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SEMICON Japan 2024

 

高機能トライボ表面プロセス部会、女性研究者を講師に第12回例会を開催

 表面技術協会 高機能トライボ表面プロセス部会(代表幹事:名古屋大学・梅原徳次氏)は12月7日、岐阜県岐阜市の岐阜大学サテライトキャンパスで、「第12回例会:トライボロジーと表面技術」を開催した。今回の企画では、大学・企業で活躍する女性研究者による「トライボロジー、分析、表面技術」に関する5件の講演がなされた。
第12回例会のもよう第12回例会のもよう

 当日はまず梅原代表幹事が、「表面技術協会で当部会が発足してから今年は部会の最終年度となる5年目を迎えるが、当部会は通算で12回の例会、今年でも4回の例会、1回のシンポジウム、1回のセミナーと、上坂裕之・庶務理事(岐阜大学)をはじめとする幹事の方々の積極的な働きもあって、非常にアクティビティーが高いため、来年度以降も継続できるものと思う。本日も活発な討論をお願いしたい」と開会の挨拶を述べ、続いて、以下のとおり講演がなされた。
挨拶する梅原氏挨拶する梅原氏

・「新規大気圧マイクロ波プラズマ源の開発と応用」鈴木陽香氏(名古屋大学)…低温で薄膜形成・表面改質・材料加工などのプロセス実現が可能で、必要に応じ物理効果を付与しつつ、薬品を多用せず環境負荷が小さいといったプロセス装置として多くのメリットを持つプラズマプロセスだが、プロセス中の気相・表面反応を充分理解して、各産業のプロセスに最適なプラズマ装置を検討する必要があると述べた。その後、フィルムなどの大気圧プラズマ処理を事例としてマイクロ波を用いた大気圧処理装置と、大気圧マイクロ波プラズマによる表面改質の事例として、長尺プラズマによる大面積PETフィルム親水化処理など、産業応用に向けた取り組みについて紹介した。
鈴木氏鈴木氏

・「切削工具用コーティング技術の開発」阿部麻衣子氏(神戸製鋼所)…高耐酸化性と低熱伝導率を持つホブ用新被膜NS/R(TiCrAlSiYN)を開発。一条ホブを用いた模擬試験から従来のTiAlN膜に対し切削性能を大幅に向上できたことを報告した。また、プラズマの磁場制御により基材へのイオン照射を最適化し残留応力を低減して厚膜形成を可能とする新型アーク蒸発源SFC(Super Fine Cathode)による鋳鉄切削用TiAlN厚膜を用いて、CVDコーティング使用領域での旋削試験評価を行った結果、TiAlNバイアス多層構造にすることで単層膜よりも切削性能が向上することや基材表面粗さが切削性能に影響を及ぼすこと、また、PVD厚膜TiAlNコーティングがCVDに対し約1.5倍の性能を達成できたことを報告した。
阿部氏阿部氏

・「各種固液界面分析に基づくトライボロジー現象の理解と展望」平山朋子氏(同志社大学)…エネルギー効率の高い表面を作る上では特に境界潤滑域での摩擦係数の低減が喫緊の課題として、固液界面分析に基づく添加剤設計の最適化に向けた、中性子反射率法(NR)やFM-AFMによる界面に形成される添加剤吸着層の分析事例を紹介。境界潤滑下における摩擦係数に大きな影響を及ぼす添加剤吸着層は、高圧力や外部刺激など環境に応じて成長(多層化・厚膜化)するため、添加剤吸着層のナノトライボロジー特性を調べ、構造と摩擦係数の関係性を把握することが重要と述べた。トライボロジーはミクロな構造とマクロな摩擦特性に直接的な相関があり、量子ビーム分析を用いたメカノオペランド(操作環境下)分析の格好の対象場であるとして、トライボロジーにおける分析対象例として、NRによる高せん断場(摺動中)での境界潤滑層の挙動分析の例などを紹介した。
平山氏平山氏

・「金型向けPVDコーティングにおける当社の取り組み」天野友子氏(清水電設工業)…TiAlNの切れ味を進化させ被膜高度を高めた耐摩耗性と密着性を高めた金型向け多元素系PVD被膜ZERO-Ⅰの特徴を紹介、使用環境に対応する被膜の選定が必要と述べた。また、こうした高硬度被膜の密着性を高めるには基材の表面粗さや基材表面の洗浄・ボンバード処理を最適化することが必要とした。そのため、表面を平滑化する過程で表面の汚れを除去するとともに、表面の平滑化で被膜の破壊起点を減らす前処理(ラッピング)が重要で、今後はラップ技術の伝承(職人の育成)が必要だと強調した。
天野氏天野氏

・「DLCのための分析評価」西村智椰氏(堀場製作所)…DLC膜中の水素検出ができ深さ方向の元素分析ができるGD-OES(グロー放電発光分光装置)の測定原理について解説し、計測ユーザーにとって、計測結果のより深い理解の手助けとなるようなGD-OES装置の脱ブラックボックス化(スパッタ手法や多元素同時分析の分光・検出系など装置内で行われていることの開示)を試みた。さらに、DLC成膜における困りごとに対して同装置がソリューションを提供できる事例を示した。たとえば水素含有量など成膜条件の違いが試料に反映されているかを確認するのに、RBSは大規模で表面しか見ることができないが、GD-OESでは水素が簡単に測定できる。また、同じ成膜条件で作っているDLCの色味が違うという困りごとに関しXRFやAESでは差が見られないのに対し、最大100μm深さまで測定可能なGD-OESが、色味に関わる界面にある元素の違いを特定できる事例を示した。
西村氏西村氏