JFEスチールは、メッシュベルト炉で焼結した状態のままで引張強さが800MPa級を示す粉末冶金用途向けのニッケル(Ni)フリー合金鋼粉「FM800」を開発した。
従来、焼結部品にはNiが4%、銅(Cu)が1.5%、モリブデン(Mo)が0.5%含まれる合金鋼粉を、メッシュベルト炉で焼結した材料が広く使われていたが、焼結後に硬度差が大きくなり被削性が悪化し加工費が増加する上、Niの市況影響を受けやすいという課題があった。
それに対応するため同社では、メッシュベルト炉で焼結した状態のままで引張強さが600MPa級を示す「FM600」、浸炭焼入れ後の引張強さが1000MPa級を示す「FM1000」、「FM1000」にさらに靭性を兼ね備えた「FM1000S」、高温焼結後に熱処理をすることで引張強さを1300MPa級まで高めることができる「FM1300」といった、多彩なラインナップを持つNiフリー合金鋼粉「FMシリーズ」を開発・販売してきた。
一方で、800MPa級の引張強さが要求される部品にNiフリー合金鋼粉を使う場合、浸炭焼入れが必要になってしまうことから、顧客のコスト削減により寄与すべく、さらなる商品開発に取り組んできた。
そこで、同社はCuを3%、Moを1.3%予合金添加した合金鋼粉「FM800」を開発し、メッシュベルト炉で焼結した状態のままで引張強さが800MPa級を超える高強度を出すことに成功した。また、一般的に合金元素の予合金添加によって、粉末の圧縮性は低下するが、製造プロセスを制御することにより高い圧縮性を兼ね備えさせることに成功した。今後自動車部品、建機部品への適用を目指す。