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SEMICON Japan 2024

 

富士フイルム、従来より約100倍の抗菌性能を向上したコーティング技術

 富士フイルム( http://www.fujifilm.co.jp )は、従来の銀系抗菌剤を使った抗菌コーティングと比べて、約100倍の抗菌性能を実現する技術「HYDRO AG(ハイドロ エージー)」を開発した。

 この技術は、銀系抗菌剤(銀イオンを徐々に放出する機能を持ったセラミック微粒子)を分散した水となじみやすい超親水性の樹脂(バインダー)を塗布する技術。同技術は、同社が写真フィルムで培った銀に関する知見および精密塗布の技術と、グループ企業である富山化学工業の抗菌性能の評価技術を生かして開発したもの。この技術を用いた製品として、医療機関、公共施設、教育機関などで用いられるタッチパネルを搭載した機器向けの抗菌液晶保護フィルムの発売を予定している。

 一般的に、銀系抗菌剤を使った抗菌コーティングでは、抗菌剤に空気中の水分などが作用して銀イオンが溶出される。この銀イオンは、細菌の細胞表面にある酵素と結合し、細菌を不活化する。よって、塗布膜表面の銀イオン濃度を高めることで、細菌の増殖を抑制する性能を向上させることができる。

 従来の銀系抗菌コーティングには、水となじみにくい非親水バインダーが用いられており、塗布膜表面に露出した銀系抗菌剤に水分が作用した場合にのみ銀イオンが溶出され、細菌の増殖を抑制していた。しかし、塗布膜表面にある抗菌剤の銀イオンは、抗菌作用を発揮するのに伴い消費される。また、塗布膜表面に何かが接触することで抗菌剤自体が物理的に脱落し、その抗菌効果は次第に失われる。これに対し、同社が開発した技術は、水となじみやすい超親水性バインダーの中に銀系抗菌剤を分散しているため、塗布膜表面だけでなく、塗布膜内部の抗菌剤にも水分が作用して、塗布膜内部からも銀イオンを供給する。これにより、塗布膜表面の銀イオン濃度が高くなり、従来にない高い抗菌性能を発揮する。また、その効果が長期間持続することが期待できるという。

 近年、高齢者やがん患者など免疫力が低下し、感染リスクが高くなっている患者の増加や、新たな多剤耐性菌の出現などで、院内感染のリスクは年々高まっている。医療現場では、タッチパネルを搭載した医療機器やタブレット端末などのスマートデバイスが多く活用され、年率4割増で普及が進んでいるという。しかし、これらのデバイスに関しては、タッチパネルに付着した細菌が繁殖し、院内感染の原因となるリスクが指摘されている。

従来の抗菌コーティングとHYDRO AGの構造イメージ従来の抗菌コーティングとHYDRO AGの構造イメージ