三菱マテリアル( http://www.mmc.co.jp/ )と子会社の三菱伸銅( http://www.mitsubishi-shindoh.com/ )は共同で、電気的な接続信頼性を維持しながら端子挿入時の摩擦抵抗を低減した自動車コネクター端子用めっき「PICめっき」(PIC : Precise Interface Control)を開発した。
コネクター端子用の銅合金では、電気的な接続信頼性を高めるためにリフロー錫めっきの表面処理を施すことが一般的だという。しかし、表面の錫めっきが軟らかいことから、端子挿入時の摩擦抵抗が増大してしまうという課題があった。この課題に対して、低摩擦性の錫めっきがあるが、低摩擦性の錫めっきは、銅合金層と錫めっき層の界面に生じる銅錫合金を、表面に露出させることで摩擦抵抗を低減しているが、表面の純錫成分が少ないため電気的な接続信頼性が低下するという欠点がある。
今回、両社は独自の技術を応用し、銅合金層と錫めっき層の界面に生じる銅錫合金の形状を制御することで、摩擦抵抗の低減と電気的な接続信頼性を両立したPICめっきの開発に成功した。このめっきは、純錫より硬度が高い銅錫合金を柱状にし、錫めっき表面に銅錫合金を数µm間隔で形成するもの。めっき表面の動摩擦係数は、従来比約30%低減している。また、低摩擦性の錫めっきでは充分でなかった電気的な接続信頼性については、柱状で点在する銅錫合金の隙間に多くの純錫成分を残存させることで確保している。摩擦抵抗は、おす端子材とめす端子材の両方に同処理を使用すると最大の低減効果を発揮するが、めす端子材のみに使用するだけでも低減効果を実現できるという。
従来品(リフロー錫めっき)とPICめっきの断面イメージ図
従来品(リフロー錫めっき)とPICめっきの表面像
自動車電装化の進展に伴い、電装部品におけるコネクター類も小型化・多極化が進んでいる。コネクター端子の挿入作業は主に手作業で、端子挿入時の摩擦抵抗が増大すると接続作業性が低下してしまうため、低摩擦性のコネクター端子が求められている。