円筒ころ軸受の内輪軌道面にDLCコーティングを成膜 日本精工は、オフィスビルや工場などの大規模施設の空調設備向けに使用する円筒ころ軸受の内輪軌道面にDLCコーティングを採用した。ターボ冷凍機の圧縮機用として、従来からのアンギュラ玉軸受に新たにDLCコーティングを処理した円筒ころ軸受をラインナップに加え、空調設備のメンテナンス工数低減、軸受の摩擦損失低減による省エネ化、軸受の小型化による省エネ化と省スペース化を実現した。
DLCコーティングを施すことにより、円筒ころ軸受の耐スキッディング性能を向上させ、高速・軽荷重条件で使用されるターボ冷凍機用圧縮機向け転がり軸受への適用を可能にし、信頼性向上、軸受摩擦損失低減を実現した。スキッディングとは、軸受内輪から伝達されるころの駆動が、潤滑油の攪拌抵抗等に阻害され、外内輪軌道面ところ転動面との間ですべりが生じる現象で、早期異常摩耗損傷につながる場合がある。
DLCコーティングの膜構造 採用されたDLCコーティングは密着性を向上させるため、母材の上にCr層、その上層にSiとCの複合層を設け3層構造とした。また、母材への追従性を向上させるためヤング率を母材より小さく設定した。最上層のDLCにはSiを添加して内部応力を低減した。
同社では、「高速回転でも充分な耐はく離性を有する転がり軸受専用DLCコーティングと軸受内部設計の最適化により、高速・軽荷重かつ劣悪な潤滑環境や滑りが大きい使用条件などの厳しい運転下においても、すべりに起因する異常摩耗の抑制を可能にし、優れた耐久性を有する玉軸受を実現した」としている。