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SEMICON Japan 2024

 

都産技研など、表面改質と評価技術でシンポジウム開催

シンポジウムのもよう 東京都立産業技術研究センター( http://www.iri-tokyo.jp/ )と日本材料試験技術協会( http://www.mtraj.jp/ )は1月25日、東京・青海の同センターで「シンポジウム:表面改質、めっき処理による金属材料の機械特性改善とその評価技術」を共催した。表面処理や材料評価の技術開発の第一線で働いている講師を招き、製品適用を意図した講演が行われた。以下に講演内容を紹介する。

「金属繊維用編針へのDLC膜の適用」川口雅弘氏(東京都立産業技術研究センター)

 近年、織物に比べて柔軟性(変形性)や強度などの点に優れている金属・セラミック繊維を用いた編物の需要が高まりつつある。洗浄することで繰り返し使用できる編物フィルターやコンクリート用の内部補強材など、各種産業製品に適用し得る素材として開発が進められているが、普通糸用の編針では摩耗が激しく、頻繁に数百本の編針を交換する必要がある。本研究では、編針表面に対して高周波-高電圧パルス重畳型プラズマイオン注入成膜法を用いてDLCを成膜することで、編針の耐摩耗性が向上することを確認した。その上で実用化として「低い成膜圧力は生産性(特に成膜速度)の低下を招くため、結果的に処理単価が高くなる」とし、「産業由来の課題も含めた処理条件の適切化を行うことが実用化促進の手掛かりである」とした。

「複合熱処理を施した窒化処理材の疲労強度特性」白木尚人氏(東京都市大学)

 機械部品に求められる要求は、産業技術の進歩に伴って厳しくなっており、品質・信頼性の向上とともにコスト低減が求められている。本研究では、これまで単独で行われていた塩浴軟窒化処理と高周波焼入れを組み合わせる(塩浴軟窒化処理後に高周波焼入れ)ことにより、機械的性質と疲労強度特性の向上を期待したものである。クロムモリブデン鋼SCM440を試料に、それぞれの単一処理と複合処理を行い硬さ試験や回転曲げ疲労試験などの結果、複合熱処理の表面硬さおよび硬化深さが著しく増加することなどを報告した。


 このほかドライコーティングでは、「DLCから進化した高機能膜ICFの成膜技術と特性評価」と題して平塚傑工氏(ナノテック)が、DLCに構造制御や他元素ドーピングなどを行うことにより、導電性や撥水性といった用途に特化したICFコーティングとDLCの評価方法について紹介した。竹内貞雄氏(日本工業大学)は、「ダイヤモンド膜の機械的応用への期待と展開」と題して、ダイヤモンドコーテッド工具によるCFRPの穴加工とステンレス鋼板のドライプレスの加工の現状を述べるとともに、ダイヤモンド膜の本格的な応用展開を進めるための基盤技術である機械的特性の評価方法について紹介した。

 また、めっき分野では「古くて新しいめっき技術 精密装飾めっき、高機能・精密めっき そして精密電鋳技術」で登壇した小林道雄氏(ヒキフネ)は、装飾めっきと機能めっき、電気・無電解めっき、複合めっきとそれぞれの用途や特徴を解説した。藤波知之氏(日本エレクトロプレイティング・エンジニヤース)は、「貴金属を用いた機能めっき」と題し、貴金属の特性を生かした機能めっきが急激に発展しているとして、金、銀、パラジウム、白金、ロジウム・イリジウム・ルテニウムの特性や使用用途を解説した。

 評価技術では、新井大輔氏(レスカ)が「薄膜評価試験機による測定事例の紹介」と題して、薄膜の機械的強度を評価する有力な手法としてマイクロスクラッチ試験機と摩擦摩耗試験機の原理、特徴、評価方法を解説、測定事例としてSi基板上に形成された100nmのDLC膜についての実例も紹介した。さらに、「計装化押込み硬度計-測定原理と測定上の注意」で講演を行った前田豊一氏(島津製作所)は、計装化押込み硬度計の機構、測定原理、測定例および測定上の注意を解説。測定上の注意点では、測定値に影響する要因として試料の表面粗さと試験くぼみ間隔の試料要因、圧子先端と試料の固定に関する装置要因、最も大きな要因として装置の設置環境(振動、温度)の3点を挙げた。