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第9回ものづくりワールド名古屋

 

ハノーバーメッセ2019が開催、燃料電池向けコーティングなど新技術が披露

 ドイツ・ハノーバーで4月1日~5日、世界最大規模の国際産業見本市である「HANNOVER MESSE(ハノーバーメッセ)2019」が開催された。インダストリー4.0や5G通信、モーション&ドライブ、総合エネルギーなどのテーマのもと、約6500社が出展し、約22万人が来場した。
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 表面改質関連では、以下のような出展があった。

IHI Hauzer Techno Coating/IHI Ionbond
 IHI Hauzer Techno Coatingはハノーバーメッセ内の「Hydrogen + Fuel Cells EUROPE」のエリアに出展した。同社では今回、長年にわたるカーボンコーティング技術のエキスパートとしての経験を活かし、プラズマ表面クリーニングや密着層プロセスなども含めた同社保有のコーティングのトータルソリューションを駆使して開発した、PEM(固体高分子型)燃料電池バイポーラプレート向けのカーボンコーティングを紹介した。PEM燃料電池バイポーラプレートに多用されるステンレス材料などで改善が必要とされる、導電性、耐食性、密着性を、効率よく付与できることを謳った。

 R&D 向けやパイロット生産向けにはバッチ装置を提案。小型バッチ装置「Flexicoat 850」は様々な成膜技術を搭載可能で、プロセスとコーティングの技術開発に適している。最大サイズのバッチ装置「Flexicoat 1500」は、年間最大35 万枚(A4 サイズ両面コーティングの場合)のバイポーラープレートコーティングが成膜可能でパイロット生産に適している。量産向けではインライン成膜装置「Metalliner®」を用意。二次元・三次元形状の部品へのコーティングを大量生産できる装置として設計され、高度な自動化工場へのインテグレートも容易で、生産能力の増強が必要な場合には、いつでも装置構成を拡張できる。装置構成により年間1000 万枚以上のバイポーラプレートの成膜が可能なため、仮にスタック内あたりのバイポーラプレートが500 枚と計算した場合でも2 万台分を賄うことができることになる。

 同社では、プラズマ表面クリーニングや密着層プロセスなども含めたトータルソリューションを駆使してPEM 燃料電池のバイポーラプレートの性能向上と生産性向上へつなげることで、顧客の事業拡大をサポートしていく考えで、すでにFCVの開発に取り組むトヨタ自動車やホンダ、SUBARU、スズキなどに提案を始めているという。

 展示ブースではまた、グループ企業で受託成膜を手掛けるIHI Ionbondが、バイポーラプレート向けコーティング技術として、貴金属の使用を低減しつつ導電性と耐食性を付与できる複合処理DOTTM技術を紹介した。最初の処理としては、チタン系の膜がスパッタPVD技術で成膜される。二番目の処理としては、銀や金などの貴金属の溶射膜「DOTs」がベースとなる。溶射処理の熱によって第一の膜であるチタンから耐食性のある酸化チタンの被膜が形成される。同時に貴金属のDOTsは基板への優れた導電性と密着性を発現する。表面積全体の2~6%をカバーするにとどまる金のDOTsは、必要な耐食性と低く安定した電気抵抗を付与するレファレンスとして挙げられる、金属基板を100%被覆する金コーティングと同等の特性を実現する。つまりDOTTM技術は貴金属の使用を減らしつつ導電性と耐食性を付与できる最適なソリューションといえる。

IHI Hauzer Techno Coating 3種のカーボンコーティングを施したバイポーラプレート(左から3点)とTiNコーティングを施したバイポーラプレート(右)IHI Hauzer Techno Coating 3種のカーボンコーティングを施したバイポーラプレート(左から3点)とTiNコーティングを施したバイポーラプレート(右)

Fraunhofer IWS
 Fraunhofer IWSは「Industrial Supply」エリアに出展し、独自開発のta-Cコーティング「Diamor®」を紹介した。ダイヤモンド結合比比率が70%以上で、潤滑下およびドライ環境下のいずれでも超低フリクションを示す。摩擦・摩耗の激減に高いポテンシャルを持つことから、産業分野での適用も増えてきている。

 Fraunhofer IWSが開発したLaser ArcTM技術に加えて新開発の短パルスアーク(spARC®)技術を使うことでコスト効率の良いDiamor®の成膜のためのロバスト性の高いプロセスを可能にしている。

 spARC®は産業向けの耐摩耗コーティング成膜に幅広く使われる直流真空アークと高電流短パルスアークとを組み合わせたもの。300μsのパルス幅と約1550Aのピーク電流を持つ大電流パルスが、50~100Aのアーク電流と100Hzの周波数を持つ連続直流アークに重畳される。これらの電流パルスによって、炭素イオンの層形成のエネルギーを強める結果となる。それによって層中の高いダイヤモンド結合比率につながる。このことによって、約4500HVの高硬度被膜が成膜できる。
 spARC®モジュールは種々のサイズの既存のPVD装置に簡単に組み込むことができ、最大6個の蒸着源まで拡張できる。既存のインフラを活用できるため、テトラヘドレル結合で超硬度・超低摩擦・摩耗のアモルファスカーボン膜の高レート成膜を可能にしている。代表的なアプリケーションとしては、アルミや銅、真ちゅう、炭素繊維複合材料などの機械加工工具のコーティング膜として、工具の摩耗や構成刃先の形成を防ぐ。

Fraunhofer IWS 「Diamor<sup>®</sup>」を被覆したピストンピン(左)とドリル(右)Fraunhofer IWS 「Diamor®」を被覆したピストンピン(左)とドリル(右)

AGC Plasma Technology Solutions
 AGC Plasma Technology Solutionsは「Industrial Supply」エリアに出展、建築物向けの最大3.2mのガラス基板に低反射率で太陽光線制御のコーティングを成膜できるマグネトロンスパッタリング技術や、低温で酸化シリコンベースの膜を反射防止膜やバリア膜(防錆膜)を成膜できるプラズマ支援化学蒸着(PECVD)技術、さらには半導体分野や金属材料などの硬度や耐食性の向上に利用でき、特にサファイヤガラス基板の反射防止膜の成膜に多くの実績を持つイオンビーム注入技術を紹介した。
そのほか、研究用からファブ用への拡張における経験・ノウハウを持ち、健康・安全関連の要求基準に合致したカスタムメードの自動機や先進プロセス制御技術を搭載した装置も製作するという。

AGC Plasma Technology Solutionsの展示ブースAGC Plasma Technology Solutionsの展示ブース