トライボコーティング研・ドライコーティング研、2016年度合同技術研究会を開催
トライボコーティング技術研究会とドライコーティング研究会は7月29日、東京都板橋区の板橋区立グリーンホールで、「第9回トライボコーティング・ドライコーティング合同技術研究会」を開催した。今回は、理研シンポジウム第9回「先進ものづくり技術によるアナライザーキーコンポーネント開発基盤の構築状況」として、また、トライボコーティング技術研究会2016年度第2回研究会を兼ねての開催となった。
会の冒頭、挨拶に立った板橋区産業経済部部長の細井榮一氏は「板橋区は古くから各種の光学機器メーカーが立地し、地場産業として地域産業をリード。現在も光学技術を活かし、国内・世界のトップシェアを占める大手企業のほか、研究・開発で日本の最先端技術を支える中小企業などが集積している。近年ではトライボコーティング技術研究会会長を務める理化学研究所・大森 整氏の研究室や青色LEDでノーベル賞を受賞した中村修二氏のベンチャー企業なども誘致され、光学分野の研究開発拠点として、ますます存在感を強めている。引き続き研究者や技術者との協業によって経済の活性化を推進していきたい」と述べた。
また、ドライコーティング研究会から山田 猛氏(近畿高エネルギー加工技術研究所(AMPI))が挨拶に立ち、「AMPIでは①所有する各種のレーザ装置やプラズマ装置を利用した加工技術や表面改質技術の研究開発、②中小企業の技術支援、という二つのミッションを通じてニーズとシーズを常に探っている。材料を制する者は技術を制すると言われるが、コーティング技術は材料に各種の特性を付与し高機能化させ、ひいては高度な新製品開発につながる重要な技術。本日は将来の優れた製品開発につながるような有益な情報交換の場となることを期待している」と述べた。
「AIH-FPPによる金属間化合物コーティング」小茂鳥 潤氏(慶應義塾大学 教授)…ワーク表面に微粒子成分を移着・拡散させる効果を持つ雰囲気制御高周波誘導加熱微粒子ピーニング(AIH-FPP)を用いて、燃焼合成反応によりNi-Al金属間化合物被膜を表面に創製、900℃の高温での長時間の耐酸化性やビッカース硬さ700HV程度と高硬度(高い耐摩耗性)を付与できることを示した。
「斜投射微粒子ピーニング(Angled-FPP)による周期的微細構造の形成を通した機能性表面創製の可能性」亀山雄高氏(東京都市大学 准教授)…投射角度や投射時間など斜投射微粒子ピーニング(FPP)の加工条件の選定による周期的微細うね構造の制御とELID研削によるうね構造頂部の平坦(プラトー)化の適正化で、すべり初期の摩擦係数の低減や安定化、さらにはELID研削工程での置換めっき作用(銅の析出)などを実現できる可能性を示した。
「プラズマ窒化法および放電プラズマ焼結法を応用したプラズマ表面硬化処理技術」西本明生氏(関西大学 教授)…ワークの周りに金属製スクリーンを置き、これを陰極としてスクリーン表面でプラズマを発生させるアクティブスクリーンプラズマ窒化法により、DCプラズマ窒化法で問題とされた端部への放電の集中(エッジ効果)などを回避できることを示したほか、窒化層形成に及ぼす表面堆積物層の影響についての研究を紹介した。また、SPS法によるFe-Al金属間化合物の圧膜被覆によって耐酸化性や硬度を改善できる可能性を示した。
講演会終了後には、トライボコーティング技術研究会から大森 整会長(理化学研究所)が挨拶に立ち、「近年、鏡面よりもザラザラにした表面を利用するような研究が増え、鏡面加工のためのELID技術でも、格子状パターンを形成できないかといった委託研究も少なくない。本日講演の研究テーマもまた、こうした時代の変化を反映したものだと思う。進みつつある3Dプリンタによる製品開発においても、コーティング、表面処理は重要な技術で、今後ますますユニークなモノづくりに活用されていくものと思われる。来年は、合同技術研究会も、アナライザーキーコンポーネント開発基盤の構築 理研シンポジウムも10年目を迎える。引き続き、新技術の発信と情報交換の深化に期待したい」と述べて、閉会した。