日本トライボロジー学会 会員提案研究会「第27回テクスチャリング表面のトライボロジー研究会」(主査:佐々木信也・東京理科大学 教授)は3月22日、東京都目黒区の東京工業大学大岡山キャンパスで、「第16回境界潤滑研究会(主査:青木才子氏・東京工業大学 准教授)と合同研究会を行った。以下の話題提供がなされた。
佐々木氏の講演のようす
・「エラストマー接触部の形状・表面性状について」桃園 聡氏(東京工業大学)…エラストマーの摩擦に関する概論と、摩擦に及ぼす形状や粗さの影響について論じた。摩擦特性に対しては、エラストマーの摩擦は凝着摩擦とヒステリシス摩擦に大別できること、両者とも表面の粗さのスケールによって影響を受けることなどを解説。また、接触特性に対しては、弾性域で全面接触可能でありそれによって密封を実現可能なことなどを説明した。
・「重水素トレーサ法を用いたTOF-SIMS 分析」福島由倫氏(デンソー)…鋼中の水素と外部から侵入する水素を区別するため重水素をトレーサとして、鋼球をTOF-SIMSで分析した結果、長寿命のZnスルホネートでは厚い皮膜が認められたこと、重水素雰囲気下の転がり四球試験で白層部をTOF-SIMS分析した結果、重水素が転送面から鋼中に拡散することを明らかにした。
・「マイクロテクスチャによる摩擦制御」南部俊和氏(日産自動車)…マイクロテクスチャによる摩擦低減とトラクション増大に関して紹介。EHL解析を用いた形状設計手法、マイクロフォーミングを用いた形状創製などについて概説した。
・「表面テクスチャリングによるトライボロジー特性向上~テクスチャ形状の最適化と創製プロセスにおける問題点~」佐々木信也氏(東京理科大学)…SAMやポリマーブラシからショットピーニング、さらには3Dプリンティング(SLS)など、ナノメートルオーダーからミリメートルオーダーまでの各種の表面テクスチャリングの概要・テクスチャ創製プロセスについて解説。表面粗さと摩擦の異方性、境界膜へのテクスチャの影響・効果などについて紹介したほか、様々な用途で開発された表面創製・修飾プロセス技術をうまく活用することで、表面アーキテクチャに則った表面構造を創製することが、表面テクスチャ技術の今後の課題と総括した。
当日はまた、青木才子研究室の見学会が催された。
青木研究室の見学会のようす