ASTEC/SURTECH2016など開催、DLCコーティングや表面試験・評価技術の展示が多数集結
「ASTEC2016 第11回先端表面技術展・会議」や「SURTECH2016 表面技術要素展」、「nano tech2016 第15回 国際ナノテクノロジー総合展・技術会議」、「新機能性材料展2016」など合計11の展示会が1月27日から29日までの三日間、東京・有明の東京ビッグサイトで開催、48514名が来場した。
ASTECとSURTECHでは、めっきやセラミック・DLCコーティングなどの表面改質技術、表面張力・形状・粗さ測定機やCVD装置などの表面処理・計測装置、機能性ナノ薄膜や電磁波シールなどの材料・素材の展示スペースを設け、各分野における最先端の表面改質技術の展示を行った。今回の展示で特に目立ったのは、DLCコーティングに関連する技術と表面試験・評価技術。今回は、この二つに関連する技術を紹介する。
ニューダイヤモンドフォーラムと共同でDLC膜の国際標準化を推進する事業を行っているナノテックは、①DLC膜を4種に分類(カーボン膜全体で6種類)、②DLC膜のボールオンディスク法による摩擦摩耗試験の規格化、③DLC膜の分光エリプソメトリによる光学測定分類、の三つの標準化の進展状況に関しての解説を行い、同事業の周知を図った。この中で先行しているDLC膜の摩擦摩耗試験の規格化については、先日ロンドンで国際会議が実施され、日本が提案した内容について賛成13カ国、反対0カ国で規格FDIS(ファイナルドラフト)が承認されたという。これにより、今年4月頃に「ISO 18535 Diamond-like carbon films -- Determination of friction and wear characteristics of diamond-like carbon films by ball-on-disc method」が正式にISO規格として発行される。
パーカーグループのブースでは、パーカー熱処理工業が、韓国・J&L Tech社製のハイブリッドPVDシステム「CarboZenシリーズ」を出展した。リニアイオンソース(LIS)、UBMスパッタ(UBMS)などプラズマ源の適切な組み合わせにより、耐摩耗、高潤滑、高耐食など適切なDLC膜を成膜できる。CarboZen 1000は6ポート(LISが4ポート、UBMSが2ポート)まで、CarboZen 1200は8ポート(LIS、UBMSが各4ポート)、プラズマ源を配置でき、膜の多彩化や成膜効率の向上などが図れるという。
CarboZenの製造元であるJ&L Tech社は、各種コーティング装置の紹介を行ったほか、新技術としてグラビア印刷ロールにコーティングを行った際に、自動で高速・精密に欠陥検査が可能な装置「ROLLER INSPECTOR」の紹介を行った。従来マイクロスコープで数時間かけて行っていた検査を同装置で行うと、約15分で検査が終了するという。DLCコーティングやクロムコーティングなどの欠陥検査で実績があり、同装置を応用してピストンピンの自動検査にも適用されているという。
トリニティーラボは、1台で薄膜や厚膜、塗膜などの界面特性(付着・破壊強度)と表面特性(摩擦・引っ掻き強度)が測定できる被膜性能評価システム「フィルメータ ATPro 301」の実機を出展した。基材と膜の界面や多層膜における層間界面において、断面にピンで直線摺動させることにより外的応力を加え、膜のはく離、付着強度を測定する。また、10μmから1mm/secと極低速の速度範囲で摩擦係数を測定できるため、静止状態から摺動開始時に起こる試験体の弾性変形や摺動時の飛び跳ね現象を抑えたデータが得られる。このほか引っ掻き強度も測定が可能、摩擦係数との相関解明なども行えるという。
東陽テクニカは、今年1月から取り扱いを始めた米国・ナノメカニクス社製の薄膜硬度計「iMicro-A」を紹介。この硬度計は、最大1N(100gf)の大荷重をカバーしながら、マイクロビッカースでは測定できない1mN(0.1gf)レベルの低荷重で押込み試験が行え、薄膜の硬度・ヤング率を測定できる。同社では、従来から取り扱っているキーサイトテクノロジー社の薄膜硬度計とともに、自動車部品で採用が進んでいるDLC膜やコネクタの電極表面の金属めっき膜、樹脂表面の保護用ハードコート膜などの測定用途に積極的に提案を行っていく。
レスカは、ナノレベルの薄膜の密着強度を定量的に評価する超薄膜スクラッチ試験機「CSR5000」の実機を展示。この試験機は、1μm以下の薄膜の評価に主眼を置いた装置。従来のスクラッチ試験機では、膜表面を引っかいた時の破壊点を摩擦力の変化や音響信号で検出していたが、膜厚がμm以下の薄膜になると破壊の検出が困難となるという。この問題を解決するため、同試験機では薄膜の破壊検出に特化したマイクロスクラッチ法に加え、同社独自の特許技術による高感度破壊検出機構を備え、膜厚が1μm以下の薄膜の密着性を正確に測定できる。同社では、液晶ディスプレイの透明電極膜や光学薄膜、DLC膜、磁気ディスクの保護薄膜等の密着性評価に適した試験機として来場者に対して提案を行った。
展示の他には、ASTEC/SURTECHの会場内において第11回表面技術会議が行われ、「医療等様々な分野に応用される表面・界面技術」、「表面技術により飛躍するプリンテッドエレクトロニクス」の二つのテーマで招待講演が8題行われた。このほかASTEC/SURTECHセミナーとしては、SHUTECH「大気圧プラズマによる表面改質技術~ディスプレイ製造現場で培った量産技術~」、ワイピーシステム「超高密着、高耐熱、省資源を実現した表面処理技術(カラーCB)の紹介」、日本コーティングセンター「DLCの特性と応用展開」、神戸製鋼所「神戸製鋼所におけるPVD事業と新DLCコーティング技術」など、多数の講演が行われ、大勢の聴講者が訪れた。