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第9回ものづくりワールド名古屋

 

DLC工業会、設立記念講演会を開催

 DLC工業会( http://dlck.org/ )は11月10日、東京都目黒区の東工大蔵前会館で、同工業会設立記念講演会「DLCの国際標準化と最新産業応用」を開催した。

挨拶する中森氏挨拶する中森氏 冒頭、挨拶に立った中森秀樹会長(ナノテック 代表取締役社長)は、前身であるニューダイヤモンドフォーラム(NDF)内部組織から同工業会設立までの経緯を述べた後、「平成28年3月にDLCの摩擦摩耗試験法がISO18535として登録、また今年の9月にはDLC膜の分類がISO20523に登録された。今後、DLC膜の密着性評価やエリプソメータによるDLC膜の特性評価などのISO登録を目指している。個人的な見解ではあるが、二つのISO規格が登録されたことにより、DLC産業への新規参入企業の技術的障壁が多くの面で緩和されると考えている。また既存のDLC企業の効率的な企業運営が可能になると考えており、結果として国内におけるDLC業界の信頼性向上や、世界における日本のDLCのプレゼンスの確立につながると確信している」と続けた後、DLC関連企業(成膜装置メーカー、受託加工企業、DLCユーザー)や薄膜評価分析関連企業などDLCに関心がある企業に入会を呼び掛けた。

講演を行う大竹氏講演を行う大竹氏 基調講演では、大竹尚登氏(NDF DLC規格化委員会 分類標準化WG主査:東京工業大学 教授)が「DLC国際標準化―カーボン膜の分類規格を中心として―」と題して登壇。今年9月にISO20523に登録されたカーボン膜の分類に関して解説した。同規格では、メイングループとしてPolymer-like carbon filmsとAmorphous carbon films、Crystalline carbon filmsの三つに分類。アモルファス炭素膜に分類されるDLCは、Hydrogen-free amorphous carbon films(a-C)、Tetrahedral hydrogen-free amorphous carbon film(ta-C)、Metal-containing hydrogen-free amorphous carbon film(a-C:Me)、Hydrogenated amorphous carbon film(a-C:H)、Tetrahedral hydrogenated amorphous carbon film(ta-C:H)、Metal-containing hydrogenated amorphous carbon film(a-C:H:Me)、Modified hydrogenated amorphous carbon film(a-C:H:[X])で構成されると解説した。その上で縦軸にsp3/sp3+sp2比率、横軸に水素比率で構成されるISO20523に準拠した炭素膜の分類図と注意点を示した。

 講演を行うシュピンドラー氏講演を行うシュピンドラー氏続いてシュピンドラー千恵子氏(同工業会 監事:ナノテックシュピンドラー 代表取締役)が「DLCの国際標準化に関わる国際調整」で講演。DLC工業会の生い立ちから現在までの標準化に関する活動内容について述べた。同工業会の前身は、(一社)ニューダイヤモンドフォーラム(NDF)内に設置されたDLC標準化特別委員会で、DLCの国際標準化に関する実務を行う組織として活動。DLCに関わる標準・規格化に必要な情報交換、国内外の諸機関との意見交換・調整などを平成25年度から行ってきた。特別委員会で主に取り組んできたISO標準化の具体的な内容は、①DLC膜の分類②DLC膜のボールオンディスク法による摩擦摩耗試験の規格化③DLC膜の分光エリプソメトリーによる光学特性分類――だが、摩擦摩耗試験は2016年3月、分類は今年9月にそれぞれISO18535、ISO20523として登録に至っている。講演では、これらが結実するまでの国際調整の現実や現在取り組んでいるDLCの光学特性評価法の進行状況などについて解説した。

講演を行う川口氏講演を行う川口氏 引き続き、川口雅弘氏(東京都立産業技術研究センター)が「ISO18535に向けた公設試験場の取組み」で講演。各都道府県に設置されている公設試験研究機関(公設試)が産業技術総合研究所とともに行っているドライコーティング膜における摩擦摩耗試験のラウンドロビンテストについて報告した。テストは、DLC膜とCrN膜についてボールオンディスクによる摩擦摩耗試験および被膜評価試験を各公設試で行った。この試験結果における摩擦試験結果(平均値まとめ)、摩耗率結果(平均値まとめ)、各試験機関における摩擦摩耗試験結果をもとに行ったZ検定(正規分布を用いる統計学的検定法)などを示し、それぞれ解説を行った。今後、同試験のガイドラインを作成するなどして公設試間の評価結果が相対比較できる環境の整備を目指すとした。

講演を行う平塚氏講演を行う平塚氏 さらに平塚傑工氏(同工業会 技術委員会:ナノテック 表面分析センター 試験所長)が「DLC評価試験のISO規格とDLC工業会での規格適合承認制度」と題して同工業会において実施している試験規格の内容や今後の予定について解説した。ISO18535では、同規格を使う制度としてDLCコーティング性能に関してISOまたはJIS規格に準拠した試験を実施し測定結果から得られるコーティング性能を有していることを確認し、承認する制度を準備していることを報告。承認を希望する企業や団体などのDLC膜の性能に関する報告書が規格に準拠した試験を客観的に証明できる報告書とするため、トレーサビリティーの確立を行っていくとした。また、現在規格提案が進められている分光エリプソメトリー試験を含む基準片の1次標準を工業会で保有する案や、スクラッチ試験によるDLC膜の密着性試験のラウンドロビンテストなどを予定していることを発表した。

 こうしたDLCにおける国際標準化の動向のほか、鳩野広典氏(TOTO 総合研究所 主任研究員)による「DLCコーティング商品『お掃除ラクラク鏡』」、鈴木哲也氏(慶應義塾大学 教授)による「DLCの医療機器への応用」、馬渕 豊氏(日産自動車 主担)による「自動車を取り巻く環境とDLCの貢献」、大塚電子、平和電機、リックスによる「工業会会員企業技術紹介」の講演を実施、DLCコーティングの産業応用に関する発表も併せて行われた。
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