表面改質展2014が名古屋で開催、熱処理・コーティングなどの製品・技術を展示
日刊工業新聞社の主催する表面改質展2014が7月2日~4日の三日間、名古屋市のポートメッセなごやで開催、9094人が来場した。難加工技術展と同時開催することで加工工具や金型なども多数展示され、それら製品の耐久性向上を図る技術や自動車部品の摺動性を向上する技術など、様々な表面改質関連の製品・技術が一堂に会した。
東研サーモテックでは、熱処理技術やDLCコーティングなどのドライコーティング技術の提案を行った。同社では、熱処理の受託加工はタイを中心とした海外での伸び率が高く、それに伴いコーティングの需要も増加しているという。展示会では国内11拠点のほか、タイ、中国、マレーシア、メキシコで事業を行っていることを強みに国内と同様の高品質な熱処理、コーティングが実現できるとPRした。国内では、自動車部品にDLCコーティングが採用されているほか、エンドミルなどの切削工具で窒化クロムコーティング「S-CrN」がHV3600と高硬度で耐熱温度1200℃という特性が評価されて採用が広がっているという。日本アイ・ティ・エフでは、高度がHV6000から7000で油中摺動特性に優れた機械部品用DLCコーティング「ジニアスコート HA」を紹介。日産自動車のエンジン用バルブリフタで採用されたとおり、潤滑油を用いずに低い摩擦係数を示す水素フリーDLC(ta-C)だが、エンジン油中ではさらに摩擦係数を低下、省燃費に貢献する。他の自動車メーカーでの採用も決まっており、今後も幅広いラインナップと実績を強みに自動車部品を中心にDLCコーティングの拡大を図っていく。
オーエスジーコーティングサービスは、ドリル、エンドミル、タップの再研磨・コーティング処理品を展示。特に注目を浴びたのは超硬ドリルに対してCVD(化学蒸着法)法でダイヤモンドコーティングを行った事例。超微細結晶の多層構造により表面が平滑で切れ味がよく、航空機で採用が進んでいるCFRPの加工でデラミネーション(層間はく離)の発生を防止するという。同社が行ったアルミニウム合金のドライ穴加工では、DLCコーティングが709穴で折損するのに対してダイヤモンドコーティングは7177穴を達成、DLCと比較して10倍以上の耐久性を確認している。脱膜・再コーティングにも応じる。硬度はHV9000、摩擦係数は0.15で密着性にも優れるため、摺動部品や樹脂成形金型などにも適用できる。このほか、PVD法(アークイオンプレーティング法、電子ビーム法、スパッタリング法)により、TiAlNやTiCNなどのセラミックコーティング、DLCコーティングの膜種も豊富にラインナップしており、今後は親会社であるオーエスジーが扱う加工工具のコーティングのほかに、機械部品や金型にも適用を拡大していく考えだという。
豊島技研は、金型や機械部品などに炭化物・硼化物、固溶体および化合物層などを形成することで耐摩耗性や耐焼付き性を付与する表面改質としてTD処理を提案。同処理専業の技術力によりPVDコーティングの代替処理として適用できるとPRを行った。また、同社では同処理の薬剤除膜サービスを新たに開始。従来の再コーティングではブラストで除膜をしてから磨き、ラップを行い再度TD処理を施していたが、同サービスでは薬液除膜を行いラップ、再TD処理となる。金型などで見られる細穴に対して再コーティングを行う場合、ブラストでは除膜が難しかったが、専用の薬液を使用することで膜の残存がなく、再コーティングにおいても高密着な膜が形成できる。また、ブラストのように母材が粗くなることもないため、再磨きによる形状変化が少ないことも特徴の一つで、現在のところ精度が求められる製品に対して適用が進んでおり評価を得ているという。今後、コスト面の問題をクリアして適用拡大を図る。
熱処理関連では、メタルヒートが最大1300mm(H) × 1300mm(W) × 1650mm(L)の真空熱処理炉における受託加工のPRを行ったほか、同社が幹事会社となって進める4社共同体の「金属熱処理ソリューション」を紹介。真空焼入れのほか、塩浴焼入れ、高周波焼入れ、液体浸炭、ガス軟窒化などの専門家集団が加工品質や納期、コストの問題解決に貢献するとした。また、同社では社外から受講生を募り、金属熱処理の知識、実技を教える「金属熱処理スクール」を開講。熱処理の基礎・基本を学ぶ座学コースと、熱処理技術を体験する実践コース、熱処理管理者を養成するコースと三種類を用意した。各コースを月に一回程度開講して同業他社の人材育成を助けるほか、ユーザーに対する熱処理技術の周知を図る。
金型の設計・製作・表面処理(めっきやアルマイト処理)までを一貫して生産する中日クラフトは、レーザー焼入れを紹介。レーザー焼入れは、レーザー光を鋼部品の表面に照射することで、急速な加熱と内部への熱度伝導による自己冷却により、マルテンサイト組織へと変態させ表面を硬化する技術。同社では高周波焼入れで熱歪みが問題になっている来場者に対して提案を行った。ただ、高周波焼入れに比べて加工価格が高価なこともあり、現在では半導体や医療関連などの比較的コストに余裕のある業種に向けて勧めているという。また、熱歪みを最小限にするため、今後はレーザー焼入れ後の冷却処理も検討するなど処理の幅を広げるとともに、より一層洗練した処理を完成させ、数年後に採用拡大を考えているという。
一方、主に高周波焼入れを主力に受託加工を行っている富士高周波工業もレーザー焼入れを提案。高周波焼入れとレーザー焼入れの違いについて解説した資料を配布した。高周波焼入れは大面積で焼入れ深さが1mm以上、レーザー焼入れは局所焼入れで焼入れ深さ1mm以下であることや、焼入れ硬度の違い、歪み量の違いなどを示すことで、用途によってユーザーが焼入れの選択をできるようにした。同社におけるレーザー焼入れの加工単価は高周波焼入れと同等だという。
7月3日には、エア・ウォーターNV 顧問の冨士川 尚男氏が「最近話題の低温浸炭および低温窒化処理」と題した特別講演を行った。講演では、浸炭処理や窒化処理において、特にクロム含有鋼では耐食性や耐熱性などを劣化させると指摘。同社が行う低温浸炭処理「PIONITE処理」では、特にオーステナイトステンレスに400℃前後で浸炭処理を行うと、クロム炭化物を生成させことで耐食性を落とさずに表面硬化させることができるとした。低温窒化処理「NV窒化」は、300℃後半の低温で窒化処理を行うことで、炭素鋼からニッケル基合金など幅広い鋼種に対して低歪み、母材硬度低下の抑制、S相形成による耐食性向上などの特徴をもった窒化処理が行えるとした。また、どちらの処理も圧縮残留応力が残存された状態となるため、疲労強度の向上や応力腐食割れを防ぐなどの特性向上を図ることができる特徴を持った処理であることを報告した。