表面技術協会、第67回通常総会・協会賞など授与式を開催
表面技術協会( http://www.sfj.or.jp )は2月26日、東京・麹町の弘済会館で「第67回通常総会・各賞授与式」を開催した。
当日は第66期事業報告、会計報告が行われた後、第67期事業計画・収支予算について審議、満場一致で可決された。事業報告では、春季および秋季講演大会で合計発表件数409件、登録参加者が1019名であったこと、セミナーとして「めっき液の分析と管理」、「表面処理基礎講座」、「ドライプロセスの基礎と薄膜作製」などを6回開催し、参加者が240名であったことなどを報告した。事業計画では、今期も講演大会を春秋各1回開催することや年3回以上のセミナーの企画および実施することなどを確認した。
任期満了に伴う役員改選では、今期より会長に渡部修一氏(日本工業大学 大学院工学研究科 教授)、副会長に君塚亮一氏(JCU 代表取締役社長兼最高執行責任者)、平藤哲司氏(京都大学 大学院エネルギー科学研究科 教授)が新たに選任された。鷹野一朗氏(工学院大学 工学部 教授)、吉野寛治氏(吉野電化工業 代表取締役)は前期に引き続いて副会長を務める。
会長に就任した渡部氏は「当協会の事業収益は前年度を1割近く上回る良い傾向であると言える。(前々会長の)里見会長、(前会長の)影近会長という会社でマネジメントを発揮されている方が会長になり運営を改善してくださったお陰かと思う。このように、当協会も経済的には良い状況になりつつあるため、新しい理事会としても全力を尽くし踏襲する。ただ、事業収益は上向いているものの会員数は減少している。私が会長を引き受けるにあたって、会員数の増加は特にしっかりと進めていきたい。これまでも皆様が色々と工夫をしてくださったかとは思うが、今一度見直して会員の増強を推し進めていきたい」と就任の決意を述べた。
続いて前期まで会長を務めた影近 博氏(JFEテクノリサーチ 相談役)は「2年間、当時の理事会の絶大なご支援をいただき、目的は達成できたかと思う。収益が大幅に改善された要因は協会の会計方式を改訂したことにある。当時は事業単位の損益が分からない状況で、どこに問題があるか分からずに赤字が続いていた。これを会計方式から改めて、問題がどこにあるかが非常にクリアになった。それが協会全体に共有できたことが最大の力になったと思う。今期以降、前期のような状態が続く保証はなく収入や経費の面などにおいて毎年課題が出てくる。理事をはじめとする会員の皆様が協会を盛り上げていこうという気持ちでやっていけば明るい未来が待っていると思う」と退任の挨拶を述べた。
当日の席上では、「平成28年度表面技術協会―協会賞・功績賞・論文賞・技術賞・進歩賞・技術功労賞―授与式」行われ、藤原 裕氏(大阪市立工業研究所 研究フェロー)が業績「環境調和めっき技術の開発と応用に関する研究」で協会賞を受賞した。藤原氏の業績は、環境に調和するめっき技術の開発に関するものでシアンフリー、鉛フリーなどの環境調和めっきプロセスの実用化を図るとともに、それらのめっき析出機構・皮膜特性等に関する傑出した学術的業績を上げた。特に、シアンフリー浴からの銅-亜鉛合金めっきは、装飾用として幅広く実用されている。また、RoHS指令によるはんだの鉛フリー化に対応する表面処理として、スズ/銀ナノ粒子複合めっきを開発した。これはその後、無電解めっき用銀ナノ粒子触媒の開発を経て、広くエレクトロニクス実装の分野におけるめっき技術の革新につながった。
また、技術賞では金子秀昭氏(カネコ技術士事務所 代表)ら8名が「電着による陽極酸化皮膜上への薄膜樹脂潤滑皮膜の形成」で受賞。この技術は、自動車や機械部品の軽量化の流れの中で、アルミニウム合金材料へのニーズが高まっている背景において硬度、耐摩耗性向上を可能とする陽極酸化皮膜に対して、潤滑性付与を可能とする固体潤滑処理技術。開発技術は、ポリテトラフルオロエチレン樹脂(PTFE)粒子固着法と呼ばれる方法に分類されるが、従来、この方法では皮膜の密着性に難があり、その応用展開への障害となっていた。開発技術は、シランカブリング剤の作用・機能を的確に利用することにより、密着性の高い潤滑性に優れた耐摩耗性陽極酸化皮膜の作製を可能とした。
受賞者、業績などの一覧は以下のとおり。
協会賞
・藤原 裕氏(大阪市立工業技術研究所 研究フェロー)
業績「環境調和めっき技術の開発と応用に関する研究」
功績賞
・伊藤 叡氏(新日鉄住金マテリアルズ 顧問)
・久米道之氏(名古屋産業振興公社 プラズマ技術産業応用センター エグゼクティブアドバイザー)
論文賞
・是津信行氏(信州大学 環境・エネルギー材料科学研究所、信州大学 工学部 准教授)、山村和也氏(大阪大学 大学院工学研究科 附属超精密科学研究センター 准教授)、井筒祐志氏(新日鐵住金 八幡製鐵所 設備部)、我田 元氏(信州大学 工学部 助教)、大石修治氏(同 教授)、手嶋勝弥氏(同 環境・エネルギー材料科学研究所、信州大学 工学部 教授)
題目「プラズマプロセスを援用した高接着性ポリテトラフルオロエチレン/エポキシ樹脂/SUS304界面形成技術」
(表面技術 第65巻 第5号 227~233頁)
技術賞
・金子秀昭氏(カネコ技術士事務所 代表)、前嶋正受氏(前嶋技術士事務所 所長)、鈴木清隆氏(ECO-KS技術士事務所 所長)、菊池 哲氏(アルミ表面技術研究所 代表取締役)、土屋正一氏(同 コンサル部長)、遠藤 哲氏(同 研究員)、田島 薫氏(田島製作所 代表取締役社長)、市川 宏氏(同 技術部長)
業績「電着による陽極酸化皮膜上への薄膜樹脂潤滑皮膜の形成」
進歩賞
・中島 隆氏(日本パーカライジング 総合研究所 第一研究センター 研究主任)
業績「電解プラズマ酸化処理における処理液中の金属酸素塩の影響」
(表面技術 第65巻 第6号 283~288頁)
技術功労賞
・村上良吉氏(JFEスチール スチール研究所 研究企画部 総務室 主任部員)
・山下和美氏(JFEスチール スチール研究所 製鋼研究部 作業長)
・丹羽 富士雄氏(三進製作所 生産本部)
・廣瀬仁士氏(日鉄住金テクノロジー 分析・研究試験部 研究試験課 班長)
・内田政義氏(日鉄住金テクノロジー 鹿島事業所 材料評価部 開発試験課 係長)