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第9回ものづくりワールド名古屋

 

山梨大学、固体高分子形燃料電池向けの高性能な非フッ素系電解質膜を開発

 山梨大学は、固体高分子形燃料電池向けの高性能な非フッ素系電解質膜の開発に成功した。開発した電解質膜は、非フッ素系の中で耐久性に優れる炭化水素系の高分子構造に着目し、分子レベルで組成比を最適化することにより、これまで課題の一つであった化学耐久性を飛躍的に向上させることに成功した。

開発した非フッ素系電解質膜開発した非フッ素系電解質膜

 燃料電池は、水素と空気中の酸素(供給ガス)を触媒上で反応させて、水を生成する際に発生するエネルギーを電力に変換するシステム。近年、高エネルギー変換効率、低公害の発電装置である燃料電池は、エネルギーや環境問題解決の観点から注目を集めており、固体高分子形燃料電池(PEFC)は家庭用燃料電池(エネファーム)やFCVとして実用化された。PEFCで用いられる電解質膜は、主にフッ素系電解質膜が広く利用されているが、供給ガス透過性、環境適合性、コストなどが課題となっている。一方で、これらの課題を克服できる新たな電解質膜として構成元素にフッ素を含まない炭化水素系電解質膜の可能性が検討されてきたが、成膜性、化学耐久性、機械特性(特に柔軟性)に課題があり、これまで燃料電池への応用は困難だと考えられてきた。

 開発では、極めて耐久性に優れる炭化水素系高分子であるポリフェニレン構造に着目し、分子レベルで組成比を最適化することにより新たなポリフェニレン電解質(SPP-QP)を合成し、これが透明で柔軟な薄膜を形成し化学耐久性にも優れるということを見出した。化学耐久性はフェントン試験を実施し、従来開発していた炭化水素系電解質膜と比較して、酸化に対して非常に安定であることを示した。また、SPP-QP電解質膜を燃料電池に搭載した場合の初期発電特性は、現行のフッ素系電解質膜と比較して同等であることが確認された。

 今回の成果により、PEFCの作動条件下でも高い性能を発揮できる非フッ素系電解質膜の分子設計指針が見出されたことになり、今後、この設計指針をさらに発展させて展開していく。