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第9回ものづくりワールド名古屋

 

トライボコーティング技術研究会、令和元年度第2回研究会を開催

 トライボコーティング技術研究会は8月30日、東京都北区の北とぴあで「令和元年度 第2回トライボコーティング技術研究会」を開催した。今回はドライコーティング研究会との第12回目となる合同研究会として開催された。

開催のようす

 当日は、ドライコーティング研究会を代表して関西大学教授の西本明生氏が、トライボコーティング技術研究会を代表して大森 整会長(理化学研究所 主任研究員)がそれぞれ開催の挨拶を述べた後、以下のとおり講演が行われた。

・「パルスDCプラズマCVD法による各種高機能膜の特性と応用」河田一喜氏(オリエンタルエンヂニアリング)…パルスDCプラズマCVD(PCVD)法とヒーター加熱併用、処理品回転、拡散硬化層+硬質被膜という複合処理を一つの装置で真空を破らずに1回の工程で行う独自開発装置を用いることで、低温で緻密性・密着性に優れた被膜を三次元複雑形状品に対しコーティングが可能という利点を紹介。PCVD法によってTiをベースにN、C、B、O、Cl、Al、Siのような元素を複合添加し複合多層化した高潤滑コーティングOMCを施すことで、無潤滑で各種相手材に対して摩擦係数が低く境界潤滑状態が生じる条件下でも有利なため、プレス・鍛造等の各種冷間加工用金型への応用が拡大していることや、耐熱性・耐酸化性を向上させたOMCによってホットプレス用金型にも応用が期待できることを紹介した。

講演する河田氏


 
・「表面処理と潤滑油添加剤の併用による摩擦摩耗低減効果の向上」青木才子氏(東京工業大学)…油性剤による吸着分子膜の摩擦低減効果に及ぼす表面粗さの影響として、粗さの方向性、特に直交粗さによる油溜まり効果や突起先端部における潤滑油の高粘度化という微視的流体効果によって生じる負荷圧(micro-EHL効果)が吸着分子膜の摩擦低減効果を補助することを検証した。さらに水平力顕微鏡を用いてμmスケールの突起を設けた接触面表面での摩擦における粗さの方向性の影響を調べた。また、窒化処理鋼における耐摩耗添加剤ZnDTPの摩擦摩耗特性に及ぼす窒化層の影響と、窒化処理鋼におけるZnDTPトライボフィルム形成メカニズムを考察した。窒化鋼ではトライボフィルム深部に長鎖ポリリン酸塩が形成、母材を保護しトライボフィルムの成長を促進するとともに、高い摩擦低減性能と耐摩耗性を発揮すると述べた。

講演する青木氏

・「自己酸化を利用した歯科用チタンのコーティング」三浦永理氏(兵庫県立大学)…患者の審美性やアレルギー・衛生面の事情からは、金銀パラジウム合金に代わり硬質レジンやセラミックスへと需要が移りつつあり、歯科医・技工士の審美性と加工容易性の両立が難しいという事情からは、金属製に代わりCAD/CAMや3Dプリンティングに適応できる生体適合性の高い高付加価値な材料が要求されている。この課題に対し、強くしなやかで生体親和性に優れるチタン(Ti)合金を白色化できる緻密な高温酸化膜の形成技術と、陶材成分と複合化できるCP Ti(機能性TiO2複合構造体)の創製技術を開発。陶材成分充填によるTiO2/SiO2ハイブリッド化により単層材に比べ10~15倍に白色被膜のはく離強度を向上できるほか、被膜硬度を上昇できるとの試験結果を紹介した。白色被膜を利用した歯冠作製技術の優位性や3Dプリンティングなどによる技工プロセス短縮化などの将来性について述べた。
 

講演する三浦氏