トライボコーティング技術研究会は12月13日、東京都江東区の東京都立産業技術研究センター(都産技研)で、「令和元年度 第4回研究会」を開催した。
当日は、大森 整会長(理化学研究所)の開会挨拶に続いて以下のとおり講演がなされた。
「フラーレンの潤滑特性とメカニズム」近藤邦夫氏(昭和電工)…炭素原子のみからなるクラスター型分子であるフラーレンの特徴から諸特性、用途などを紹介し、主として潤滑特性について解説した。フラーレンを潤滑油に添加した効果として、低荷重の摩擦試験では摩擦抵抗が半分以下になるとした。また、中荷重の摩擦試験では基材の摩耗を1/20に抑制。高荷重の摩擦試験では市販の油に添加することにより焼付きを防止することから、より低粘度油が使用できると紹介した。潤滑メカニズムとしては、摺動面にフラーレン単分子よりも大きなサイズの構造体が存在するのではないかと推測した。
「都産技研における航空機関連の取り組みについて」福田良司氏(都産技研)…都産技研では、2017年12月に「航空機産業支援室」を開設。航空機の製造や開発に求められる国際規格に対応する試験設備を導入し、共同開発を通じて航空機産業への参入を目指す中小企業を支援している。講演では、ASTM18(ロックウェル硬さ試験)やASTM E384(マイクロビッカーズ硬さ試験)、ASTM B117(塩水噴霧試験)、FAR 25.853(燃焼性試験)などの国際規格に対応した設備を導入していることや、ASTM E384とASTM18についてはJIS Q 9100に適合した依頼試験として利用できることを紹介した。
講演に続いて、都産技研内の航空機産業支援室の見学会が行われ、航空機部品に適用されるASTM規格やFAR規格に対応した試験機、中小企業と共同研究を行い完成した航空機部品の製造技術の紹介などを行った。
次回研究会は来年2月28日、東京都板橋区の板橋区立グリーンホールで開催される「第22回トライボコーティングの現状と将来」として行われる予定。