IHI Hauzer Techno Coating、燃料電池バイポーラプレート向けカーボンコーティングを開発・提案
IHI Hauzer Techno Coating( http://www.hauzertechnocoating.com/jp/home/ )は、2月27日~3月1日に東京都江東区の東京ビッグサイトで開催された「スマートエネルギーWeek 2019」内の「国際水素・燃料電池展」に出展した。同社では今回、長年にわたるカーボンコーティング技術のエキスパートとしての経験を活かし、プラズマ表面クリーニングや密着層プロセスなども含めた同社保有のコーティングのトータルソリューションを駆使して開発した、PEM(固体高分子型)燃料電池バイポーラプレート向けの導電性、耐食性、密着性に優れたカーボンコーティングを紹介した。
PEM燃料電池バイポーラプレートにおける要求性能
PEM燃料電池スタックのセルは、イオン交換膜、電極、セパレータ(バイポーラプレート)、さらには周辺部品からなる。PEM燃料電池は、水素と酸素の化学反応によって発電する。発電源であるセルを直列に重ねた構造となっており、セルとセルを仕切るセパレータは、表裏両面をそれぞれ流れる水素ガスと酸素ガスを完全に遮断して各々のガスの流れを制御するとともに、発生した電気を効率良く伝える役割を担う。要求される性能としては、①高いガス遮断性と②高導電性のほか、軽量化と低コスト化のバランスに配慮した③強い機械強度、④耐食性、⑤高生産性が挙げられる。水素ガス通過面(アノード側)、酸素ガス通過面(カソード側)および化学反応の結果生じる発熱を抑えるための冷却水流路と一体化したセパレータは「バイポーラ(両極型)プレート」と呼ばれる。
要求性能に対応する表面改質技術
こうした要求性能を満たすバイポーラプレートの材料の一つにグラファイトがあるが、グラファイト板を切削加工して所望する寸法・構造のバイポーラプレートに仕上げるには高コストが避けられない。その他材料としてはアルミニウムやチタニウム、ニッケル、ステンレス鋼等の合金があり、機械的物性、高い電気伝導性、高いガス遮断性、低い製造コストといった要求には対応できるものの、金属表面で発生する電気化学的な腐食への対処が必要になる。この腐食問題を解決するアプローチとしては、腐食バリアを形成しつつバイポーラプレートの利点を害さない材料を用いてバイポーラプレート表面をコーティングする手法がある。
バイポーラ向けカーボンコーティング・成膜装置
そうしたニーズに対してIHI Hauzer Techno Coatingでは、オランダ本社のコンピテンスセンターで、保有するプラズマ表面クリーニングや密着層プロセスなども含めたコーティングのトータルソリューションを駆使し、高い導電性・耐食性・密着性を持つバイポーラプレート向けカーボンコーティングを高い生産性で成膜することに成功している。
同社製装置によるパイロット生産・大量生産での成膜コストは燃料電池産業のロードマップとよく一致しており、その性能は欧州最大の応用研究機関であるドイツFraunhoferによる性能試験で実証されている。R&D向けやパイロット生産向けにはバッチ装置を提案。小型バッチ装置「Flexicoat 850」は様々な成膜技術を搭載可能で、プロセスとコーティングの技術開発に適している。最大サイズのバッチ装置「Flexicoat 1500」は、年間最大35万枚(A4サイズ両面コーティングの場合)のバイポーラープレートコーティングが成膜可能でパイロット生産に適している。
量産向けではインライン成膜装置「Metalliner®」を用意。二次元・三次元形状の部品へのコーティングを大量生産できる装置として設計され、高度な自動化工場へのインテグレートも容易で、生産能力の増強が必要な場合には、いつでも装置構成を拡張できる。装置構成により年間1000万枚以上のバイポーラプレートの成膜が可能なため、仮にスタック内あたりのバイポーラプレートが500枚と計算した場合でも2万台分を賄うことができることになる。
IHIグループとしてはさらに、熱処理および表面処理でそれぞれ装置販売とサービスを手掛ける「4象限」の事業体制を構築しているため、頻繁に大量の製品にコーティングしたい、徐々に生産量を増やしたいなど、コーティング受託サービスの利用を希望する顧客には、コーティングの受託成膜を主業務とするグループ企業のIHI Ionbondを紹介できる。
IHI Hauzer Techno Coatingはカーボンコーティングのエキスパートとして、同社のトータルソリューションを駆使してPEM(固体高分子型)燃料電池のバイポーラプレートの性能向上と生産性向上へつなげることで、顧客の事業拡大をサポートしていく。