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第9回ものづくりワールド名古屋

 

経産省、GNT企業に日本パーカライジングや東洋炭素などを選定

 経済産業省は、国際市場の開拓に取り組んでいる企業のうち、ニッチ分野において高いシェアを確保し、良好な経営を実践している企業を「グローバルニッチトップ(GNT)企業100選」として選定した。表面改質関連では、日本パーカライジングや東洋炭素、富士電子工業などが選定企業となった。

 GNT企業は、国際展開に優れ、我が国経済の牽引役となる企業を支援し、国際競争力の向上を確保していくことを目的としている。この観点から、グローバル展開に優秀と認められる実績がある企業をGNT企業として顕彰するとともに、こうした企業の経験値を一般化し、GNT企業を目指す企業に対する経営の羅針盤を示す。選定は今回が初めて。

 選定に当たっては、公募により候補企業を募り、外部有識者で構成する選定評価委員会の審議を経て選定した。評価のポイントとしては、①世界シェアと利益の両立②独創性と自立性③代替リスクへの対処④世界シェアの持続性等、に着目し100社を選定した。業種としては、機械・加工部門52社、素材・化学部門20社、電気・電子部門15社、消費財・その他部門13社、ネクストGNT部門7社となった。同省では、「日本再興戦略」(昨年6月閣議決定)に基づき、GNT企業およびこれを目指す企業に対する支援策を今後措置する予定だという。

 表面改質関連の選定企業と製品・サービスなどは以下のとおり。

日本パーカライジング「金属表面処理薬剤」

 同社の代表的な処理として「自動車塗装下地表面処理」があり、塗装密着性、防錆性等を付与することにより、錆や摩耗による損失を最小限に留める役割を果たしている。同社はシーズ開発から製品開発までを一貫して行い、国内から海外までの製品展開を視野に入れた迅速で柔軟な研究開発活動を行うことによって、自動車塗装下地表面処理は、世界シェア2割を獲得している。(素材・化学部門)

オキツモ「シリコーン耐熱塗料」

 同社は耐熱分野におけるシリコーン耐熱塗料を日本で初めて開発した。同製品の世界市場シェアは3割強まで成長したが、例えば、シリコーン樹脂を用いた耐熱塗料は200℃以上の高い温度域においても耐熱性を発揮。また、3000℃の高温と高圧に曝されるロケット発射台を保護するため利用される塗料も製造しており、世界同時供給を実現するグローバルネットワークを実現している。さらに、遠赤外線放射塗料や高効率輻射塗料、フッ素樹脂塗料や潤滑塗料等の開発も進めている。(素材・化学部門)

東洋炭素「等方性黒鉛製品(コーティング黒鉛製品など)」

 同社は、1974年に世界で初めて大型「等方性黒鉛」の工業化に成功して以来、高機能カーボンのパイオニアとして、高純度化・高密度化・コーティング技術等の付加価値を追求してきた。等方性黒鉛関連製品の世界市場シェアは約3割を占めており、半導体や原子力用等の先端用途から冶金用等、幅広い産業で使用されている。等方性黒鉛の素材メーカーのパイオニアとしての強みに加えて、高純度・コーティング等の高度な処理も含めた加工技術体制を社内に有し、一貫体制をもって顧客ニーズを迅速に開発・生産に結び付けている。(素材・化学部門)

メック「パッケージ基板の銅と樹脂との密着を大きく向上させる超粗化剤」

 同社のメックエッチボンド「CZシリーズ」は、銅表面を数μmエッチング(溶解)することで表面に超微細な凹凸形状を形成するプリント配線板用薬品であり、銅表面に微細な凹凸形状を創ることにより、銅と樹脂との密着性を高めている。同シリーズは、パソコンやスマートフォンなどのCPUやAP等の半導体において使用されており、世界シェアは100%を獲得している。(素材・化学部門)

東洋精鋼「ショットピーニング加工用カットワイヤーと検査機器」

 同社は、ショットピーニング加工において使用される「コンディションドカットワイヤー」を日本の自動車ならびにその関連の国内、海外工場、航空機業界のユーザー向けに提供している。2008年には、高靭性化を図った新商品「高靱性ラウンドカットワイヤー」を開発・販売を行い、世界シェアは3割を占めるに至った。また、ピーニング加工における信頼性を高めるべく、世界初の検査機器「カバレージチェッカー」を開発・販売、同商品に関しては、現在のところ競合はなく、米仏加のパートナー企業を通じて各国に販売している。(機械・加工部門)

富士電子工業「自動車クランクシャフト向けの高周波焼入設備」

 同社は、高周波誘導加熱(IH熱処理)において、クランクシャフトに高周波を用いて焼入れを施す設備は世界2~3割のシェアを有している。同設備には、エロテルム方式と呼ばれる独特な焼入方式を採用し、さらには回転角度に応じて出力の調整をしながら円周方向の硬化層深さを調節する同社独自のパワーリダクション方式で歪みを最小限に低減。エンジンの高強度・軽量化には欠かせない高品位な焼入れを実現している。特に、フィレット部焼入れについては他の追随を許さない優れた技術を確立している。(電機・電子部門)

日本電子「透過電子顕微鏡」

 同社は、原子レベルで物体の情報を観察できる「透過電子顕微鏡」を製造。GNT商品数は11にのぼり、最も世界シェアの高い製品は7割になる。透過電子顕微鏡は、試料表面に電子線を照射し、透過した電子をレンズで拡大投影し、サンプルを観察することを基本原理としている。電子線を数nm以下まで細くすると、光学顕微鏡では観察不能な微小構造まで鮮明に観察することができるため、物質構造の解析や原子レベルの情報を得ることを可能とし、半導体をはじめとした各種材料開発分野、微生物観察などの医学分野において画期的な機器として世界中で活躍している。(電機・電子部門)

ユニソク「超高真空走査型プローブ顕微鏡」

 同社は、超伝導材、グラフェン、半導体、有機薄膜等をナノメートルオーダー(原子、分子サイズ)で形状が観察できる超高真空走査型プローブ顕微鏡を製造しており、世界シェア6割を有している。同社の製品は、技術的な強みとして極低温(30mK-400mK)と強磁場(~16T)下でSTMトポ像が得ることが可能。また、多探針走査による表面観察を可能にしてインピーダンス測定も可能にしている。(電機・電子部門)