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SEMICON Japan 2024

 

日立マクセル、クロム酸前工程不要の無電解めっきプロセス

 日立マクセルは京都大学と共同で、超臨界ナノ分散技術を用い、ナイロン樹脂めっきに必要なパラジウム触媒を微分散させた「マスターバッチ材料」と「無電解めっきプロセス」を開発した。

 樹脂めっき部品は、自動車、家電製品、住宅設備(水周り)等の分野において広く使われている。従来の樹脂めっき部品は、主にABS樹脂(Acrylonitrile Butadiene Styrene、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合樹脂)成形品の表面をクロム酸でエッチング後、触媒となるパラジウムを付与して無電解めっき膜を形成し、必要に応じて電解めっき膜を形成することで作られるが、昨今の環境への意識の高まりとともに、環境負荷材料の使用を避けるなど、環境に配慮しためっき技術の開発が進んでいる。

マスターバッチ材料マスターバッチ材料 同社が開発した「マスターバッチ材料」は、超臨界ナノ分散技術を用いることで、マスターバッチのベース樹脂中にパラジウム触媒をナノレベルで微分散させることが可能となった。これをナイロン樹脂に混ぜて射出成形し、「無電解めっきプロセス」を通すことで、クロム酸によるエッチング工程なしに密着力に優れたニッケル・リン無電解めっき膜を成形品表面に形成することができ、環境に配慮した無電解めっき工程を実現できる。

 この「無電解めっきプロセス」では、従来の樹脂めっきでは必要だったエッチング、触媒付与、活性化工程が不要となり、無電解めっき工程を従来工程の約1/3に短縮する。また、1ラックでのめっき処理が可能。さらに、レアメタルであるパラジウム触媒の使用量も従来めっき法に比べ約1/3以下に削減しており、材料、加工から排水処理に至る総コストを削減できるという。

樹脂めっきの試作サンプル(ランプ用反射ミラー)樹脂めっきの試作サンプル(ランプ用反射ミラー) この樹脂めっき技術では、従来の樹脂めっきで主に使われるABS樹脂に比べて耐熱性、機械強度に優れたガラスフィラー強化ナイロン樹脂を基材に使用できる。そこから形成される樹脂めっき部品は、高耐熱、高機械強度、軽量という特長があり、さらに電磁波シールド、導電性、高放熱性を付与できるため、従来、アルミ金属部品が使われてきた自動車部品分野などでの応用が期待できる。

 また、「マスターバッチ材料」を入れた部分にのみめっき膜が成長する特性を活かし、部分めっき部品の工程の簡略化とデザイン性の自由度向上が図ることができる。

 同社では、この「マスターバッチ材料」のパイロット製造設備と「無電解めっきプロセス」の試験用設備をファインテック事業本部に導入し、7月1日から「マスターバッチ材料」のサンプル出荷を開始する。あわせて、部品メーカーやめっきメーカーでの樹脂めっき部品の開発および、「無電解めっきプロセス」の導入について支援を行う予定。また、「マスターバッチ材料」については、14年度中の製品化を計画している。