パーカー熱処理工業( http://www.pnk.co.jp )主催、日本パーカライジング( http://www.parker.co.jp/ )共催、パーカーS・N工業( http://www.parker-sn.co.jp/ )・日本カニゼン( http://www.kanigen.co.jp/ )協賛の「第12回表面改質技術研究会」が10月10日、東京・丸の内の日本工業倶楽部で開催、約200名が参加した。
挨拶する安部社長 当日は、パーカー熱処理工業の安部壽士社長が「今週は、皆様ご存知のように日本人研究者によるノーベル物理学賞受賞というビッグなニュースが報じられた。日本人の一人として感に堪えない出来事である。受賞者の方で印象に残ったのは、“困難な目標故に多くの研究者が離脱する中、諦めることなく強い志を持って研究を遂行した”というコメントだ。我々もものごとを追求しており、達成のためには高い志と諦めることのない強い情熱が必要だと改めて心に期するところである。一方、このような研究者、技術者の志を見守る環境の整備も極めて重要であると痛感した次第である」と開会の挨拶を述べた後、講師陣の紹介を行い、以下のとおり講演が行われた。
「冷間鍛造の新しい潤滑と動向」小見山 忍氏(日本パーカライジング)……冷間鍛造の潤滑被膜におけるリン酸塩・石鹸被膜システム(ボンデ潤滑被膜)を代替する新規の一工程型潤滑システム「PULS (Parker Ultimate Lubrication System)」について紹介。同システムは、廃水や産業廃棄物などが発生せず、被膜処理に要するスペースやエネルギーコストも小さいとし、さらに被膜処理部を鍛造機に直結するインラインプロセスも可能であるとした。実用化例では、湯洗、処理液塗布、乾燥まで一貫した同システムの装置導入例を示し、工程間在庫の消失、リードタイムの短縮、被膜処理コストの大幅削減や最適被膜厚みによる製品クオリティーの向上などを実現した事例を述べた。
「Si-DLCの量産技術と自動車エンジン部品向けHP窒化技術」Youngha Jun氏(韓国 J&L Tech社)……450℃までの耐熱性を持たせた同社のPECVD法によるSi-DLC膜が、<10μmという高い成膜レートやピンホール・ドロップレットのないコーティングが可能なことを示したほか、ピストンリングへの量産成膜用のチャンバーサイズφ1000×L1200mmの大型PECVD装置を紹介した。また、ホローカソード放電によるプラズマ窒化HP窒化技術について、ステアリング部品やトランスミッションの内歯歯車など円筒部品内面への低歪みの処理が可能なことや、従来の窒化処理と比べて1/4以下のエネルギー消費で2倍の生産性を実現することなどを示した。
「サスティナブル・トライボロジー―表面改質の役割と期待―」佐々木 信也氏(東京理科大学 教授)……摩擦・摩耗・潤滑を取り扱う工学分野であるトライボロジーの基礎、トライボロジー特性向上のための表面改質、改質した表面のトライボロジー特性評価について解説。トライボロジー特性向上のためには、各種表面改質技術を俯瞰する体系化が必要であり、そのためにはデファクトスタンダードとなっている試験装置によるデータの蓄積をしていくことが必要であると述べた。
「自動車の軽量化と軽合金材料および表面改質技術への期待」神戸洋史氏(日産自動車)……自動車の軽量化が内燃機関の燃費向上だけでなく、電気自動車でも転がり抵抗低減によるエネルギー効率向上の重要な要素であることを強調。軽量化とコスト低減を両立する構造として採用の進む、鋼材+アルミ鋳物などのマルチマテリアルボディーなどを紹介。今後ますます異種材の接合部で発生するガルバニック腐食対策や軽合金材料の弱点となる耐摩耗性補完のための表面改質技術が求められることを述べた。
第12回表面改質技術研究会のもよう