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SEMICON Japan 2024

 

表面技術協会、第70回通常総会・協会賞など各賞授与式を開催

 表面技術協会( http://www.sfj.or.jp/ )は2月27日、東京都千代田区の弘済会館で「第70回通常総会・各賞授与式」を開催した。

 当日は第69期事業報告、会計報告が行われた後、第70期事業計画・収支予算について審議、満場一致で可決された。事業報告では、春季講演大会で発表件数が188件、登録参加者が537名であったこと、秋季大会は北海道胆振東部地震により中止になったものの講演要旨集を公表済みのため発表件数157件で成立したこと、セミナーとして「表面処理基礎講座」のほか、「めっきプロセスの基礎と評価実習」、「ドライプロセスの基礎と薄膜作製」などを開催し、参加者合計が320名であったことなどを報告した。事業計画では、春に神奈川大学(横浜キャンパス)、秋に福岡工業大学で講演大会を開催することや、来年9月に開催される国際会議「INTERFINISH2020(名古屋)」の開催準備を行うことなどを確認した。

 役員改選では、前期に引き続いて会長に柴田正実氏(山梨大学 大学総合研究部 教授)、副会長に井手本 康氏(東京理科大学 理工学部 教授)、川口 純氏(日本カニゼン 代表取締役社長)が再任。今期より新たに野田和彦氏(芝浦工業大学 工学部 教授)、森賀俊典氏(東洋鋼鈑 取締役専務執行役員)が副会長に選任された。

 理事を代表して挨拶に立った柴田会長は「総会でも報告があったように、会員数が毎年減少している。会員増強を続けていくことも大事なことだが、会員の方々に満足していただける協会でありたい。来年、協会設立70周年を迎えるの契機に協会の活性化を図っていきたいと考えている。具体的には以下の五つの事業を考えている。①来年の第141回、142回講演大会を70周年の記念事業として開催する。また国際会議INTERFINISH2020(名古屋)を記念事業として支援する、②会誌 表面技術2020年2月号を70周年記念特集号として発行する、③会員サービス向上のための新しい会員管理システムを構築、またホームページのリニューアルを行う、④国際交流の推進や若手人材の育成をより強化するための次世代研究人材育成、さらには協会支部の基盤資金を充実させ協会支部活動の活性化を図る、⑤会員数2500を目指して創立70周年記念会員増強キャンペーンを行う。皆様のご協力をお願いしたい」と述べた。
挨拶する柴田会長挨拶する柴田会長

 当日の席上では、「平成31年度 表面技術協会―協会賞・功績賞・論文賞・技術賞・進歩賞・技術功労賞―授与式」が行われ、平藤哲司氏(京都大学大学院 エネルギー科学研究科 教授)が業績「電析を利用した機能性コーティングに関する研究」で協会賞を受賞した。平藤氏は、金属精錬における電気化学・溶液科学を基礎とする研究を発展させ、電析を利用した機能性薄膜の作製およびその表面コーティングに関して多くの業績をあげた。薄膜太陽電池用化合物半導体の作製に関しては、水溶液系の熱力学的考察を基礎に新しいCdTe電析液を設計した。この電解液を用いることで平滑で緻密なCdTe薄膜を電析により作成することに成功し、その半導体的特性を明らかにした。非水電解液を用いるアルミニウム電気めっきに関しては、従来アルミニウム電池の電解液として研究されていた有機溶媒であるジメチルスルホンをアルミニウム電気めっき液として採用し、平滑で緻密なアルミニウム皮膜の電析に成功し、表面技術への応用に道を開いた。このアルミニウム皮膜にはナノメーターサイズからマイクロメーターサイズまでの疎水性あるいは親水性の微粒子の共析が可能である。また光沢剤の添加により良好な反射特性を示す光沢めっきも可能である。さらに、アルミニウムめっきとその後の熱処理を組み合わせた耐酸化性皮膜の形成、リチウムイオン電池の正極集電体向けの電解アルミ箔など様々な機能性薄膜への応用が期待されている。
表彰される平藤氏表彰される平藤氏

 また、論文賞では森河 務氏(大阪府立産業技術総合研究所、現所属:オテック)ら3名が題目「電気Ni-P合金めっき皮膜の電着応力」で受賞。本論文では、電気Ni-P合金めっきにおける応力発生が水素の一時的な共析と脱離に関係すると考えており、引張応力は積層時に共析した水素が電極表面へ拡散して脱離することで生じ、一方、圧縮応力はP含有量が増加することにより非晶質化によって共析した水素が電極表面に拡散が阻害されトラップされることによって生じると推定している。これらは、めっきの応力発生機構の推定として学術および実用化の両面に対して大きく寄与するものと考えられるとし、論文賞を受賞した。
表彰される(左から)森河氏、中出氏表彰される(左から)森河氏、中出氏

 技術賞では、犬飼潤治氏(山梨大学 クリーンエネルギー研究センター)ら3名が業績「マイクロプローブを用いた燃料電池内部酸素濃度測定装置の開発と実用化」で受賞。開発された装置は、先端に酸素感応色素を塗布した微小光学プローブを空気流路およびガス拡散層に直接挿入し、色素からの発光を測定することによってプローブ先端位置での酸素濃度を測定可能としたものである。複数本のプローブを開発対象とする固体高分子形燃料電池内部に挿入することにより、発電中の燃料電池の任意の位置で酸素濃度をリアルタイムに測定することに世界で初めて成功し、反応分布の理解が飛躍的に拡大した。本装置は2016 年5月に島津製作所により製品化され、燃料電池の開発とともに燃料電池材料の開発や効率的な発電パターンの抽出に利用されており、材料や部品プロバイダーを含めた燃料電池関連企業で広く利活用されている。
表彰される(左から)犬飼氏、南雲氏、大野氏、井原氏表彰される(左から)犬飼氏、南雲氏、大野氏、井原氏

受賞者、業績などの一覧は以下のとおり。

協会賞


・平藤哲司氏(京都大学 大学院エネルギー科学研究科 教授)
業績「電析を利用した機能性コーティングに関する研究」

 

功績賞

・寺門一佳氏(元 日立オートモティブシステムズ)
・塗谷紘宣氏(元 日本大学)

論文賞

・森河 務氏(大阪府立産業技術総合研究所、現所属:オテック)、石田幸平氏(野村鍍金、京都大学大学院 エネルギー科学研究科)、中出卓男氏(大阪府立産業技術総合研究所、現名称:大阪産業技術研究所)
題目「電気Ni-P合金めっき皮膜の電着応力」
(表面技術 第68巻 第5号 291~297頁)

技術賞

・犬飼潤治氏(山梨大学 クリーンエネルギー研究センター)、南雲雄三氏(島津製作所、現所属:島津総合サービス)、大野 隆氏・井原正博氏(島津製作所)

進歩賞

・北田 敦氏(京都大学大学院 工学研究科 材料工学専攻 助教)
業績「安全な電解液を用いる金属Mgおよび金属Alの室温電析技術の開発と次世代電池・将来めっきへの応用」
(表面技術 第69巻 第7号 310~311頁ほか)

技術功労賞

・兵頭博文氏(造幣局 研究所 研究開発課 技能長)
・藤山晶広氏(造幣局 研究所 研究開発課 技能長)
・本田忠彦氏(太洋工作所 森小路事業部 森小路工場 情報課 担当)
・松本典章氏(JFEスチール スチール研究所 表面処理研究部 シニアエキスパート)
・市島真司氏(東洋鋼鈑 技術研究所 研究部 薄板材料グループ)
・石田博司氏(中金 久御山工場 品質保証課 主任)

会員増強協力者

・安藤 聡氏(JFEスチール スチール研究所 表面処理研究部 副部長)
・難波圭太郎氏(オーエム産業 代表取締役社長)
・幅崎浩樹氏(北海道大学大学院 工学研究院 教授)
・湯本敦史氏(芝浦工業大学 工学部 教授)