メインコンテンツに移動
SEMICON Japan 2024

 

表面技術協会、第71回通常総会および各賞授与式を開催

 表面技術協会( http://www.sfj.or.jp/ )は2月28日、東京都千代田区の弘済会館で「第71回通常総会および各賞授与式」を開催した。

 当日は第70期事業報告、会計報告が行われた後、第71期事業計画・収支予算について審議、満場一致で可決された。事業報告では、第139回講演大会および第140回講演大会で合計発表件数326件、登録参加者が897名であったこと、セミナーとして「表面処理基礎講座」のほか、「めっきプロセスの基礎と評価実習」、「ドライプロセスの基礎と薄膜作製」などを開催し、参加者合計が303名であったことなどを報告した。事業計画では、9月に名古屋大学で開催されるINTERFINISH 2020の開催準備・運営や、ISO規格検討専門委員会においてISO/TC107からの提案事項の審議を行うことなどを確認した。

 任期満了に伴う役員改選では、今期より会長に光田好孝氏(東京大学 生産技術研究所 教授)、副会長に本間敬之氏(早稲田大学 先進理工学部 教授)、大塚邦顯氏(奥野製薬工業 常務取締役)が新たに選任された。野田和彦氏(芝浦工業大学 工学部 教授)と森賀俊典氏(東洋鋼鈑 取締役専務執行役員)は前期に引き続いて副会長を務める。

  理事を代表して挨拶に立った光田会長は「6年前に副会長の任を終えて以来、今回は会長として当協会のために尽力することとなった。個人的なことを申し上げさせていただくと、私が東京大学に任官したのが平成3年で、その時に採用していただいた元会長の増子昇先生が色々な学会の会長をしていたこともあり、平成4年頃に“何か一つくらい手伝え”と促されて、紹介者名に増子昇と書かれた申込書にその場で記入をしたのが当協会との縁の始まりだ。皆様ご存知のように、急なことだったが昨年増子先生が84歳で亡くなられた。そのため、“増子先生に言われた仕事をしっかりと引き継いでいますよ”と報告できなかったのが残念だ。また協会の運営としては、今年は東日本大震災、北海道胆振東部地震に続いて、新型コロナウイルス感染症による影響で3回目の講演大会中止となった。今後どうなるか分からないが、秋の講演大会は開催できる状態になって、皆様と楽しく学術的・技術的議論ができる場になれば良いと思っている」と述べた。

挨拶をする光田会長
挨拶をする光田会長

 当日の席上では、「令和2年度 表面技術協会 各賞授与式」が行われ、森河 務氏(オテック 技術顧問、元大阪府立産業技術総合研究所)が業績「誘起共析型合金めっきの開発とその実用化に関する研究」で協会賞を受賞した。森河氏は、炭素、リン、窒素の非金属およびWやMoの高融点金属を誘起共析させた合金めっきの作製および液の安定化に関して多くの業績をあげた。特に、Cr-C合金めっきに関する一連の研究では、めっき膜の機械的性質や熱処理による構造変化を明らかにするとともに炭素のクロムめっき皮膜への共析機構を明らかとし、湿式法では世界最高の硬度を有するCr-C合金めっき膜の実用化の緒を提供した。また、Ni、Feの誘起共析型の合金めっきとして、P、W、Moの析出挙動を明らかにするとともに、液の安定化策として犠牲陽極分解剤の利用、イオン交換膜システムのめっきプロセスへの導入を検討し、連続めっきに不可欠な膜質の安定化を達成するなどの成果を上げた。加えて、めっき皮膜の評価や析出機構の解析、めっき液のリサイクルやプロセスのクローズド化に積極的に取り組むなど、表面技術への貢献は顕著であった。

表彰される森河氏
表彰される森河氏

 論文賞では、久保田賢治氏(三菱マテリアル)ら5名が「AFM,QCM-Dおよびエリプソメトリーを用いた銅めっき添加剤吸着状態の解析」で受賞。本論文は、銅めっき添加剤、特に抑制剤として用いられている水溶性高分子および界面活性剤を対象として電気化学エネルギー散逸測定機能付き水晶振動子微小天秤法(E-QCM-D)、エリプソトリ-および原子間顕微鏡(AFM)を併用し、界面活性剤および水溶性高分子の金属表面における吸着状態解析を実施したものである。めっき添加剤の吸着状況解析は、現象論から理論に結びつける重要な項目であり、これらの方法で得られた結果を複合的に添加剤の吸着構造を解析することにより、吸着量だけでなく吸着膜の構造、吸着膜の緻密さ、水和水の含有量、吸着速度に関する知見を得て、これらのパラメータが電析抑制作用に深く関与することが示唆された。本論文で用いた分析手法が添加剤作用の解明に有用であることを示し、効率的なめっき添加剤の開発につながるものと期待される。

表彰される久保田氏ら
表彰される久保田氏(左)と酒井氏(右)

 受賞者、業績などの一覧は以下のとおり。

協会賞

・森河 務氏(オテック 技術顧問、元大阪府立産業技術総合研究所)
業績「誘起共析型合金めっきの開発とその実用化に関する研究」

功績賞

・内山休男氏(長崎大学 名誉教授)
・亀山哲也氏(産業技術総合研究所 名誉リサーチャー)

論文賞

・久保田賢治氏(三菱マテリアル)、樽谷圭栄氏(同)、中矢清隆氏(同)、酒井健一氏(東京理科大学 理工学部 先端化学科 准教授)、酒井秀樹氏(同 教授)
題目「AFM,QCM-Dおよびエリプソメトリーを用いた銅めっき添加剤吸着状態の解析」
(表面技術 第69巻 第11号 521~526頁)

技術賞

該当なし

進歩賞

・山本貴代氏(京都市産業技術研究所 主席研究員)
業績「インバー型Fe-Ni合金膜の電気化学的創製およびその熱膨張挙動に関する研究」
(第139回講演大会 講演要旨集 131~132頁 ほか)

技術功労賞

・石川 竜氏(日鉄テクノロジー 八幡事業所 研究試験課 課長)

会員増強協力者

・新井 進氏(信州大学 工学部 教授)
・川口 純氏(日本カニゼン 代表取締役社長)
・坂本幸弘氏(千葉工業大学 工学部 教授)
・柴田正実氏(山梨大学 大学院総合研究部 教授)
・本間敬之氏(早稲田大学 先進理工学部 教授)