図1 TRILAB 静・動摩擦測定機 TL201Ts トリニティーラボ( http://www.trinity-lab.com/ )は、摩擦・摩耗・引っ掻き・触覚・はく離評価を可能とする独自の測定機構と解析ソフトを有した摩擦摩耗試験機「TRILAB 静・動摩擦測定機 TL201Ts」(図1)の拡販を開始した。ここでは、同試験機における摩擦摩耗の評価システムと測定事例について紹介する。
多目的、高精度測定を可能とした測定機構
同装置の測定機構には、安定した垂直荷重を付与できる天秤機構を採用し、一端に各種接触部材を直接設置できる摩擦力検出部を、もう一端にはウェイトバランスを取ることができる分銅を設けている。測定を行う際、二つの物質の接触点と摩擦力検出部が直結されているため、機差や測定者の技量に左右されず、測定時の慣性力、各部品の歪み、振動等測定時の悪影響を回避している。このため、静止状態から摺動開始時までの静摩擦発生現象、動摩擦領域でのスティックスリップ現象の測定などを忠実にデータ化することが可能となっている。
また、この天秤機構と直交方向に摺動する移動テーブルが設置されている。これにより、往復摺動による耐摩耗性評価の際、往路でプラス出力、復路でマイナス出力の摩擦係数を各々記録することができ、機械的な測定誤差を回避している。天秤機構と移動テーブルが平行の場合は、往路、復路での誤差が考えられ、支点方向に向かう測定時には、摩擦面の巻き込み現象が発生する可能性があり、過度のスティックスリップの発生や最悪の場合は機器の破損も推測されるという。
測定機構と直線往復摺動部は、ともにユニット化されており分離が可能である。そのため、直線往復摺動からオプション対応の回転テーブルに変更が可能で、ピンオンディスク、ボールオンディスクの測定も安価で容易に可能となっている。
耐摩耗性測定例
耐摩耗性評価には、回転テーブルを用いた測定法と直線往復摺動法がある。ここでは、同社独自の解析ソフトによる直線往復摺動の測定例を紹介する。
加熱液中の試験体に対してφ6mmボール接触子を用いて、垂直荷重1kg、摺動速度10mm/sec、摺動距離10mm、2000往復の摩擦係数のデータを収集した。図2は、2000往復すべてのデータを表示しており、下段には、矢印部分を拡大した波形を示している。この拡大した波形から前記の通り、往復の摩擦係数で往路のプラス出力と復路のマイナス出力が等しく、機械的な測定誤差が生じていないことが分かる。使用したTRILAB解析ソフトには、摩耗による摩擦係数の変化を定量的に把握できる機能を有している。上図に表示している外部入力である加熱液温度は2系統まで選定できる。主に耐摩耗性評価の際は、接触部材近傍にレーザ変位計を設置して摩耗による摩擦係数の変化とともに摩耗量(μm)の測定も可能となっている。図3は、測定した往路(プラス出力)の1波形ごとの所定範囲内(任意に設定可能)での平均動摩擦係数をプロットして波形を作成したものである。これにより摩耗の開始点、動摩擦係数の変化値を容易に把握することができる。
図2 直線往復摺動耐摩耗性測定図3 平均動摩擦係数の推移