ミズノは、特殊な表面処理を行ったカーボンナノチューブ(CNT)を利用した炭素繊維強化プラスチック(CFRP)材料の衝撃強度を向上させることに成功した。これまで困難とされてきたCNTとCFRPの複合化を、CNTの分散性向上によって実現したもので、初の応用先としてゴルフクラブを製品化する見込み。同社は、今後、ラケットやバットなどスポーツ分野への展開を図るとともに、将来的には産業分野への応用拡大を目指す。
図1 CNTの分散状態比較
CFRPとCNTの複合化には、CNTの凝集による不均一化が課題だった。同社は、CNTの新規の表面処理技術を利用し、CNTの分子間力の緩和による分散性の向上を実現した。さらに、CNTに付与されたエポキシ樹脂と親和性の高い官能基により、エポキシ樹脂との分子間力の向上を実現させた(図1)。
図2 界面はく離の比較図
CFRPは炭素繊維とマトリックス樹脂の間に界面が存在するため、衝撃を受けた時に界面はく離が破壊起点となる。今回利用したCNTがマトリックス樹脂内に均質に分散し、CNTに付与された官能基がエポキシ樹脂と炭素繊維の間の強度を高めることに寄与し、界面はく離を抑制していると考えられるという(図2)。
今回、同社は、このCNTを少量添加するだけでCFRPの特性を大きく向上できることを見出した。実際にゴルフクラブを試作して製品レベルの試験を実施したところ、同じ肉厚の従来品に対して衝撃強度を13%向上できた。肉厚を増やさずに衝撃強度を向上できる今回の成果は、今後の製品開発に大きく寄与することになるという。
今回のCNTの新規表面処理技術はNEDOプロジェクトで実現し、東京大学(工学系研究科 坂田研究室)とナノサミットからミズノに提供されたもの。また、新規CFRP材料の作成には、ミズノは東邦テナックス、神戸天然物化学の協力を得た。