レーザ加工+砥粒研磨を施した3D像 不二WPC( http://www.fujiwpc.co.jp/ )は、短パルスレーザによる微細加工装置を導入し、摺動特性に優れた表面テクスチャの形成を行う表面改質処理を開始した。同社が従来から受託加工を行っているWPC処理(ショットピーニング)、DLCコーティング、3Dラッピング(砥粒研磨)などと組み合わせることで、顧客から求められている低摺動化のニーズに対応する。
実用的なパルスレーザには、ナノ秒、ピコ秒、フェムト秒などがあり、パルス幅が短いほど熱的効果が少なくアブレーションが主になってくる。同社が行った鉄鋼材料に対する予備試験では、ナノ秒レーザでは加工痕に酸化と考えられる盛り上がりが観測され、フェムト秒レーザでは加工形状は良好であったが、高価であり維持費も必要とするため、ピコ秒レーザによる表面テクスチャ(ディンプル)の形成について検討を開始した。
試験では、鉄鋼材料(SCM)において鏡面処理、WPC処理、レーザ加工を行った表面に、形状維持のためDLCコーティングを行い摩擦係数を測定した(図)。レーザ加工によるディンプル(数μm~数十μm)を顕微鏡で観察した結果、周囲に盛り上がり(バリ)が確認され、摩擦係数においても充分な特性が得られなかった。このバリは、熱的効果による溶融の影響とアブレーション物質の再付着によるものと考えられるという。
図 各処理にDLCを被覆した表面の摩擦特性:ドライ図 各処理にDLCを被覆した表面の摩擦特性:潤滑油中
そこで同社では、レーザ加工後にバリの除去を行うため砥粒研磨による表面状態の改質を行った。これにより、バリの除去とエッジを丸めることが可能になり、摺動特性に特化した表面を形成することに成功した。レーザ加工後に砥粒研磨を行った表面にDLCコーティングを施したところ、ドライならびに潤滑油中で摩擦係数の低下を実現した(図)。また、摺動初期の摩擦係数が大幅に低下したことも確認された。
同社の熊谷正夫技術部長は「レーザ加工後に3Dラッピング、DLCコーティングを行うことで、初期の摩擦係数が大幅に減少し、摺動部品に適用することで初期なじみが必要ない表面が可能になるかもしれない。レーザ加工は生産性や部品形状の制限もあるが、今後も当社のWPC処理、DLCコーティング、砥粒研磨と複合処理を行うことで広範囲の目的に対応した技術開発行っていきたい」と話している。