特性などを評価するための専用試験機「スクラッチテスタ」や、軟質材から硬質材料、脆性材料、延性材料などほぼすべての材料について、硬度や弾性率などの機械的特性が計測・評価できる「インデンテーション・テスタ」、ほぼすべての固体材料の組み合わせについて、速度や周波数、接触圧、潤滑剤の有無、時間や雰囲気(温度、湿度や潤滑剤の種類など)といった試験パラメータが制御でき、実際の摩耗状況といった実用条件下に近い環境を再現した摩擦・摩耗試験が可能な「トライボメータ」などを出展した。
フィッシャー・インストルメンツは、AFM(原子間力顕微鏡)を追加することでナノメートル領域で高解像度の表面三次元画像を取得し、薄膜などの組織の可視化と定量化が可能となる「PICODENTOR HM500」を出展した。ピコメートル領域での高精度の距離測定や数μNまでの小さい荷重調整ができることで、極薄膜の硬質被膜の機械的物性を評価できる。
トリニティーラボは、台で薄膜や厚膜、塗膜などの界面特性(付着・破壊強度)と表面特性(摩擦・引っ掻き強度)が測定できる被膜性能評価システム「フィルメータ ATPro 301」を出展した。基材と膜の界面や多層膜における層間界面において、断面にピンで直線摺動させることにより外的応力を加え、膜のはく離、付着強度を測定する。また、10μmから1mm/secと極低速の速度範囲で摩擦係数を測定できるため、静止状態から摺動開始時に起こる試験体の弾性変形や摺動時の飛び跳ね現象を抑えたデータが得られる。このほか引っ掻き強度も測定が可能、摩擦係数との相関解明なども行える。
パルメソは、微細な粒子と水を投射することで、サブミクロンの薄膜に対し膜厚の1/10~1/50、つまりナノメートルサイズの摩耗分解能が得られる「MSE試験装置」を出展した。薄膜や物体表面の材料強さをGD-OES(グロー放電発光分析)装置のように表面から深さ方向に連続して精密評価できるため、微粒子のサイズ・種類を変えるだけで、硬質薄膜だけでなく軟質材料にも適用できるため、工具などに使われるTiN(窒化チタン)膜やDLC膜、セラミックス、金属めっき、半導体・電子部品や樹脂被膜、ゴム表面などに幅広く適用できるという。
医療関連では先ごろ、トーヨーエイテックが、冠動脈用ステントについてステント加工とDLCコーティングの両方で医療機器製造業許可を取得した。我が国の医工連携もようやく本格化の様相を帯びつつある。今回ASTECやSURTECHで紹介された各種の表面改質は、たとえば材料に乏しい生体適合性や耐久性などを付与することでインプラント製品など医療機器の耐久性・信頼性向上を、耐摩耗性を向上することで省資源化を、摩擦特性を改善することでエネルギー消費の節減を実現するキーテクの一つと期待されている。医療、エネルギー、環境、さらには防災など我が国の新産業の柱を支える各種の表面改質技術とその開発を支援する各種試験・評価技術の発展に注目が集まってきている。