「高機能フッ素コート」巻き軸受への適用例 住友電気工業( http://www.sei.co.jp )と住友電工ファインポリマー( http://www.sei-sfp.co.jp/ )は、アルミニウム合金、鉄、銅、SUSなどの耐摩耗性と滑り性を高めることができるコーティング技術「高機能フッ素コート」を開発、このほどサンプルの供給体制を整えた。
この技術で用いられるフッ素樹脂は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)である。PTFEは、滑り性(固体中最小の低摩擦性)、非粘着性などの特性に加え、耐熱性・耐薬品性・耐候性等にも優れており、住友グループでは様々な製品に適用している。一方、PTFEはフッ素原子間の結合力が弱いことから、摩耗しやすいため、滑り性を活かした摺動用途での利用は限定的だったという。
PTFEコーティングに電子線の照射を行い、コーティング全体を架橋させることにより、耐摩耗性が大幅に向上
PTFE コーティングに特殊な技術で電子線の照射を行い、コーティング全体を架橋(橋かけ)させることにより、分子間に結合力の強い共有結合を形成できるため、耐摩耗性が大幅に向上、同時に基材との接着力も強化することができた。また、優れた滑り性などのPTFE本来の特性をそのまま維持している。
住友電気工業が行ったスラスト摩耗試験では、既存技術(スミフロンコート)や摺動材として般的なポリアセタール(POM)、超高分子PE、機械的物性に優れるポリフェニレンサルファイド(PPS)やポリ・エーテルエーテルケトン(PEEK)に比べて高い耐摩耗性を示した。
上:スラスト摩耗試験条件 下:スラスト摩耗試験結果スラスト摩耗試験を行ったサンプルの比較
適用可能な基材はアルミニウム合金、鉄、銅、SUS、耐熱プラスチックなど。強力な 接着力が必要な用途へはアルミが適している。鉄、銅は防錆対策を行う必要がある。
同コーティング技術は板材からのプレス加工が可能で、自動車部品等に用いられる巻き軸受や異形のスライダー、さらに、これまで適用が困難だった複雑形状への成型が可能になるという。また、高い滑り性のため、回転軸にかかる力(トルク)が低くなり、省エネルギーに寄与するとともに、軸受等のオイルレス化も促進できる可能性もある。今後、自動車をはじめ様々な産業機械等に使用されるシャフト等の任意形状の部品へのコーティング技術についても検討を進めていく。