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SEMICON Japan 2024

 

表面改質展2019が開催

 「表面改質展2019」、「VACUUM2019 真空展」など五つの専門展が9月4日~6日、横浜市西区のパシフィコ横浜で開催、約56185名が来場した。主催は表面改質展が日刊工業新聞社、真空展が日本真空工業会と日本真空学会など。両展示会では、ドライコーティングの装置や周辺機器の展示、各社独自開発の被膜による受託加工に関する展示が多数見られた。ここでは、表面改質展の展示内容を中心に、本サイトに関連の深い技術・製品を紹介する。

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会場入り口

 IHI Hauzer Techno Coating( http://www.hauzertechnocoating.com/jp/home/ )は、PEM(固体高分子型)燃料電池バイポーラプレート向けの導電性、耐食性、密着性に優れたカーボンコーティングを紹介した。その性能は欧州最大の応用研究機関であるドイツFraunhoferによる性能試験で実証されている。R&D向けやパイロット生産向けにはバッチ装置を提案。小型バッチ装置「Flexicoat 850」は様々な成膜技術を搭載可能で、プロセスとコーティングの技術開発に適している。最大サイズのバッチ装置「Flexicoat 1500」は、A4サイズ両面コーティングの場合で年間最大数十万枚のバイポーラープレートコーティングが成膜可能でパイロット生産に適している。量産向けではインライン成膜装置「Metalliner®」を用意。装置構成により年間1000万枚以上のバイポーラプレートの成膜が可能だという。現在、世界の主要自動車メーカーに提案、一部試作が始まっているという。

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IHI Hauzer Techno Coating「カーボンコーティングのサンプル」

 サーフテクノロジー/不二WPCは、小麦粉やコーンスターチなど食品粉体のホッパーやフルイなどへの付着を抑制する効果があり採用実績の多いショットピーニング技術「マイクロディンプル処理®」をベースに、より細かい粉体の付着抑制効果を実現しつつ、食中毒の原因となる大腸菌などの菌繁殖を抑制、さらには死滅させる技術を紹介した。食品業界ですでに実績がありスタンダードの付着抑制処理となっているマイクロディンプル処理「P43プロセス」や「PT1プロセス」(いずれも0.4μm以下の大きさの凹凸を形成できる)をベースに処理時間を工夫することで、付着抑制効果を変えずに強力な抗菌効果を付与できる表面改質手法「Anti-Bac P43 」および「Anti-Bac PT1」を開発。マイクロディンプル処理による食品粉体の付着抑制(食品ロスの防止)・滑り性向上(生産性向上)の提案に加えて、新たに抗菌性付与という点を謳っていくことで、ユーザーである食品加工工場でのコーティング不使用による異物混入防止に加えて、煩雑なサニテーション作業の低減が可能になることを訴求していく。

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サーフテクノロジー/不二WPC「左:未処理 右:マイクロディンプル処理」

 東京電子は、アーク異常放電抑制型HiPIMS用パルス電源を紹介した。同パルス電源は、HFパルス(High Frequency Pulse)部があることにより電流が制御可能であることから、異常アークを抑制し、さらにアフターグローの時間が長くなる。アークが起きる限界までパルス幅を拡張でき平均電力を上げられることにより放電時間を従来のHiPIMS波形の放電時間50μs程度から100μs程度に拡張、成膜レートを大幅に向上できる。また、MEMSやライフサイエンスデバイスなどの信頼性を担保するデバイス内の機密検査として、超低ガス放出残留ガス分析計「WATMASS」を中心とした超微量ガス分析装置を紹介。この装置は、リーク量10-16Pa・m3/sの計測が可能であり、同時にデバイスの破壊試験から、残留成分を高精度で測定可能だという。

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東京電子のブース

 東芝ナノアナリシスは、次世代製品の研究・開発を先端の設備と高度な分析でサポートする「ナノ構造解析」や、表面の化学組成や結合状態、不純物分布などを詳しく調べ研究開発や製造プロセスおよび不良解析に役立つ情報を提供する「表面分析」、研究開発から製造技術における薄膜材料の物理的構造や特性を明らかにする「薄膜物性評価」などの受託分析サービスを紹介。具体的には、ナノ構造を明らかにする原子レベルの三次元アトムプローブ解析技術、イオンミリング法により加工した陽極酸化皮膜の微細構造観察例、アルミダイカスト部品の三次元X線顕微鏡(X線CT)による非破壊観察で内部欠陥の有無、また欠陥が確認された場合は内部欠陥に存在する介在物の成分や元素の分布を確認することで発生原因が推定できることなどを事例として挙げた。

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東芝ナノアナリシスのブース

 日本電子工業は、同社が受託加工を行っているPCVD法によるDLCコーティング「NEO Cコーティング」と多様な方法で成膜できるDLCコーティング「NEO VCコーティング」を紹介した。NEO VCコーティングは、UBMS法+PACVD法によるa-C:H膜、カソードアーク法によるta-C膜、UBMS法によるa-C:H膜などのほか、シリコンやタングステンを含有した被膜を形成することができる。同社では被膜のラインアップが多様な強みを活かして、自動車部品や機械摺動部品の摩擦低減や耐摩耗性向上といった用途に提案を強化していく。

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日本電子工業のブース

 八田工業は、受託加工を行っている真空熱処理やイオン窒化のサンプルを展示した。また、新しい技術として「アクティブスクリーンプラズマ窒化」を紹介。この技術は、通常のプラズマ窒化が処理材表面でグロー放電を発生させるのに対し、炉壁とスクリーンの間でグロー放電を発生させるため、従来のプラズマ窒化の欠点である異常放電、エッジ効果などによる窒化層のムラが回避できる今後、実績を積み上げることで、さらなる受注拡大を期待しているという。サンプルとして薄い包丁を展示した。

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八田工業の熱処理サンプル

 ヤマシタワークス/日本スピードショアは、異形状ワークを簡単に短時間で鏡面仕上げ加工できる装置「エアロラップ」を展示した。エアロラップは、ゼラチンを主成分とした食品性研磨材を核に、水分「マルチリキッド」を含有することで弾力性・粘着性を持たせダイヤモンド砥粒を複合させた研磨材「マルチコーン」を、被加工材(ワーク)表面を高速で滑走させて発生する摩擦力によって磨くもの。乾式と湿式の中間的な湿潤状態で、相手材にダメージを与えることなく、精密研磨、最終仕上げや鏡面仕上げを可能にしている。今回は、各種金型部品の磨き時間短縮、切削工具の寿命延長、DLCなどドライコーティング成膜の前後処理など、様々な用途で使用が可能で、再生可能なエコ製品で、食品素材をコアに持つ研磨材を用いていることをアピールした。

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ヤマシタワークス/日本スピードショアのブース