日新電機( http://nissin.jp/ )と奈良先端科学技術大学院大学との共同研究グループは、同社で開発したICP(誘導結合プラズマ)スパッタ装置を用いて成膜したIGZO膜への加熱処理を必要とせずに、薄膜トランジスタ(TFT)の閾値電圧を制御する技術を開発した。これにより耐熱温度の低い樹脂フィルム上にディスプレイを作ることが可能となり、今後、折りたたみができるフォルダブルスマートフォンや、薄くて軽く、丸めることができるシート状の大画面有機ELテレビなどのフレキシブルディスプレイの量産拡大が期待できるという。
TFTにおいて一般的には、閾値電圧を0V付近から正にした状態が望まれているが、IGZO-TFTの閾値電圧を正にするためには、従来、TFT作製プロセス時に300℃以上の加熱処理プロセスが必要だった。しかし、同社ICPスパッタ装置を用いることで、150℃と低い加熱温度でも閾値電圧が正となることを確認していた。
今回、ICPスパッタ装置で作製するTFT構造と成膜時のプロセス条件を工夫することで、加熱処理プロセスを必要とせず、室温作製でIGZO-TFTが動作し、かつ閾値電圧を正に制御することに成功した。