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SEMICON Japan 2024

 

ヤマシタワークス、DLCの前後処理にエアロラップ処理を提案強化

 ヤマシタワークス( http://www.yamashitaworks.co.jp/ )は、独自開発の鏡面研磨技術「エアロラップ工法」について、DLCコーティング成膜の前後処理への提案を強化している。自動車の燃費向上に適用の進むアルミ材料の加工向け工具や低摩擦・耐摩耗性を高めたい機械部品などに、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)コーティングの需要が高まっており、こうした需要の高まりに対応する。

 エアロラップ工法は、ゼラチンを主成分とした食品性研磨材を核に、水分「マルチリキッド」を含有することで弾力性・粘着性を持たせダイヤモンド砥粒を複合させた研磨材「マルチコーン」を、被加工材(ワーク)表面を高速で滑走させて発生する摩擦力によって磨くもの(図1)。乾式と湿式の中間的な湿潤状態で、相手材にダメージを与えることなく、精密研磨、最終仕上げや鏡面仕上げを可能にしている。

図1 エアロラップ工法図1 エアロラップ工法

 エアロラップ工法は通常の手法では磨くことが難しいエンドミルやチップ、ホブカッタなど切削工具の表面やフロート溝、切削屑排出溝など複雑形状のワークも磨くことができる。そのため、適用の広がるアルミ材料の加工において溶着を防止するDLC被覆工具で、コーティングの前後処理にエアロラップの適用が進んできている。これは、エアロラップ処理をDLCなどPVD処理の前後に行うことで、以下のとおり、課題となっていた被膜の密着性改善のほか、コーティングの摩擦抵抗低減などを実現できるためだ。

・密着性改善
 北嶋らは基礎実験を実施、工具すくい面の研削面粗さが小さくなるほどコーティング膜の密着強度が増大する、との結論を得ている2)。窒化とDLC などPVDコーティングとの複合処理の際には、窒化による化合層を除去することも容易で、密着性向上のための中間加工としても使用できるという。

・コーティングの摩擦抵抗低減
 エアロラップ処理はまた、成膜後のドロップレットを除去してコーティング表面を滑らかにすることで、摺動性や金型の離型性を向上できる。金型にTiNコーティングを施した際にRa0.195μm だった表面粗さが、エアロラップ処理で30秒間加工することRa0.038μmと約1 / 5に面粗度が向上している(図2)。

図2 エアロラップによるPVD膜の面粗度向上図2 エアロラップによるPVD膜の面粗度向上

 エアロラップ処理によるDLCコーティングの摩擦低減効果の例では、空気圧シリンダや油圧ダンパを用いたインテリジェント義肢のロッドで摩擦低減を目的に適用されているDLCコーティングを、エアロラップ処理でコーティングの面粗度を向上してさらに低摩擦化、より滑らかな動きを実現することによって、義肢の運動機能を高めることに成功している。


 ヤマシタワークスでは、エアロラップによってDLCコーティングの特性向上につなげることで、DLCコーティングの適用拡大に貢献したい考えだ。

参考文献
1)特開2015-105667(P2015-105667A):転がり軸受における軌道輪の製造方法.
2)古野真弘、北嶋弘一、佃陽介:工具母材表面粗さがPVD コーティングの密着特性に及ぼす影響、砥粒加工学会誌 Vol.54 No.11,2010 NOV.666-671.