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第9回ものづくりワールド名古屋

 

「トライボロジー会議 2014 春 東京」開催、DLC、熱処理の研究成果など発表

 日本トライボロジー学会(会長:東京大学 加藤孝久教授)は5月19~21日、東京・代々木の国立オリンピック記念青少年総合センターで「トライボロジー会議 2014 春 東京」を開催、トライボロジー学会技術賞の受賞講演としてトリニティーラボらによる「移動型靴/床静・動摩擦係数測定システムの開発」、熱処理、コーティングなどについての研究発表が行われた。ここでは表面改質関連のトピカルな発表の一端を紹介する。

トライボロジー学会技術賞を受賞した柴田氏、野村(修)氏、野村(俊)氏、堀切川氏、山口氏トライボロジー学会技術賞を受賞した柴田氏、野村(修)氏、野村(俊)氏、堀切川氏、山口氏 「移動型靴/床静・動摩擦係数測定システムの開発」野村修平氏、野村俊夫氏(トリニティーラボ)、 堀切川 一男氏、山口 健氏、柴田 圭氏(東北大学)……靴底と床面間の耐滑性評価試験装置を開発。(1)測定場所に持ち込み可能で狭い場所や傾斜面でも測定できる(2)人間のすべり転倒現象に則した荷重やすべり速度条件での測定が可能(3)静摩擦係数と動摩擦係数を一度に測定できること(4)測定時の速度変動があっても動摩擦係数を測定ができる、の4点を満足するシステムの開発を行った。同システムを用いて、安全靴とサラダ油を塗布したステンレス水平床面間の摩擦係数の時間変化を測定した。ステンレス板は床反力計の上に設置し、計測された床板力からも摩擦係数を算出した。すべり速度の変化に伴って靴に働く慣性力を補正していない摩擦係数は、床反力計を用いて床反力に基づいて算出された摩擦係数と加速域、減速域において大きく異なるのに対して、慣性力を補正した動摩擦係数は一致した。床反力に基づいて測定された摩擦係数と同システムで測定された摩擦係数では、極めて高い相関が見られ、すべり速度が変化する場合には、ロードセルによる牽引力の測定だけでなく、慣性力を考慮した摩擦係数測定が必要であり、同測定システムの有効性が示された。

 「DLC膜の油中摩耗における摩耗粒子の収集および分析」神谷 徹氏(ジェイテクト)、梅原徳次氏、野老山 貴行氏、上坂裕之氏、Nazeef Afifi Bin Hafiz Ahmed氏(名古屋大学)……DLC膜の摩耗形態を把握することを目的にフィルタによる摩耗粒子の収集と、摩耗粒子形状とラマンスペクトルの解析を実施した。測定では、電場を用いた摩耗粒子の収集手法を開発し、レーザー顕微鏡による粒径分布の測定と電子顕微鏡(SEM)による摩耗粒子の形状観察から摩耗形態の解明を試みた。発表では、電場を用いた摩耗粒子収集方法と油潤滑化におけるDLC(シリンダ)/DLC(ディスク)の摩擦摩耗試験方法を示し、結果と考察を報告した。また、フィルタ法に代わる電場を用いた摩耗粒子収集法により、平滑なガラス上に摩耗粒子を収集することが可能になったこと、同手法で摩耗粒子の粒径分布と摩耗堆積の分析が可能となり、分析結果から摩耗の形態および摩擦面における摩耗粒子の挙動を推測することが可能になった、とした。

 「鉄のガス窒化における組織制御とその摺動特性」孟 凡輝氏、小林修一氏(日立建機)、宮本吾郎氏、古原 忠氏(東北大学)……建設機械の油圧部品を念頭に置いて、高純度鉄に窒化ポテンシャルを制御した雰囲気でガス窒化を処理し、様々な化合物層を表面に生成させた後、その組織、窒素濃度分布、硬度および摺動特性の評価を行うことで、窒化ポテンシャルが化合物層の構造と摺動特性に与える影響を調査した。発表では、供試片の作成方法、窒化特性の評価方法、摺動特性の評価方法を示した上で結果を報告。高純度鉄のガス窒化処理において、炉内雰囲気の窒化ポテンシャルを制御することで、窒化化合物層の厚さと相構造、窒素濃度分布、硬度分布を制御できることを確認できた、とした。また、各窒化化合物層の摺動性能を評価した結果、低窒化ポテンシャルで生成されたγ’単相の化合物層は、油温条件の影響を受けにくく高窒化ポテンシャルで生成された化合物層よりも優れた摺動特性を示したこと、高窒化ポテンシャルで作られたγ’相とε 相から形成される化合物層は油温条件によって異なる摺動特性を示したことを結論として述べた。