日本MID協会、第17回定例講演会を開催
日本MID 協会( http://www.jmid.gr.jp/jp/index.html )は11月1日、東京都目黒区の東京大学 生産技術研究所(駒場リサーチキャンパス)An棟2F コンベンションホールで「第17回定例講演会」を開催した。併設で、パナソニックやマクセル、図研、マクダーミッド・パフォーマンス・ソリューションズ・ジャパンなどMID関連13社によるポスター展示が行われた。
MID(Molded Interconnect Device)は、樹脂成形品表面にめっきなどの金属膜で回路(電極)を形成したモールド部品で、構造部品に回路・電極やコネクタ、シールド効果などの機能を盛り込んだ構造体かつ電気的機能(特性)をもつ複合部品を構成できる。樹脂成形品に回路・電極を自由に形成することが可能なため、FPC、PCB等の部品点数を削減しつつ組立工数を削減し、空間スペースを有効に活用した部品の軽薄短小化を可能にしている。
1996年に「MID研究会」として発足した日本MID 協会は、MIDに関する最新技術の紹介や海外の学協会や国内の他団体との交流を進めている。
当日は、定例講演会担当幹事のマクダーミッド・パフォーマンス・ソリューションズ・ジャパン社長のジュリアン・ベイショア氏の代理で、同社シニアビジネスマネージャーの鈴木博文氏が「本定例講演会は単なる講演の聴講に留まらず、参加者や参加企業との積極的な交流の場である。講演会の合間の休憩中にはポスター展示もご覧いただきたい。MIDは多種多様な技術分野が絡んでおり、普段は決して関わらない分野の方々がMIDというキーワードのもとでこの場に集まっている。この場を通じて参集いただいた方々にビジネスの場が広がっていくことを期待している」と挨拶した。
その後、以下のとおり講演がなされた。
・「特別講演:3Dプリンテッドエレクトロニク技術の創生と期待」時任静士氏(山形大学)…非平面あるいは三次元表面へのプリンテッドエレクトロニクスの適用のための新しい電子回路印刷技術を開発した。その一つ、やわらかいブランケットを用いた「ソフトグラビアオフセット印刷技術(SBG)」は、不規則な曲面や段差の上への微細な銀配線を成功させ、3Dプリンティングによる回路作製を実現した。もう一つの、「全方向インクジェット印刷技術(OIJ)」もまた、様々な曲面や三次元形状の対象物への銀配線に成功、3Dプリンティングによる回路作製を実現している。厚膜に印刷した銀配線では最大5Aの電流を30分間通電することに成功。次のステップとしては、三次元形状の対象物へのセンサーデバイスの製作やより複雑な回路の形成を目指していると述べた。
・講演1「3D-MID用Cuペーストの開発」江尻芳則氏(日立化成)…低温焼成可能な銅(Cu)ペーストを用いて、3D配線材料としての適用可能性について検討した。その結果、①2D形状および3D形状のポリカーボネート(PC)基板に、レーザー焼成によってCu配線が形成できた。②3D形状のポリプロピレン(PP)基板に、105℃の焼成(ギ酸雰囲気中)で、線幅2mm、厚み30μm、体積抵抗率20μΩ・cmのCu配線が形成できた。③3D形状の液晶ポリマー(LCP)基板に、L/S=600μm/600μm、厚み30μm、体積抵抗率5μΩ・cmのCu配線が形成できた。④ポーラス構造の銅被膜に樹脂を塗布することで、ポーラス部に樹脂が浸透し、基材とCu配線との密着性が向上すると考えた。
・講演2「エアロゾルジェット技術による3D曲面への微細回路形成」堀 靖志氏(マイクロジェット)…吐出できる液材料が低粘度に限定、最小線幅は30μm程度が限界、ヘッドと基材の距離が0.5~2mmに限定などのインクジェット技術の課題を解決する手法として、数μmの粒子を制御し印刷する「エアロゾルジェット技術」について説明。線幅10μmの細線形成、10mmギャップでの非接触印刷、1000 mPa・sの高粘度液への対応、ノズル変更で線幅10~1000μmの印刷がそれぞれ可能という特徴から、インクジェットでは困難だった高粘度液材や凹凸基板への印刷が可能とした。各種アンテナ・センサーなどへの応用事例のほか、同社のエアロゾルジェット描画装置や試作サービスなどについて紹介した。
・講演3「新MID工法ASEP(Application Specific Electronics Package)」圓谷徹紀氏(日本モレックス)…ASEPによって、一体化によるスペース効率の改善や回路厚選択の自由度を利用した放熱特性の改善、一般的なMID技術に比べた生産性の改善(インライン生産)が図れるというソリューションを提案した。その製造プロセスから機能・特徴、適用分野などについて紹介したほか、マイクロ配電ボックスやLIN対応RGB装飾用光源、放熱基板などの製品応用例を紹介。そのほか、ASEPによるパターンの密着性が成形樹脂の性質に依存することや、最小のパターン幅が現時点でL/S=150μm/150μmまで作製可能なこと、使用可能な内層金属板の厚みが0.1~1mm程度まで使用可能なことなどを説明した。
・講演4「3D-MID実装の応用例と4社での取り組みのご紹介」ハンソンイ氏(太陽インキ製造)、北郷 和英氏(大英エレクトロニクス)、秋山 賢二氏(ヱビナ電化工業)、市野 慎次氏(FUJI)…3D-MID基板製造における主なプロセスのうち、基板・回路設計を担当する大英エレクトロニクス、回路形成を担当するヱビナ電化工業、レジストを担当する太陽インキ製造、部品実装を担当するFUJIの各会社概要のほか、サンプル基板の設計・製作、MID実装プロセス確立に向けた実験、ユーザーデモ対応といった4社での活動内容を紹介した。4社で活動するメリットとしては、各工程での条件を事前に共有でき設計段階でプロセス全体を考慮した設計が可能なためトライ&エラーが発生せず最短で製品を制作できるとした。
・講演5「3DハイブリッドモジュラーS20による3D-MID実装のご紹介」鈴木 直樹氏(ヤマハ発動機)…ディスペンサー(塗布)とマウンター(搭載)の機能を兼ね備えるハイブリッドヘッドに、3軸構造で様々な形状のMID生産に対応できる3Dユニットを追加し3次元実装に対応する同社の「3DハイブリッドマウンターS20」について紹介した。ディスペンサーの種別と特徴、3Dユニットの構造、MIDワーク搬送方式などについて説明したほか、ハイブリッドヘッドによる部品搭載や長尺はんだ塗布など3D-MID実装のデモンストレーション動画を披露した。また、カラーフィデューシャルカメラの採用によってはんだや接着剤などの塗布検査に対応する、開発中の塗布検査機能についても紹介した。
・講演6「JOHNANの3D-MIDへの取組み」岡 孝充氏(JOHNAN)…同社の3D-MID実装ラインについて紹介したほか、3D-MID実装での、垂直面に実装された部品がリフロー加熱時に落下するという問題に対し、同社が全部品を一括でリフロー可能なプロセスを確立、本格的な量産にも高い生産性で対応可能としたことを報告した。はんだ付け工法選定では設備の生産スピードを向上させることで製造コストを下げる必要があるためエアーリフローを選定。リフロー条件の比較や温度プロファイルの見直しなどで、リフローで垂直面・傾斜部の部品落下防止に成功。そのほか導電接着剤など熱に弱い材料への対応やレジストの対応など、3D-MID実装における様々な課題解決に取り組んでいることを紹介した。
そのほか協会側から、吉澤徳夫氏(日本MID協会幹事、三共化成)が「MIDガイドライン」について、松澤浩彦氏(日本MID協会幹事、図研)が「MID市場調査報告2019」について報告した。