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SEMICON Japan 2024

 

NIMSなど、有機薄膜トランジスタを室温印刷で形成するプロセス

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の若手研究グラント事業で、物質・材料研究機構(NIMS)と岡山大学の研究チームは、昇温を全く必要としない室温環境下での印刷で、有機薄膜トランジスタを形成するプロセスを確立した。

 この完全室温印刷プロセスは、これまでの印刷プロセスで必要とされてきた100~200℃以上の高温を必要としないため、熱による変化が問題となって展開ができなかったフレキシブル基板や、生体材料への電子素子の作製が可能となるなど、医療やバイオエレクトロニクスをはじめ、様々な分野における展開が期待される。

 研究チームは、室温で塗布乾燥するだけで固体金属と同レベルの導電性を有する金属ナノインクの開発に成功した。ナノメートルサイズの金属粒子に芳香族性の分子を配位させ、インクに分散させることにより、室温導電性が発現した。これにより非耐熱性基板への電極形成が可能になった。基板の表面を薄い撥水性ポリマーの膜で覆い、光学的手法で形成した親水性のパターンに金属ナノインクを選択的に塗布して、精密な電極を形成する新しいプロセスを開発した。この1℃の昇温も必要としないプロセスにより、フレキシブルな基板への精密な電極印刷が可能になった。なお、この室温プロセスによる有機薄膜トランジスタが、性能面においても高温プロセスによる従来品を大きく上回ることを確認したという。

本研究で作製した室温導電性金属ナノ粒子と、室温印刷による有機トランジスタ本研究で作製した室温導電性金属ナノ粒子と、室温印刷による有機トランジスタ

フレキシブルなプラスチックフィルムに印刷した有機トランジスタ配列フレキシブルなプラスチックフィルムに印刷した有機トランジスタ配列

 本研究で開発した室温プリンテッドエレクトロニクス技術により、従来、熱による変形で不可能とされてきたフレキシブル基板への電子素子の印刷が可能になるだけでなく、紙や布等のこれまでプリンテッドエレクトロニクスの対象として考えられなかった材料への印刷が可能になり、さらには生体材料のような環境変化に極めて弱いものの表面にも電子素子を作製することも可能であるため、医療やバイオエレクトロニクス等、様々な分野への応用に繋がるものと期待できる。