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SEMICON Japan 2024

 

トライボコーティング技術研究会など、第7回岩木賞贈呈式、第17回シンポジウムを開催

第7回岩木賞受賞者と関係者第7回岩木賞受賞者と関係者
 トライボコーティング技術研究会( http://www.tribocoati.st )と理化学研究所は2月27日、埼玉・和光市の理化学研究所・鈴木梅太郎記念ホールで、「岩木トライボコーティングネットワークアワード(岩木賞)第7回贈呈式」および「第17回『トライボコーティングの現状と将来』シンポジウム―ナノ表面加工、プラズマ応用加工・コーティング技術および高度めっき技術―」を開催した。

挨拶する大森会長挨拶する大森会長 会の冒頭、挨拶に立った大森会長は、「トライボコーティング技術研究会は、1994年に発足し、前会長の岩木先生が代表としてご活躍されて今日に至っている。岩木前会長がトライボロジーとコーティングの二つのキーワードをつなげてトライボコーティングという研究分野を掲げ研究会や共同研究、また業界の活性化を図られてきた。今回のシンポジウムが第17回となり年々ハイレベルな講演・業績の発表がなされ、この分野の注目度の高さがうかがえる。また近年、トライボファブリケーションという造語を立ち上げ、積極的に表面をつくる活動とトライボコーティングのコラボレーションも積極的に推進している。そうしたことから、今回サブタイトルにナノ表面加工、プラズマ応用加工・コーティング技術、高度めっき技術とついているが、ますます当研究会およびシンポジウムの守備範囲が広がっていることがお分かり頂けるかと思う」と述べた後、岩木賞各賞の審査経過説明を行った。

 岩木賞は、同研究会と未来生産システム学協会(NPS)などからなる岩木賞審査委員会が表面改質、トライボコーティング分野で著しい業績を上げた個人、法人、団体を顕彰するもので、当該分野で多くの功績を残した故 岩木正哉博士(理化学研究所 元主任研究員、トライボコーティング技術研究会 前会長)の偉業をたたえ、2008年度より創設された。今回は、大賞に業績名「次世代半導体基板の高能率・高品位加工を実現する革新的な高速圧加工装置と加工条件感応型の特殊粘弾性材料パッドの開発」で土肥俊郎氏・瀬下 清氏・山崎 努氏(九州大学)と市川大造氏(不二越機械工業)、高木正孝氏(フジボウ愛媛)、優秀賞には業績名「大気圧プラズマを用いたナノメータ精度の形状創成、表面仕上げ、表面機能化技術の開発」で山村和也氏(大阪大学)が、事業賞には業績名「超精密インプリント用金型および型ロール用の快削性が優れた水素吸蔵電析Ni合金めっき技術開発」で野村鍍金が、それぞれ受賞した。

表彰される土肥氏ら表彰される土肥氏ら 大賞を受賞した土肥氏らは、難加工材であるSiC、GaNなど次世代半導体材料の加工に対し、トレードオフとなる加工能力と加工面品位を両立する、ダイラタンシー現象(物体の内部に力が掛かり液体の状態から固体に変化する現象)の生産工学への初の応用となる特殊フィラー活用の研磨パッドと、その特性を最大限に引き出す高速圧加工装置を開発、それぞれ出荷を開始した。これにより、ますますコスト競争力が求められる半導体製造プロセスにおいて、従来プロセスに比べ工数・生産コストを大幅に削減し生産性を高める日本発の技術と産学連携のビジネスモデルを確立したことが評価された。

表彰される山村氏表彰される山村氏 優秀賞を受賞した山村氏は、高価な真空機器が不要で化学的なダメージフリープロセスである大気圧プラズマプロセスにより、超精密無歪形状創成や高硬度難加工材料に対する表面仕上げ、表面機能化を実現する「F3 Technologies」を確立した。特に半導体基板の厚さ分布制御や光学素子の形状加工・平坦化といった形状創成用途で事業化レベルの段階に来ていることなどが評価された。

表彰される野村鍍金表彰される野村鍍金 事業賞を受賞した野村鍍金は、単結晶ダイヤモンドバイトによりナノレベルの超鏡面・超精密切削加工が実現できる、内部に大量の水素を含有した電析ニッケルリンめっき快削材を開発。ディスプレイやLEDなどの精密光学部品を制作する金型や型ロールへの適用ですでに事業化され、日本の産業競争力の向上に貢献していることなどが評価された。

 贈呈式の後はシンポジウムに移行。岩木賞の記念講演として大賞は土肥氏、優秀賞は山村氏、事業賞は野村鍍金の田口純志氏がそれぞれ講演を行った後、以下の会員講演が行われた。

会員講演「マイクロ波励起高密度近接プラズマによる小ロット向けDLC成膜の高速化」篠田 健太郎氏(ブラザー工業)……少量多品種に有効な小ロット向けの高速DLC成膜装置には、真空引き時間短縮化のため低真空でも成膜可能であること、シンプルでコンパクトなチャンバと装置構成、3次元形状部品の表面へ超高速で成膜する技術が必要としてマイクロ波励起高密度近接プラズマ(MVP法)を紹介。同社で開発を進めた結果、180秒でDLC成膜可能なプロセスを開発し、工業用ミシンの実機耐久試験をクリアする品質であることを報告した。

会員講演「粉末冶金の魅力と材料プロセスの基礎検討」岩岡 拓氏(東京都立産業技術研究センター)……粉末冶金の特徴を活かしてマグネシウムの課題を解決する材料とプロセスの基礎検討を行った。ボールミル混合、温間成形、液相焼結の実験を行った上でマグネシウムの優れた特性を得るカギは粉末にあるとして、粉末冶金法がマグネシウム合金プロセスの一つとして期待されるとした。

会員講演「ミュオン顕微鏡の拓く科学」下村 浩一郎氏(理化学研究所)……ミュオン粒子の特性や応用例などについて解説するとともに、物質の最表面や界面の物性を観察できる超低速ミュオンビームを紹介。ハードディスクの機能性を左右している厚さ数nmのDLC保護膜の表面・界面や燃料電池などでの水素の挙動など、トライボロジー分野でも広く適用できる可能性を示した。

シンポジウムのもようシンポジウムのもよう