NTN( http://www.ntn.co.jp )は、高周波焼入装置の性能を向上する「高性能磁性コア」を開発、販売を開始した。同品は、鉄粉の表面に加熱すると重合を起こして硬化する樹脂をコーティングし、圧縮成形することで業界最高クラスの磁気特性と強度を有する。
軸受やギヤをはじめとする機械部品は、強度向上のため熱処理を施している。中でも、自動車に代表される駆動装置関連の部品は、複雑な形状が多い上に、特定部位に強度が必要とされるため、熱処理では高周波誘導加熱(高周波焼入れ)によって必要な部位のみ焼入れをする。高周波焼入装置の加熱コイル部には、熱処理時間の短縮や焼入れ精度を向上するコアと呼ばれる磁性材が取り付けられるが、材料強度が弱く加工工数やマテリアルロスの多さに課題があったという。
今回開発した高性能磁性コアは、粉末冶金用の鉄粉を磁性粉末として用い、独自の配合で熱硬化性樹脂を添加、造粒処理することで鉄粉表面に絶縁被膜を施している。また、特殊な圧縮成形と加熱硬化により被膜の破壊を抑える。
これにより、粉末同士の接触を低減することができ、市販品に対して磁気特性の指標である飽和磁束密度が10%、比透磁率は30%向上し、鉄損も15%低減、業界最高クラスの磁気特性を達成した。また、圧環強度も市販品比5倍となり、コアの切削加工や取り扱いが大幅に向上した。開発品の採用により、高周波焼入れの効率が向上し、より高精度な焼入れが可能になることで、熱処理時間の短縮に加えて加工部品の強度や硬度も高められる。
高性能磁性コアは、すでに同社内での装置に採用されているが、新たに高周波焼入装置メーカーや高周波熱処理加工会社への販売を開始した。高周波焼入れは、化石燃料や洗浄剤が不要なクリーンな熱処理として注目されており、同品を採用することで高周波焼入装置の性能向上が可能になるという。