シェフラーグループは、ドイツ・ヘルツォーゲンアウラッハ本社の表面技術能力センターを拡張し、コーティング技術の研究開発および応用のための設備を拡充した。高品質のコーティングを施した部品の需要増に迅速に対応するため、量産能力の拡大も図っている。
2007年に開設された表面技術センター。コーティング加工部品の売り上げはここ数年で50パーセント以上の伸びを示しているという。同グループでは現在、顧客の要請に応じて、個別あるいは組み合わせで使用される部品やシステムの表面を最適化するコーティングを幅広く提供している。コーティングは、たとえば部品の寿命延長、フレッチング腐食や腐食の防止、電気絶縁などの効果をもたらす。さらに、摩擦、スリップに起因する損傷、摩耗などを最小にすることもできる。最新開発の技術ではセンサー層のコーティングも可能になった。
同グループが開発したTriondurコーティングシステムは、最先端の真空技術を生かし、PVD(物理的蒸着)とプラズマCVD(化学的蒸着)を用いて生産されている。薄膜の厚みが約2µmでも非常に高い硬度が得られるTriondurは、耐摩耗性向上と摩擦低減の用途で使用されている。これにより、部品とシステムの寸法や設計を変えることなく特定のアプリケーションを最適化できるという。この技術によりダウンサイジングの目的でも使える。つまり、部品の寸法を変えずに性能を向上させたり、負荷が同じ場合には部品を小型化してコスト効率を上げたりできる。
同グループでは、Triondurコーティングを施した部品を2010年だけで7000万個以上供給したという。具体例として、Triondur Cというタイプがあるが、これは炭素ベースの硬質コーティングで、摩損や付着摩耗に対して高い耐性を提供し、同時に摩擦を最小限に減らす。スチールに対する乾燥摩擦は最大80パーセント削減されるという。また、Triondur Cは特殊な被膜構造の効果で、たとえば転がり軸受などにおける高い接触圧力に耐える。典型的なアプリケーションとして、抄紙機用の球面ころ軸受や、印刷業界で使われるトラックローラーがある。自動車産業では、バルブトレイン用のタペットに加えて支持要素、フィンガーフォロワー、コントロールピストンなどにTriondurコーティングが採用されている。新開発のTriondur DLCコーティングシステムはそれぞれの部品の動作条件に正確に適合させることが可能で、カムシャフトとタペットの間の摩擦を最大50パーセント削減することに成功した。これにより、エンジンの出力ロスとCO2排出量が大幅に削減できるという。