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第11回岩木賞に、愛知工業大学・旭サナック・九州大学、信州大学・榊 和彦氏、東京電子・岡山理科大学が受賞

 トライボコーティング技術研究会、未来生産システム学協会(NPS)などからなる岩木賞審査委員会は、「第11回岩木トライボコーティングネットワークアワード(岩木賞)」を発表した。今回は、愛知工業大学・旭サナック・九州大学が共同で業績名「脱真空回転霧化式二流体スプレー法を用いた三次元スタック構造半導体デバイスへのコンフォーマル成膜技術」により、岩木賞初となる優秀賞・事業賞の同時受賞に輝いた。また、信州大学・榊 和彦氏が業績名「コールドスプレー法の基礎研究と適用事例の開発」で特別賞を、東京電子と岡山理科大学が共同で業績名「高機能成膜を実現させるアーク抑制型HiPIMS電源の開発」で奨励賞を受賞した。

 優秀賞・事業賞同時受賞の業績「脱真空回転霧化式二流体スプレー法を用いた三次元スタック構造半導体デバイスへのコンフォーマル成膜技術」は、間口数十マイクロメートルオーダのシリコン貫通電極穴(TSV)壁面に対して、スピンコート法と真空技術を組み合わせた従来手法(ギャップフィル)の、貫通孔壁面にフォトレジストを成膜できない、滴下したレジストの数%しか成膜されないといった課題を、新開発の回転霧化式二流体スプレー装置で解決したもの。スプレーする液滴サイズや飛行速度を独立に制御でき最適なTSV成膜条件を出せる回転霧化式二流体スプレー成膜装置を開発したこと、また、半導体製造プロセスで嫌悪される金属コンタミネーションやパーティクルが発生しない世界初の小型樹脂製回転霧化式スプレーノズルを用いて、脱真空により孔壁面へのコンフォーマルな成膜を可能にするTSV成膜プロセス技術を開発したこと、さらに同装置によるTSV成膜データを基に半導体デバイスメーカーへ本装置を販売した実績を有し、実用化に成功していることなどが評価された。

 特別賞の業績「コールドスプレー法の基礎研究と適用事例の開発」は、榊氏が1999年からアジアおよび圏内においてコールドスプレーの研究開発を先駆けて行い、圧縮性流体力学に基づくコールドスプレーのノズルの設計指針を示し、実際に試作装置を用いて圏内発の金属皮膜を作成したことや、その後も継続的にコールドスプレーのノズル形状に関する基礎研究、成膜のメカニズムや皮膜特性に関する研究などを行い、国内外の学会で研究発表を行いながらセラミック基板への金属皮膜の成膜といったアプリケーションの開発も行い、常にコールドスプレー研究の第一線に立ち,長年に亘り当該技術の実用化に努めてきたことなどが評価されたもの。

 奨励賞の業績「高機能成膜を実現させるアーク抑制型HiPIMS電源の開発」は、高硬度・高平滑性・高密着強度の成膜を可能にするHiPIMS(大電力パルスマグネトロンスパッタリング)における、大電力ゆえのアーク異常放電の発生や、OFF 時間の長さゆえの成膜レートの低さ(生産効率の悪さ)といった問題点を、HF(High Frequency)パルスを採用したHiPIMS 電源によって解決し高機能成膜を実現するもの。従来のHiPIMSパルス波形の中に①予備放電波形、②メイン放電波形、③HFパルスの三つの波形を組み合わせることで、HiPIMSのデメリットと言われてきた成膜レートの低さを改善しつつ、欠陥成膜の原因であるアーク異常放電の抑制を実現。これによって、密着性が問題視されるDLC膜を高密着に高いレートで成膜できるようになることで、DLCの各種産業での適用拡大に寄与できることなどが評価されたもの。

 第11回岩木賞の贈呈式と受賞業績の記念講演は、2019年2月22日に理化学研究所 和光研究所 鈴木梅太郎記念ホールで開催される「理研シンポジウム:第21回トライボコーティングの現状と将来」で行われる予定。