表面技術協会、第66回通常総会・協会賞など授与式を開催
表面技術協会( http://wwwsoc.nii.ac.jp/sfj/ )は2月27日、東京・麹町の弘済会館で「第66回通常総会・各賞授与式」を開催した。
当日は第65期事業報告、会計報告が行われた後、第66期事業計画・収支予算について審議、満場一致で可決された。事業報告では、話題となっているテーマを取り上げた「自動車、航空・宇宙、医療分野において求められる表面処理技術」や「表面処理基礎講座」、「ドライプロセスの基礎と薄膜作製」などのセミナーを計6回開催したことを報告した。部会活動では、新たに「高機能トライボ表面プロセス部会」が発足し、このほか「めっき部会」、「材料機能ドライプロセス部会」、「溶射・ライニング部会」などと併せて15の部会が活動中であるとした。事業計画では、3月と9月の講演大会の開催運営、表面技術の基礎的分野における学術的討論を行うためアカデミック研究会討論会を開催することなどを確認した。
役員改選では、前期に引き続き会長に影近 博氏(JFEテクノリサーチ 代表取締役社長)、副会長に興戸正純氏(名古屋大学 教授)、清川 肇氏(清川メッキ工業 代表取締役社長)が再任、今期より新たに鷹野一朗氏(工学院大学 教授)、吉野寛治氏(吉野電化工業 代表取締役)が副会長に選任された。
理事を代表して挨拶に立った影近会長は「本協会の財政危機は、一時的に脱したと言えるが、会員の減少傾向は変わっていない。協会の活力と源泉は会員数であり、あるレベルで維持するのは必須の課題である。今年の執行部の課題もそこにあり、理事の総力を挙げて会員増強に努めていきたいと思っている。具体策は今後詰めるが、会員メリットを含めた魅力ある協会をアピールすることが必要である。そのためには理事会は当然のこと、常設委員会ならびに部会活動、支部活動で総力を挙げて取り組まなければならない。それぞれの担当理事および会員皆様のご支援ご協力をお願いして会員増加を達成したい」と述べた。
当日の席上では、「平成27年度表面技術協会-協会賞・功績賞・論文賞・技術賞・進歩賞・技術功労賞-授与式」が行われ、杉山和夫氏(八戸工業高等専門学校 教授)が業績「固体表面が関与するプラズマプロセシングの開発と応用に関する研究」で協会賞を受賞した。杉山氏の業績は、表面化学とプラズマ化学の基礎と応用に関するもので、例えば固体酸塩基のキャラクタリゼーションと触媒特性との関連性、アクリロニトリルの接触水和における金属銅の特異的触媒挙動の解明、自動車排気ガス用NOxセンサーの実用化など、多岐に渡っている。特に、大気圧化においての非平衡プラズマ現象の発見と実用を通じて、その後の大気圧非平衡プラズマ材料プロセシングの発展に大きく寄与したことなどが評価された。
また技術賞では、川口 漫氏(デンソー 材料技術部 表面技術室 担当係長)ら8名が「耐熱耐食性に優れた亜鉛めっき用3価クロム化成皮膜の開発」で受賞。受賞技術は、亜鉛めっき保護膜に関して、3価クロム化成皮膜の加熱による耐食性低下のメカニズムを皮膜の詳細な解析から解明し、品質面、経済面から効果的な添加剤の選定による溶出イオンの無害化および処理液組成の最適化により耐熱耐食性の向上を実現した。これによりトップコートの廃止とともに、水素脆性除去処理が必要な部品においても工程数の低減を可能としている。これまで、亜鉛めっきと3価クロム化成処理の間に水素脆性除去処理を行う必要があったが、本技術では3価クロム化成処理後でよくなり、工程数の低減のみならず生産性向上にも寄与している。また、2014年時点で自動車部品を主な処理対象として180万台分生産された実績もあることなどが評価された。
協会賞などの受賞者一覧は以下のとおり。
協会賞
・杉山和夫氏(八戸工業高等専門学校 教授)
業績「固体表面が関与するプラズマプロセシングの開発と応用に関する研究」
功績賞
・釜崎清治氏(元 首都大学東京)
・棚木敏幸氏(東京都立産業技術研究センター 多摩テクノプラザ 繊維化学グループ ワイドキャリアスタッフ)
論文賞
・鈴木 祥一郎氏(上村工業 中央研究所 課長)、尾形幸生氏(京都大学エネルギー理工学研究所:現 京都大学 名誉教授)
題名「無電解めっきに用いるPd-Sn触媒の凝集挙動」
(表面技術 第64巻 第7号 407~415頁)
技術賞
・川口 漫氏(デンソー 材料技術部 表面技術室 担当係長)、菅原博好氏(同 室長)、角谷 浩氏(同 担当次長)、岩出孝信氏(デンソー 部品エンジニアリング部 製造技術2室 課長)、船津丸 修氏(同 部品4課)、山本富孝氏(ディップソール 研究技術開発本部 研究開発2部 部長)、小池 卓氏(同 副部長)、樫尾竜太氏(同 基礎研究室)
題名「耐熱耐食性に優れた亜鉛めっき用3価クロム化成皮膜の開発」
進歩賞
・久保田 賢治氏 (三菱マテリアル 中央研究所 電子材料研究部 副主任研究員)
業績「銅のエッチング性制御およびその応用に関する研究」
(表面技術 第64巻 第6号 368~370頁 他)
技術功労賞
・中岡政弘氏(新日鐵住金 尼崎研究試験室 薄板係 めっき班班長)
・江原志朗氏(JFEスチール スチール研究所 技術副主任)